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【「To Leslie トゥ・レスリー」評論】宝くじ当選から6年でホームレスに…酒浸り女性の人生の分岐点を描く、ドキハラの人間サスペンス

2023年6月25日 18:30

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「To Leslie トゥ・レスリー」は公開中
「To Leslie トゥ・レスリー」は公開中
(C)2022 To Leslie Productions, Inc. All rights reserved.

宝くじの当選金19万ドル(約2500万円)をわずか6年で使い果たし、酒浸りの自堕落な日々を送るレスリー。彼女には居場所がない。なぜなら、宿主の決めたルールを守れないからだ。住んでいたモーテルは、部屋代を滞納して追い出された。その後に転がり込んだ息子のアパートも、酒と金に手を付けて追い出される。そして、故郷の悪友夫妻の家も、酒場で醜態を演じたことがバレて放り出されてしまう。結局ホームレスになったレスリーが、行倒れになって発見されたとしても、誰も驚かないだろう。

ところが、「捨てる神あれば拾う神あり」を地で行く出来事が起こる。モーテルの外で一夜を明かしたレスリーに、従業員のスウィーニーが、住み込みの清掃の仕事をくれたのだ。しかも、息子や悪友夫妻と違って、何のルールも設定せずに。

「人はそれぞれ抱えている問題が違うから、君の悩みをバカにしたりしない」と言うスウィーニーの神々しさが光るドラマは、人生の分岐点について考えさせる。レスリーの人生の分岐点は、宝くじに当たった時か、スウィーニーと出会った時か? 実はどちらでもない。なぜかといえば、どちらも彼女の意志が介在しないからだ。本当の分岐点は、ドラマの後半に訪れる。自暴自棄にならざるをえないシチュエーションに置かれたレスリーが、酒に逃げるか踏みとどまるかを選ぶ瞬間だ。どっちに転ぶかは予測できない。まさにドキハラの人間サスペンス。地獄の入口で葛藤するレスリーの姿を目撃する私たちは、崖っぷち人生を歩み続けてきた人間の心の深淵をのぞき込んでいるような気にさせられる。その場面のレスリー役アンドレア・ライズボローの演技を見るだけでも、この映画は一見の価値ありだ。

そしてもうひとつ、この映画は大切なメッセージを投げかけてくる。それは、自分の居場所は探すものでもみつけるものでもなく、自分で作るものだということ。自分で作った居場所なら他人のルールに従って生きる必要もない。そんな素敵なセオリーを、まさかレスリーに教えてもらえるとは思いもよらなかった。

(矢崎由紀子)

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