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【北野武監督作「首」“唯一無二”の6人が語り尽くすリレーインタビュー】第1回:明智光秀役の西島秀俊

2023年10月26日 12:00

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取材に応じた西島秀俊
取材に応じた西島秀俊

北野武監督の6年ぶりとなる最新作「」が、いよいよ11月23日から封切られる。構想に30年間を費やし、「本能寺の変」を題材にした壮大なエンタテインメントを完成させた。映画.comでは、カンヌ国際映画祭でも熱狂的に受け入れられた今作のリレーインタビューを、6週連続で展開。第1回は、明智光秀に扮した西島秀俊に話を聞いた。(取材・文/鈴木元、写真/間庭裕基、編集/映画.com副編集長・大塚史貴)


――北野監督自身が書いた小説が19年に刊行されていますが、「」の構想はご存じだったのですか。

劇場版MOZU」(2015)や「女が眠る時」(2016)でご一緒させていただいた時に、現場や取材の合間に「秀吉の話をやりたい」ということをおっしゃっていたのは記憶しています。

画像2(C)2023KADOKAWA (C)T.N GON Co.,Ltd
――「Dolls(ドールズ)」以来となるオファーを受けた時の率直な気持ちは。

お話をいただいた時はまだ役が決まっていなくて、撮影日数も分からなかったのですが、非常にうれしかったですし、ぜひお願いしますという感じでした。

――光秀役と決まった時はいかがでしたか。

脚本を読んで、正直驚きました。「Dolls」の時は、どこか北野監督の内面を投影しているようなイメージの役だったので、監督の頭や心の中をずっと考えて役に向かっていく感じだったのですが、今回は監督ご自身も出られているので秀吉にその内面が色濃く反映されているのかなと思いました。ですので、監督が求める映画の一つの役割、パートというものを一生懸命やろうというのが、僕の中で一番重点を置いたところでした。

――「」における光秀像は、どのように解釈したのですか。

今とは全く違う価値観で、本当に明日死ぬかもしれないという状況が戦国武将であろうと農民であろうとあるという時代での愛と憎しみと欲望みたいな物語だと思うんです。その中で光秀は、現代の感覚でいうととんでもない人たちがいる中で比較的まともに見える部分もある。ただ、戦国時代の武将なんて非人間的な部分もたくさんあるわけですから、そこが混在していて、ちょっとは分かるなと共感を覚えるところもありました。

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――北野監督からのリクエストは何かありましたか。

光秀の話というわけではなく、大将のために殿(しんがり)を務めるということは最後を守るという意味ではない、その人のために死ぬということだからそれは愛だよねという話を監督がイン前にされたんです。それが自分にとっては大きくて、そういうことを考えて役を演じる必要があるんだなと解釈しました。

――時代劇に出演する楽しさ、逆に難しさはありますか。

難しいのは所作、話し方も含めて形というものがあることですね。逆に自由が圧倒的に少ない、身分制度が今よりはるかに強固にあってどうしても乗り越えられない壁がたくさんあるからこそ、乗り越えようとするとそれだけで大きなドラマになっていく。身分違いの恋愛みたいなものはほぼ不可能だからこそ、そういう物語を語る時には面白いものになるというところがあると思います。

――ビートたけしとも久しぶりの共演になりますが、印象に残っていることはありますか。

監督されている北野監督とはご一緒しているし、俳優のビートたけしさんともご一緒していますが、一緒は初めてなんですよ。演出しながら主演するというのは世界で数人しかやれないことで、話には聞いていましたけれどご本人は本当に一回しかやらないんだと。テストでは別の方が演じている姿を監督として見て、じゃあ本番となってご本人がすっと入られて一回しかやらない。実際に目の当たりにして、本当に凄いものを見たなあという感じです。

画像4(C)2023KADOKAWA (C)T.N GON Co.,Ltd
――「Dolls」からキャリアを重ねて受けた北野監督の演出に対して感じたことはありますか。

Dolls」はけっこう監督から直に演出していただいたんですけれど、今回はご自身はモニターのところにいらっしゃって演出は助監督の方が伝えに来る形になっていたので、そこは違いましたね。でも、二回くらいテストして本番一回で全部OKになっていくというのは変わらないので、どうやって完成していくんだろうというのは20年たってもいまだに不思議です。

――武将同士の性愛の描写に関しては、どのようにとらえていますか。

光秀と荒木村重、そして信長は不思議な関係で、それぞれをどう思っているかはよく分からないんですけれど、愛情と憎しみが混在している三角関係になっているので、シーンによっては命を投げ打ってでも結びつく時もあれば、ばっさり断ち切ったりもする。命がかかわっているだけに、どっちなんだろうという分からなさがありますね。

――クランクアップしてから完成までは、どのようなお気持ちでしたか。

撮影をしていてもスケールの大きさは凄く感じていたので、北野監督のスケールの大きな時代劇をスクリーンで見られるという、出演してはいますけれど1ファンとして楽しみに待っている状態でした。

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――完成した作品を見た時の率直な感想はいかがでしたか。

いろいろな感情も含めて情報量が多く、凄く話したくなる映画でした。家に帰ってからそのまま寝る感じにならなくて、何かを吐き出さなければと我慢ができなくなって、近所のバーに行って知り合いを呼んで僕が一方的に話すということをしました。

――初めてのカンヌ映画祭での体験はいかがでしたか。

北野監督の大きさはもちろん知っていますが、観客が皆新作を待ち望んでいて、映画人として世界の偉大な監督の一人ということが当たり前のようにあると改めて実感しました。

画像7(C)2023KADOKAWA (C)T.N GON Co.,Ltd
――その上で、改めて感じる北野監督の凄さはなんでしょう。

常にリアル、本当のことというものを映画の中にしのばせて、観客が普段安心して生きているところにいや違う、そうではないという世界の怖さみたいなものを提示されるので皆が驚く。それを常に映画で見せているところだと思います。

――「」は今後、俳優を続けていく上でどのような意味合いを持つ作品になると思いますか。

たくさんの素敵な俳優さんと共演できて、毎日現場に行って演技を交わすことが楽しかったので凄く勉強になりました。皆があまりに違うので、うまく言葉にはできないんですけれど、自分のやり方でやるしかない、自分の道を突き詰めていくしかないんだなと感じた現場でもありました。

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――最後に北野監督へのメッセージをお願いします。

難しいなあ。ずっと1ファンとして監督の作品を見てきて、初めて監督・主演されている姿を見られたので、僕にとっては夢が一つかないました。「Dolls」でキャスティングしていただいてからずっと、もう一度呼ばれるような俳優になれるように頑張ってきたので呼んでいただいて幸せに思っています。

」リレーインタビュー第2回は、11月2日に配信予定。

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