「ホロコースト証言シリーズ」最終作「メンゲレと私」公開 91歳の生存者、ハノッホ氏招聘プロジェクト発足
2023年7月18日 19:00
「ゲッベルスと私」と「ユダヤ人の私」の「ホロコースト証言シリーズ」の第3弾にして最終作となるドキュメンタリー「A Boy’s Life」が、「メンゲレと私」の邦題で12月3日公開される。このほど特報映像が披露された。
「ホロコースト証言シリーズ」は、オーストリア・ウィーンを拠点にする国際的な製作プロダクション、ブラックボックス・フィルムのクリスティアン・クレーネス監督とフロリアン・バイゲンザマー監督による3部作のドキュメンタリーシリーズ。世界的に第2次世界大戦の経験者がいなくなる中、戦争という過ちを二度と繰り返さないため、この戦争体験者の証言を記録として映像に残す企画だ。1本につき1名の証言者が登場し、異なる立場から、それぞれの戦争の記憶を証言し、語り部のインタビューの合間には、様々なアーカイブ映像が挟まれ、戦時中のドイツやヨーロッパ各国の社会状況が複合的に理解できる構成となっている。
2018年6月に公開され、反響を呼んだ第1作「ゲッベルスと私」では、ナチ宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの秘書を3年間務めたブルンヒルデ・ポムゼル(撮影当時103歳/2017年没)が登場、当時のナチ中枢部の日常を語った。2021年11月に公開された第2作「ユダヤ人の私」では、アウシュヴィッツを含む4つの強制収容所に送られるも、生還したオーストリアの最後のホロコースト生存者であるマルコ・ファインゴルト(撮影当時104歳/2019年没)が、自身の数奇な体験を語る。
シリーズ最終作となる「メンゲレと私」では、わずか9歳でカウナス郊外のゲットーに送られ、その後、12歳でアウシュヴィッツ強制収容所に連行されたリトアニア出身のユダヤ人、ダニエル・ハノッホ(1932年生まれ)が語り部だ。金髪の美少年だったハノッホは、“死の天使”の異名を持ち、非人道的な人体実験を繰り返した、ヨーゼフ・メンゲレ医師の寵愛を受け特異な収容所生活を送る。しかし、ダニエルが見た真の地獄は終戦末期に連合軍の攻勢から逃れるため強制的に連れていかれた「死の行進」であった。少年時代に目撃した暴力、伝染病、カニバリズムといった人類史の最暗部を語る。
ダニエル・ハノッホは、現在91歳で、イスラエルのテルアビブ在住。日本の観客に自らの戦争体験を語ることを願っている。配給のサニーフィルムはホロコースト生存者を日本へ招聘できる最初で最後のチャンスではないかと考え、ダニエルとウィーンの監督たちを招き、東京、大阪、沖縄のミニシアターを周り、各地の観客に直接語り掛ける場を設くためのクラウドファンディングを開始した。ハノッホ氏から届いた来日に向けてのビデオコメント(https://youtu.be/zmCb--QtsFI)も公開されている。
12月3日から、東京都写真美術館ホール、大阪・第七藝術劇場、沖縄・桜坂劇場ほか全国公開。クラウドファンド・プロジェクト「『ゲッベルスと私」の「ホロコースト証言シリーズ」3部作を社会に残したい」詳細はこちら(https://shorturl.at/ADIJN)。