西川美和監督、マーティン・スコセッシ監督の演出に脱帽!「俳優たちの顔の表情や1対1の芝居が素晴らしい」
2023年10月19日 18:00
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マーティン・スコセッシ監督最新作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」学生向け試写会が10月16日、TOHOシネマズ日比谷にて行われ、西川美和監督が登壇し作品の魅力を語った。
本作は、マーティン・スコセッシ監督がレオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、ジェシー・プレモンス、リリー・グラッドストーンら豪華キャストを迎え、実話を基に描いた西部劇サスペンス。1920年代、オクラホマ州オーセージ郡を舞台に、先住民たちと白人たちの複雑な関係性を描く。
この日を含めて本作を2回鑑賞したという西川監督は「私が不勉強だったということもありますが、白人とネイティブアメリカンとの複雑な関係性のアメリカ史をまったく知らなかったので、1回目はその設定をつかむだけでカロリーを使ってしまったのですが、ストーリーが分かった上で観ると、俳優のさまざまな演技の表現や、スコセッシ監督の益々洗練された撮影方法を垣間見ることができました」と噛めば噛むほど味わい深い映画だという。
この日司会を務めた映画ライターのよしひろまさみち氏は「サウンドデザインが素晴らしい」と劇場でこその映画であることを強調すると、西川監督も「いまはホームシアターを充実させている方もいますが、音響こそが映画館で観る大きなメリットだと思う。この映画の音は聴き逃せないです」と本作の音のすごさに同意していた。
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スコセッシ監督と6度目のタッグとなるディカプリオ、8度目の出演となるデ・ニーロについて、よしひろ氏は「長年見ていると、どんどんレオがデ・ニーロに似てくる現象が起きている」と触れると、西川監督は「そうかもしれませんが」と同意しつつも「私はタイプが違う俳優だなと勝手に思っているんです」と持論を展開する。
その理由について西川監督は「デ・ニーロって、どんな役を演じていても、役と自分との間に距離がある人なんじゃないかなと思うんです。だから必ずしもその役と自分を同一化しないで、ちょっとクールにアプローチしていくという印象があります。一方で、ディカプリオは多分、すごく入り込んで演じるタイプではないかと思います」と説明する。
さらに西川監督は「私が(映画『すばらしき世界』で)ご一緒した役所広司さんも、ご本人のなかでは何が起こっているかは窺い知れませんが、全然引っ張らない印象があります」とすぐに役と自身が切り替わるデ・ニーロタイプであることを述べていた。
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本作は、デビッド・グランの原作をスコセッシ監督が、エリック・ロスと共に脚本を執筆した。よしひろ氏は「原作ではFBI捜査官が語り部として描かれていますが、映画はディカプリオ演じるアーネストの視点で描く方法をとっています」と触れると、西川監督が初めて原作モノを手掛けた「すばらしき世界」でどんなアプローチ方法をとったのか質問する。
西川監督は「原作は30年以上前に書かれたものですが、私は設定を現代にしました」と述べると「私の場合、人が書いたものを監督する場合、物語や主人公を細部まで自分の血肉にしないとマネジメントできないので、原作に書かれていることを可能な限り調べて、30年前と今とは何が違うのかを明確にしました。もはや解決されている現実をあたかも現在進行形の問題のように描くのは嫌だなと思ったので、慎重にリサーチしました」と語る。
続けて西川監督は「スコセッシ監督って80歳ですよね。これだけヘビーな題材を、他の脚本家と一緒にやったとしても、自分で筆をとって作っていけるというのは相当すごい」とバイタリティに脱帽すると「日本の監督もアグレッシブさを学んで前に進んでいかないと、この年齢まではできません。デ・ニーロの演技の正確さも年齢を感じさせず、現場が衰えをカバーしながら撮ったとは思えない。「年齢を重ねた味わい」だけではない、演技としての体力もがここまで保たれている秘訣が何なのか。一度でいいからスコセッシ監督の現場に行って見せてもらいたいです」と語っていた。
最後に西川監督は「2000年代に入ってからのスコセッシ監督作品には、現代の最新映画に乗り遅れまいという意気を感じました。でもちょっといろいろなものが過剰に盛り込まれすぎている印象があったのですが、本作では映画製作の贅を尽くしつつも、語り口はオーバーフローせずにゆったりと落ち着いて、ドラマや演技が観ることができます」と述べると「派手なシーンではなくても、俳優たちの表情や1対1の芝居が素晴らしい。決してオーバーではない。でも言葉とは裏腹な心理が、的確にヒリヒリと伝わるお芝居。ああいう演出が出来たらいいなと思いました」と作品から大きな影響を受けているようだった。
画像提供 Apple/映像提供 Apple
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