「ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル」でクリスチャン役を演じる、甲斐翔真のピュアな成長にキュン!【若林ゆり 舞台.com】
2023年7月11日 14:00
帝国劇場で幕を開け、豪華絢爛かつ革新的なステージングで観客の熱狂を呼んでいる「ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル」。前回のバズ・ラーマン監督編(https://eiga.com/news/20230704/3/)に続くインタビュー第2弾でフィーチャーするのは、映画版でユアン・マクレガーが演じた若き作曲家・クリスチャン役を、井上芳雄とダブルキャストで演じている甲斐翔真。ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」のロミオ役や「October Sky -遠い空の向こうに-」のホーマー役などで急成長を見せている若手注目株だ。ミュージカル愛の強さにも定評のある彼に、開幕直前の貴重な時間を割いてもらい、話を聞くことができた。
まずは、映画版との出合いから聞いてみよう。
「オーディションの話を知って初めて見たんですが、いっぺんに魅了されて。『なぜいままで見ていなかったんだろう』と思いました。映像であれだけの表現をするのは、非常に革命的なことだったと思うんです。しかも急にエッフェル塔のそばで踊るみたいな(笑)、ある種ぶっ飛んだ演出が炸裂していて。でもその芯にあるドラマみたいなところはけっして外さずに、とってもバランスの取れたファンタジーであり、深い人間ドラマでもある。ほかの誰にもできない作り方なんだろうなと思います。僕はラーマン監督の『ロミオ&ジュリエット』もすごく好きで。シェイクスピアの古典をあんな風にアレンジして、この現代に生きる我らの心に刺さる作品にして、なおかつ『そんな演出する!?』みたいな大胆な演出も満載(笑)。でも、そこにも無理がないんですよね。稽古中、バズ・ラーマンさんが来日してくださって、お会いできたことはすごく嬉しかったです。ハリウッドスターのようなオーラがあって緊張しましたが、作品に対する思いを感じましたし、僕らの稽古を見てとても喜んでくださいました」
もちろん、映画を見て彼が好奇心をそそられたのは「このすごいファンタジーの世界を舞台ではどう表現するんだろう?」というところだった。そして甲斐は、いまから約1年前にブロードウェイで舞台版を観劇。
「見たらもう『なるほど!』と。圧倒されました。『あの華麗な世界を舞台上で表現すると、こんなにも素晴らしくなるんだ』と。映画と違うところもあるんですけど、ミュージカル化した意味をすごく感じるステージでした。映画からこのミュージカル誕生までの間に誕生した曲も何曲か使用されていて。そこはまた映画ファンの皆様も、違う感動を味わえると思います。世界的に人気のある映画がこんな風に進化しているというのは、映画ファンの方々から見ても楽しみのひとつになるんじゃないかな」
このミュージカル版は、既存の曲を使うという範疇にとどまらない。数々のヒット曲の短いフレーズが絶妙にリミックスされる「マッシュアップ」という手法などを駆使し、音楽的な醍醐味も最高潮だ。
「マッシュアップミュージカルと聞くと、既存曲をどんどんメドレーみたいにやっていくというイメージですが、それ以上です。最初にミュージカルスーパーバイザーが曲を組み合わせるとき、まず、それぞれの歌の歌詞を並べたというんです。意味が通らないところがないようにまず歌詞で考えて、そこから曲を選んでいったんだそうです。つまり、その曲のなかに伝えるべき中身がちゃんとあるということ。日本語の訳詞が素晴らしいから、『ちゃんとストーリーが音楽によって進んでいってるな』ということをものすごく感じるんですよね。そして劇場に来てくださったらわかるんですけど、スピーカーの数が多い。びっくりしますよ。映画館でよく爆音上映ってあるじゃないですか。それに近い体験を劇場でできるんです。生身の人間が歌いますし」
ミュージカル表現のすべてがこれでもかと盛り込まれた作品だからこそ、スタッフ、俳優たちに要求されるものの多さは想像に難くない。
「本当にやることは多いですね。音楽と演出と振付、フォーメーション、美術も照明もすべてが合致して、すべてが噛み合ったときの破壊力を、とてつもなく感じています。そのためにはやはり、とても細かい確認が必要なんですよ。立ち位置も舞台上の10番と11番の間の間とか(笑)。左足が10番とか。出演者の数も多いので、集中力をもってやらないと、目指している歯車のかみあい方にはならない。この作品の魅力を知っているから、『気は抜けないな』と思います」
ナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」の花形スターで高級娼婦のサティーンと恋に落ち、ほとんどの場面でさまざまな感情を歌っていくクリスチャン。役づくりについては「キャラクターをどうしようというよりは、いかにこの台本を読み解いて、クリスチャンという人間をちゃんとわかるか」が鍵だという。
「いちばん大事なことは、クリスチャンがこの作品においてどういう立ち位置なのかをしっかり見極めることだと思っています。実はクリスチャンって、この3時間の劇のなかで時間軸が違う居方をするんですよ。映画版では、タイピングしているシーンがありますよね。この『ムーラン・ルージュ!』という物語を書いているクリスチャンと、その物語のなかにいるクリスチャン。クリスチャンは冒頭で『この物語はこういう物語だ』って語るんです。『じゃあ始めよう、あの頃の僕とサティーンの物語を』と。そういうストーリーテラーとしての立ち位置もある。と同時に、物語のなかでは、サティーンから見たクリスチャンの姿もある」
「クリスチャンを通して、お客様が『愛ってこういうものなのか』と感じるんですね。僕としては、最初のクリスチャンといちばん最後のクリスチャンで変わっていたいなと思います。やっぱり愛を知った顔になるわけですから。最初の方は、もう青くて恋に焦がれていて、何も怖くない青年。そこからある人を愛して、そして失っていく。3時間の間でどう変わっていくのかを表現したいという目標はあります。たとえば映画でも印象的なオリジナル曲『Come What May』は2幕の始めの方と、2幕の終わりにもリプライズ(繰り返し)として歌うんですけれど、同じ歌詞なのに意味合いがまるで違うんです。『こんな気持ちになるなんて初めてだ』と歌うその気持ちが、愛を知って恋い焦がれているのと愛を失ったあとで。そこも痺れますね」
めくるめく大人の劇場「ムーラン・ルージュ」の世界に飛び込んで成長していくクリスチャンは、甲斐本人にとっても共感ポイントでいっぱいだ。
「自分の人生もいま変わっているなと感じますし、重なる部分はすごくあります。この物語って、いまの現実に対する突破口だと思うんです。人生のなかで憤りとか、物足りなさを感じている方は、きっとたくさんいらっしゃいますよね。クリスチャンはそれまでの現実を変えたくてパリにやってきた。実際に人生がどんどん変わっていく彼の姿を見て、観客のみなさんは何を思うのか。それも楽しみですね。きっと物語が終わって愛を知ったクリスチャンを見て『これって愛の物語だったんだ』と感じ、また最初から見たくなると思うんです。最後に愛を知った状態のクリスチャンが物語を始めているから、それをふまえて見るとまた見方が変わってくると思う。実は何度見ても『こうだったのか』という発見がすごく多い作品だと思います」
クリスチャンに愛を教える妖艶なサティーン役は、シンガーソングライターの平原綾香と、宝塚出身でやはり抜群の歌唱力を誇る望海風斗のふたり。
「平原さんは、みんなを自然と引き寄せるような人。不思議な力があると感じさせる人って、たまにいるじゃないですか? 無条件に愛を寄せつけてしまうような、そういうサティーンのイメージです。望海さんは本当にみんなのことをちゃんと観察していて、いざというときすっと手を差し伸べて助けてくれるようなイメージ。頼りにされているんだけど、だからこそ、そのサティーンがひとりになったときの脆さみたいなところを見ると、その対比にグッとくる人が多いんじゃないかなと思います。どちらのサティーンも全然違っていて、魅力的なんです。クリスチャンとしても楽しみですね」
めくるめく帝劇で「ムーラン・ルージュ!」の世界へ飛び込み、ミュージカルへの純愛を貫き、成長する甲斐翔真の姿にキュンとするのも、この作品の楽しみに違いない。とにかく「この作品で旋風を起こしたい」と、彼の瞳は燃えている。
「僕はいままで海外でたくさんの素晴らしいミュージカルを見てきましたが、日本もそのレベルに来たな、と実感する毎日。僕なんかが言うのもおこがましいですけど。まさに自分が憧れた場所に立っているな、と思います。もう痺れポイントがいっぱいですから。日本ミュージカル界でまさにいま起きている革命を見て、肌で感じてほしい。見逃したら本当にもったいないです!」
「ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル」は、8月31日まで東京・日比谷の帝国劇場で上演中。詳しい情報は公式サイト(https://www.tohostage.com/moulinmusical_japan/)で確認できる。
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