【国際レッサーパンダデー】「私ときどきレッサーパンダ」が愛される理由 日本アニメから強い影響も!
2023年9月16日 15:00
毎年9月の第3土曜日は、「国際レッサーパンダの日(International Red Panda Day)」 。ネパールとアメリカを拠点にレッサーパンダの保全活動を行う団体「Red Panda Network」(略称RPN)が、レッサーパンダの魅力や生態、また生息数が減少している現状を広く知ってもらおうと制定したもので、各国の動物園などで、普及啓発活動が行われます。
レッサーパンダといえば思い出されるのが、ディズニー&ピクサーの「私ときどきレッサーパンダ」。劇場公開は実現しませんでしたが、ディズニープラスで配信が始まると、「女の子がときどきレッサーパンダに変身する」という独創的なアイデアを通して、主人公が前向きに自分を解放する姿が反響を呼び、たちまち“モフモフ現象”が巻き起こりました。そして、第95回アカデミー長編アニメーション賞にもノミネートされた本作には、実は日本のアニメーションからの強い影響も見られます。この記事では、その秘密を紹介し、本作が愛される理由を探ります。
●あらすじ/目覚めたらレッサーパンダに!
●監督は次世代ピクサーのキーパーソン
●日本のアニメーションからの強い影響
●レッサーパンダらしさを表現する工夫
主人公は、由緒ある家庭に生まれ育ち、厳格な母親の期待に応えようと日々頑張る、ティーンエイジャーのメイ。でも、実際には周りの友だちと同じように、アイドルや音楽が大好きで、青春や恋愛を存分に楽しみたいと思っている。
そんなメイはある出来事をきっかけに、本当の自分を見失い、感情のコントロールも難しい状態に。悩んだまま眠りについたが、翌朝目覚めると、自分の姿が巨大なレッサーパンダになっていた! この日を境に、フラストレーションが爆発するたび、レッサーパンダに姿を変えてしまう自分に、メイは「本当の私、どこいっちゃったの?」と戸惑う。しかし、この不思議な現象には、ある秘密が隠されていた……。
監督を務めるのは、ピクサーの短編アニメーション「Bao」(ディズニープラスで配信中)で、アジア系女性として初めて第91回アカデミー短編アニメーション賞に輝いたドミー・シー。カナダ・トロントの中国人コミュニティで暮らす女性が、命が宿った“中華まん”を息子として育てていくコミカルかつ奇想天外なストーリーを通して、親子のほろ苦い真実と深い愛という普遍的なテーマを描いた。
「私ときどきレッサーパンダ」では、自身がティーンだった2000年代初頭を舞台に、親子関係など実体験も交えながら、ポップな感性で“自分らしさ”に迷う少女の気持ちに寄り添った。
本作が高い評価を受けたことで、22年には、ピクサー・アニメーション・スタジオの「vice president of creative」という役職に昇格。同じ肩書きを持つアンドリュー・スタントン監督(「ファインディング・ニモ」)、ピーター・ソーン監督(「アーロと恐竜」)、ダン・スキャンロン監督(「2分の1の魔法」)とともに、ピクサー全作品のクリエイティブ面を指導することになった。まさに、次世代ピクサーのキーパーソンといえる存在だ。
そんなシー監督は、「美少女戦士セーラームーン」、「らんま1/2」、宮崎駿作品のファンを公言しており、本作には日本のアニメーションの作風が積極的に取り入れられている。例えばキャラクターの目を、大胆に大きくしたり、形を変えたりすることで、喜び、怒り、悲しみといった豊かな感情を表現している。
また、ポーズを決めたらそのまま静止し、目だけが自在に動くことで、やはりキャラクターの感情が手に取るように伝わるシーンも。逆に動きを急に切り替えてコミカルさを演出したり、背景に“線”が走ったりと、随所に日本のアニメからの強い影響が見受けられる。こうした手法は、ディズニーアニメをはじめ、西洋のアニメが、曲線的で、滑らかな動きの緩急を重視するスタイルとは、大きく異なる点だ。
メイが変身するレッサーパンダは、巨大サイズであるため、どこかに隠れようとしても一苦労で、その様子が笑いを誘っている。注目したいのは、耳の表現。おびえたり、怒ったりすると耳は伏せがちになり、興奮すると耳が立っている。大きく動くしっぽも、レッサーパンダらしさを表現する工夫のひとつ。また、穏やかな気持ちのときは爪が隠されているが、心が荒れだすと、大きな爪が描かれている。
こうした感情の動きでさまざまな変化を見せるのは、レッサーパンダの正体が、不器用で不安定なティーンだからこそ。心の“モヤモヤ”を、“モフモフ”で受け止めながら、エネルギーを発散し、試行錯誤しながら自分らしさに目覚める主人公の姿が、多くの人々を癒したことも、本作が愛される理由だ。
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