【「人生は、美しい」評論】“不死身の男”リュ・スンリョンが歌って踊る優しさに包まれたロードムービー
2023年11月5日 14:30
ディズニープラスで独占配信され、世界的な人気と高評価を得ている韓国のオリジナルドラマシリーズ「ムービング」で不死身の身体を持ちながら、繊細で優しい男を演じ、その実力を世界へ知らしめたリュ・スンリョン。そんな彼が不愛想で不器用な夫を好演する映画「人生は、美しい」は、夫婦の人生最後の旅を韓国の懐かしいヒットソングとともに、ミュージカル仕立てで描いたハートフルなロードムービーとなっている。
ドラマ「SKYキャッスル 上流階級の妻たち」や、映画「完璧な他人」のヨム・ジョンアが余命宣告された妻セヨンを演じ、スンリョンと初共演。さらに、若き日のセヨンの初恋相手役で、K-POPグループ「Wanna One」出身で現在兵役中のオン・ソンウが出演したほか、若き日のセヨン役でパク・セワン、その親友役でシム・ダルギなど、若手俳優も顔を揃えている。
余命宣告ものということで、暗く重い話になるのかと思いきや、韓国の懐かしいヒットソングにのせて踊り出す展開は爽快。典型的な亭主関白の夫ジンボンを演じるスンリョンが歌って踊る姿は、「ムービング」で演じた男とはまた違った魅力を発揮している。大ヒット作「エクストリーム・ジョブ」の流れをくむ、気は優しくて力持ち的な男を演じさせたら、いまスンリョンの右に出る者はいないのではないだろうか。いつも不機嫌で文句を言いながらも、初恋の人に会いたいという妻の最後の願いを叶えてあげようと寄り添う姿、本当の感情を表に出せない不器用さとピュアな思いに胸が熱くなる。
また、そんな夫と、思春期真っただ中で反抗的な態度の息子と娘にも負けずに健気に家庭を支えてきた妻セヨンが、死ぬ前にやりたいことをやると決意する、吹っ切った複雑な心情をジョンアが好演し、歌って踊るコメディエンヌな魅力で物語をけん引していく。夫の運転する車のルーフをあけて上半身を出し、両手を広げて風を受けるその表情と、紅葉と色とりどりの紙吹雪が乱れ飛ぶシーンが美しい。「完璧な他人」「エクストリーム・ジョブ」などのペ・セヨンが脚本を手掛け、「国家が破産する日」のチェ・グクヒ監督がメガホンをとった。ミュージカルシーンはカラフルなイメージで、20年以上前の韓国の街並みや服装などを再現しているのも見どころとなっている。
限られた時間の中、木浦から釜山、清州から小さな島・甫吉島へという韓国横断の最後の旅を通して、妻の過去の秘密、甘く切ない青春時代、夫婦の歩んできた軌跡とともに、2人のお互いへの気持ち、家族への愛が明らかになっていく。人は失ってはじめて本当に大切なものに気づくとよく言われるが、日々の生活に追いやられ、辛く苦しい時こそ歌って踊り、人生の美しさに思いを馳せ、今のうちに気持ちを伝えておかねばと気づかせてくれる、優しさに包まれた作品だ。
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