塚本晋也監督、最新作「ほかげ」で「加害者の恐ろしさを語らなければ」 ベネチア国際映画祭へ9度目の出品
2023年8月28日 13:00

第80回ベネチア国際映画祭(8月30日~9月9日)のオリゾンティ部門に「ほかげ」が選出された塚本晋也監督。同部門の最高賞に当たるオリゾンティ賞を受賞した2012年「KOTOKO」、コンペに選ばれた15年「野火」、18年「斬、」と4作連続、計9度目の出品となる。
加えて、北野武監督の「HANA-BI」が金獅子賞を受賞した97年のコンペなど、これまでに3度審査員を務めているゆかりの地。「ほかの映画祭への出し方がよく分からないので…(苦笑)。だから周りにはふれないように、期待しないようにと言っていますが、自分の中では作る時になんとなく意識している部分はあります。恩も感じていますが、常に呼ばれるわけではないので本当にありがたいと思います」と喜びをかみしめた。
「ほかげ」の企画は、戦後の闇市に興味を持ったのがきっかけ。生まれ育った東京・渋谷。子どもの頃、井の頭線の高架下の薄暗い空間にいた傷痍軍人の姿が「自分の記憶の大事なポイントになっていて、あの時代がなくなってはいけない、手繰り寄せたいという強い気持ちがあった」という。

今でも終戦の時期には全国30館以上で上映されている「野火」では、太平洋戦争のフィリピン・レイテ島で極限の状況に置かれた日本兵たちの姿を描いた。その際に聞いた戦争体験者の話がつながり、「戦争と子どもの頃に自分が立っていた場所をつなげておかないと、思い出の渋谷がなくなってしまう。大概の創作はヒーローを描くか、ひどい悲劇として描くかだが、加害者的な目線のものはあまりない。あっても喜ばれないし、お客さんも見たくないから作るのは難しい。でも、加害者の恐ろしさを語らなければバランスが良くない。それは自分が担うところ」と一念発起。従来通り脚本、撮影、編集を兼ねるスタイルで挑んだ。
終戦直後、身体を売ることを請われ従うしかなかった女、その家に居座ることになった戦争孤児、右腕が動かない謎の男たちが、絶望の中でも生きていくしかなかった厳しい現実を映し出す。女役の趣里と謎の男役の森山未來は、脚本を執筆している時点から想定していた。
「もともと俳優ありきで脚本は書かないんですけれど、ある時から自然に浮かんでそれ以外は考えられなくなった。趣里さんは少女のようでパッと見小さいのに、発するエネルギーが凄い。役に憑依(ひょうい)したようなそのエネルギーを、この映画でも出してほしかった。森山さんは体全体で表現をされるイメージにとてもひかれました。本当にお二人とも素晴らしかった」

唯一、二人と交わる戦争孤児役にはオーディションで塚尾桜雅を抜てき。「責任を持って現場に立ってくれそうだと感じました。彼にはこれからどう生きていくか。手を握り締めて頑張ってと言うしかない、希望を託したところもあります」と説明した。
戦後の混沌をたくましく生きながらも、復員兵であっても戦地では敵を撃ち殺し捕虜を虐殺した加害者であったという現実の厳しさを見せつける衝撃作。第二次世界大戦後も、世界のどこかでは戦争が続いており、「大きな反省があって、戦争のない世の中にするのが人間であってそれが知性だと思っていたのに、(ロシアのウクライナ侵攻など)今の戦争も止められない世界なんだと底が抜けたような気分になる」と顔をゆがませた。
「ほかげ」は11月25日、東京・渋谷のユーロスペースなどで公開される。
(C)2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
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