【インタビュー】オカルトミステリー「悪鬼」の着想は、霊が抱える無念さ 韓国のヒットメーカーが語る
2023年7月7日 13:00
キム・テリ(「二十五、二十一」)、オ・ジョンセ(「サイコだけど大丈夫」)が共演する韓国ドラマ「悪鬼」(読み:あっき)が、ディズニープラスのコンテンツブランド「スター」で独占配信されている。本作は、この世のものではない悪鬼にとりつかれた女と、その悪鬼を見ることのできる男が疑惑の死を暴くオカルトミステリー。数々のヒット作を手がけ、日本では「劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班」のオリジナルである「シグナル」で知られる脚本家キム・ウニが取材に応じ、脚本家として新たな試みに挑んだ本作について語った。
貧しい家庭に生まれたク・サニョン(キム・テリ)の不運続きの人生は、父親が不可解な死を遂げたことで、さらに最悪なものとなった。彼女は、不幸な出来事ばかりが次々と起こる理由がわからずにいた。しかし、ある時、悪鬼の姿を見ることができる民俗学者ヨム・へサン(オ・ジョンセ)と出会い、自分を呪っている存在の真相を知り始める。やがて、悪鬼の出入り口を発見した彼らは、人知を超えた別世界と向き合い、両家を滅ぼした呪いを解くために協力することになる。
まず、オカルト要素について、私の思い出を語らせてください。幼い頃、韓国で「伝説の故郷」という番組(※1977~89年まで韓国で放送されていた人気時代劇シリーズ。韓国で語り継がれる伝説を題材にしている)があって、毎年夏になると納涼特集が放送されていたんです。私も怖いものが苦手にも関わらず、その特集にハマってしまって、怖いシーンになると布団のなかに隠れては、それが終わると、布団から出てくる。そんな夏の思い出があるんですね。
子ども心に印象に残っているのは、その地に憑いた霊が抱える物悲しさ、無念さといったものでした。例えば、9本の尻尾を持つ狐の霊が出てくるお話では、1000日我慢すれば願いが叶うところを、999日目で人間のせいで叶わない……。そういう無念さが描かれていました。韓国では「恨」(読み:ハン)という、なかなか晴らせない無念さや悲しみを意味する言葉があります。
そうです。このドラマでは、世界を破滅に追い込むような巨大な悪ではなく、私たちの生活に密着した鬼や神々を描きたかったんです。その起源をたどると、民俗学にかなり密接に関わっているので、参考にして、いろいろと資料を調べたりしました。
リサーチを重ねる過程で、時代や状況が変わっても、心の闇や人間が陥ってしまう無念な状況というものは繰り返されていると、改めて気づかされました。無力であったり、貧しかったり、ときには若さゆえに、周囲から見下されてしまう状況は、残念ながら、いつの時代にもあるものです。そういう面を、物語のなかで表現したかったんです。
はっきりどちら側とは言えず、本当にケースバイケースですね。まず、キャラクターがこういう風に成長を遂げていけばいいなと考えて、アイテムを採用するケースもあれば、アイテムが頭に浮かんで、その後にキャラクターを描くこともあります。どちらが正解とは言い切れないんですね。
「悪鬼」に関しては、民俗学がベースになっていますので、いまの時代では馴染みがなくても、「どこかで見たことあるな」と想像ができるもの。例えば、赤い布飾り、玉かんざし、ガラス瓶、しめ縄、青い甕(かめ)の欠片。そういったアイテムは、実生活で使う機会は減りましたが、景福宮(キョンボックン)といった昔の宮殿に行けば、展示品を見ることができますから。
キム・テリさんは、編集バージョンを拝見した段階で「まさに本物だ」と圧倒されました。彼女の芝居を見て、これがク・サニョンなのか、キム・テリなのか、本当に区別がつかないほど、卓越した表現力を披露している。感謝しかありません。一人二役に挑戦していますので、彼女が演じる“悪鬼”にも、ぜひ注目していただきたいです。
オ・ジョンセさんは、演技を拝見しながら「あ、こういうセリフを使おう」と参考にさせてもらうくらい、役柄にシンクロしています。説明するセリフも多いので、苦労が多いかと思いますが、ヨム・ヘサンの孤独までも表現してくださっていると思います。キム・テリさんが、インパクトのある演技だとすれば、オ・ジョンセさんは地味ながら、ジワジワとハマっていく。ふたりにはそういう対比があると思います。
その通りです。キム・テリさんとオ・ジョンセさん、それに共演者の皆さんが、とても研究熱心で、俳優さんが持っている台本を拝見すると、私が書いたセリフよりも、自らメモした文字の方が多いほど。「家に帰っても、ずっと脚本ばかり見ているのかな」と思うほど、非常に工夫を凝らして表現もしてくださる。私にとっては、“恩人”なのです。
実は台本を書いた当初は、「悪鬼」に世界向けに配信されるチャンスがあるとは思っていなかったんです。ただ、世界中に配信されると分かっていたとしても、脚本づくりに大きな変化はなかったと思います。例えば、以前Netflixで配信された「キングダム」は、世界配信されるからといって、時代劇的な要素を排除しようとは考えませんでした。大切なのは、完成度を高めて、視聴者の皆さんに共感していただくこと。ですから、「もっとグローバル目線で」ということは、あえて考えないですね。
先ほど、「恨」という負の感情について申し上げましたが、私は日本の小説や漫画、アニメなどから、その「恨」に近い感情が描かれているものがあると感じています。言語や文化が違っても、同じ人間ですから、やはりそういう感情には共通点があるのではないでしょうか。ですから、「悪鬼」を通して、日本と韓国、それぞれの違いと共感できる部分を味わってもらえれば幸いです。
「悪鬼」は、ディズニープラスで独占配信中(毎週金・土に2話ずつ配信)。
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内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
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