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「ザ・クリエイター」驚異のビジュアル ギャレス・エドワーズ監督の重要な決断について【ハリウッドコラムvol.342】

2023年10月15日 17:00

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「ザ・クリエイター 創造者」
「ザ・クリエイター 創造者」
(C)2023 20th Century Studios

ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米ロサンゼルス在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリストの小西未来氏が、ハリウッドの最新情報をお届けします。

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今年公開されたハリウッド映画のなかで、映像的にもっとも衝撃を受けたのはクリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」だった。ラージフォーマットのIMAXのフィルムカメラで撮影された映像は圧巻の一言だった。

先日、その衝撃に匹敵する作品を観賞した。「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」のギャレス・エドワーズ監督の新作「ザ・クリエイター 創造者」である。

ザ・クリエイター 創造者」は人類とAIが戦う近未来を舞台に、特殊任務を負った主人公(ジョン・デビッド・ワシントン)の葛藤を描いていく。AIの脅威というタイムリーなテーマや、米軍=人類、ベトナム人=AIに擬えたベトナム戦争的構図、AI少女と主人公とのあいだに芽生える愛情など、オリジナルのSF映画らしく刺激的なアイデアがたくさん盛りこまれている。

画像2(C)2023 20th Century Studios

だが、ぼくの心を掴んだのは映像美だ。圧倒的な没入感とそれを生み出した斬新な製作スタイルに衝撃を受けたのだ。

スター・ウォーズ」のようなSF映画を作ろうとすると、その物語世界は目の前の現実には存在しないから、巨大なセットや、ブルースクリーンを多用したスタジオ撮影がメインとなる。当然のことながら、多くのスタッフとコストを要する。

ところが、VFX工房のILMは、テレビシリーズ「マンダロリアン」において「ステージクラフト」というバーチャル制作システムを確立した。ブルースクリーンではなく、巨大なLEDの壁を要する「ザ・ボリューム」と呼ばれるスタジオで撮影するのだ。ブルースクリーンの場合、ポストプロダクションで背景が合成されるが、ザ・ボリュームにおいてはゲームエンジンを利用してリアルタイムでLEDにデジタル背景が映し出される。監督や撮影監督や役者は、バーチャル背景を前に仕事ができるので、これまでのように想像力に頼る必要がない。撮影隊がいちいちロケ地まで移動する手間も省けるし、あとで背景を合成する必要もないのでコストの削減になる。

ILMがステージクラフトと呼ぶシステムは、渡航規制のなかでも活用できるとあってコロナ禍で一気に広まり、いまやハリウッドの映像製作の選択肢のひとつとなった。VFXとは無縁に映る「ザ・フェイブルマンズ」でも活用されているほどだ。いまではILMの本拠地であるサンフランシスコのみならず、ロサンゼルス、ロンドン、バンクーバー、シドニーでも展開している。

画像3(C)2023 20th Century Studios

しかし、「ザ・クリエイター 創造者」を製作するにあたり、ギャレス・エドワーズ監督はステージクラフトを選択しなかった。

近未来を舞台に展開する壮大なストーリーをそのまま映像化しようとすると、製作費は2億ドルを超えてしまう。昨今のハリウッドにおいて、オリジナルのSF映画にそこまでの予算がつくはずがないから、通常のフィルムメーカーならばバーチャル撮影でコスト削減を図るところだろう。

だが、エドワーズ監督は普通のフィルムメーカーとは呼べない。VFXアーティストとして長いキャリアを誇る彼は、自ら脚本・撮影・監督・編集・VFXをこなした低予算映画「モンスターズ 地球外生命体」をきっかけに、いきなり「GODZILLAゴジラ」と「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」という超大作2本を手がけることになった異色のキャリアの持ち主なのだ。

エドワーズ監督が「ザ・クリエイター 創造者」で採用したのは、機動力を最優先した製作体制だ。最低限のクルー(ときには録音技師すら同行しないときがあったそうだ)で世界各地を周り、最高のロケーションで撮影を行う。その後、たっぷりと時間をかけてVFXを加えていくのだ。

画像4(C)2023 20th Century Studios

先日行われたオンライン取材で、エドワーズ監督は自らの決断をこう説明した。

「クルーが少人数であればクルーの移動にかかるコストは少なくなる。セットを作るよりも、世界中どこへでも飛んでいったほうが安上がりになるんだ。それで、シーンに応じて最適なロケ地を選ぶというアイデアが現実になった。インドネシアの火山、ヒマラヤの仏教寺院、カンボジアの遺跡、水上集落など、あらゆる場所を厳選して」

「8カ国を旅して、インディペンデント映画のように撮影していった。そのおかげで、撮影が終わったとき、ILMやその他の工房のための大きな予算をつけることができた。その後は、各シーンのショットをプロダクション・デザイナーとコンセプト・アーティストに渡した。 つまり、通常は撮影の1年半前に始める美術デザインを、編集と平行して行っていったんだよ」

映像製作は規模が大きくなるにつれて、ステークホルダーが増えて、重圧が増す。それとひきかえに創造性や柔軟性が失われてしまう。「GODZILLAゴジラ」と「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」という超大作2本で負の側面を味わい尽くしたエドワーズ監督は、軽快なフットワークを最優先する手法に切り換えたのだ。実際、このハリウッド大作の主力として使われたのは、小型のシネマカメラとして知られるソニーのFX3(現在の実勢価格は55万円ほど)である。VFXアーティストとしての長い経験があり、かつ、卓越した映像センスを持つエドワーズ監督だからこそこれほどの映像に仕上げることができたのは間違いないが、常日頃から限られた予算で葛藤している日本のクリエイターにも勇気を与える作品だと思う。

「もう元の映画製作には戻りたくない」と言うほど、エドワーズ監督は手応えを感じている。ぜひこの驚異のビジュアルを映画館で観てほしい。

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