純粋で美しい少年2人の関係性が引き起こした悲痛な物語「CLOSE クロース」二村ヒトシ&映画.com編集部が語る
2023年8月2日 20:00

TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。
今回は、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門グランプリ受賞作で、13歳の2人の少年に起こる関係の変化を描く「CLOSE クロース」(ルーカス・ドン監督)について語り合った。
大親友の13歳のレオとレミ。しかし、ある時、2人の親密すぎる間柄をクラスメイトにからかわれたことで、レオはレミへの接し方に戸惑い、そっけない態度をとってしまう。そのせいで気まずい雰囲気になる中、2人些細なことで大ゲンカをし、これまでの関係は二度と元には戻らない結末を迎える。
二村は「撮り方がみずみずしい。花農家の風景が美しく、農作業は地味だが親を手伝う少年が絵になっている。監督の原風景なんだろうけれど、カメラマンは監督と同じ出自じゃないはずだから、そのカメラマンの目が(風景の美しさに)驚いているような印象受ける。映画の撮り方ってこういうことなんだな」とまずはヨーロッパの田舎を舞台とした映像の美しさについて感想を述べる。エビタニも「景色も、レオとレミの表情も何もかもが美しい。色調も季節で変わって、レオの心の揺らぎとマッチしていて美しい。映画館の大きなスクリーンで見るのが素敵」と感激しながらも、「ところがそんな美しい画の中で悲しい話が…」と話は本作のテーマに進む。
エビタニは「泣きました。子どもが自分の中の小さい世界から広い世界に出たとき、普通がわからなくなる。社会に溶け込むために普通になろうとすることは誰しも通る道。そのために大切な人を傷つけることもあるのは普遍的なこと。美しい画の中でそれをまっすぐに問いかけてきた」と思春期の少年2人の気持ちを慮る。そして、身近な人の自死についての経験も述懐しながら、二村は「恋愛ではないと思うけれど、男の子同士にはあること。こいつのことを僕はわかっている、みたいな。女の子を好きになるとも違うし、性欲ですらない。『怪物』(是枝裕和監督作)でも描かれていたけれど、大人の男性同士の恋愛の話とは全然違って、成長の過程で普通にあること。でも、子どもの社会のなかで公になるとからかいの対象になってしまう」と本作の少年たちの関係性を分析した。
エビタニも「レオは神聖な関係を恋愛の情欲みたいに言われるのが嫌だったのだろうな。思春期特有の、“周りからこう見られたい”みたいなものあるし。でもレミは誰に何と言われようとどうでもよかったのに、レオから拒絶されてしまったことが悲劇になった」と続け、「会話をすればよかったのかな。レオは言葉ではなく突き放すことになっちゃったのが、レミには理解しがたかった。2人とも13歳で言語化が難しかったからのすれ違いかな。でも大人の男女でもあることかも」と悲劇を招いてしまった心のすれ違いについて思いを巡らせた。
そして、ひとり残されたレオはどうなるのか……オープニングと同様に美しい風景が映し出されるラストシーンについて、二村、エビタニともにそれぞれの考えを語った。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回は宮崎駿監督が「風立ちぬ」以来10年ぶりに手がける長編アニメ「君たちはどう生きるか」をネタバレ有りで取り上げる。
(C)Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022
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