【第76回カンヌ国際映画祭】是枝裕和監督「怪物」に脚本賞 坂元裕二「たった一人の孤独な人のために書きました」
2023年5月28日 06:01

第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されている、是枝裕和監督作「怪物」脚本を担当した坂元裕二が脚本賞を受賞した。日本映画の脚本賞受賞は2021年の「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介、大江崇允)以来2年ぶり2度目、是枝監督作品のカンヌ映画祭でのコンペ部門での受賞は2022年の「ベイビー・ブローカー」に続き2年連続となる。
坂元氏に代わり、是枝監督が授賞式壇上で「ありがとうございます。一足早く日本に帰った坂元裕二さんに、すぐ報告します。僕がこの脚本の基になったプロットを頂いたのが2018年の12月なので、もう4年半前になります。そこに描かれた2人の少年たちの姿をどのように映像にするか、少年2人を受け入れない世界にいる大人の1人として、自分自身が少年の目に見返される、そういう存在でしかこの作品に関わる誠実なスタンスというのを見つけられませんでした。なので、頂いた脚本の1ページ目に、それだけは僕の言葉なんですけども、『世界は、生まれ変われるか』という1行を書きました。常に、自分にそのことを問いながら、この作品に関わりました。一緒に脚本を開発した川村さん、山田さん、作品に関わっていただいたスタッフ、キャストの皆さん、みんなの力でこの賞を頂けたと思っております。ありがとうございました」とスピーチした。
また、現地メディアの中継で是枝監督は、受賞後すぐ「坂元さんから『夢かと思った』とメールが届いて、そのあと続けて『たった一人の孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です』という言葉が届きました」と坂元氏からの反応を伝えた。
(C)2023「怪物」製作委員会「花束みたいな恋をした」で知られる脚本家・坂元が初めてタッグを組み、故坂本龍一さんが音楽を担当、出演は、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子ら、ふたりの少年を黒川想矢と柊木陽太を演じる。
息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っているとある郊外が舞台。そんなある日、学校でケンカが起きた。それは、よくある子ども同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に大人や社会、メディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子どもたちが忽然と姿を消してしまう。
なお、是枝監督作品がカンヌ国際映画祭でコンペティション部門に選出されるのは、2022年の韓国映画「ベイビー・ブローカー」から2年連続、7回目(カンヌ国際映画祭への出品自体は9回目)。なお「ベイビー・ブローカー」ではエキュメニカル審査員賞、そして主演のソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞。これまで、「誰も知らない」(2004)で主演を務めた柳楽優弥が最優秀男優賞、「そして父になる」(13)で審査員賞、「万引き家族」(18)では最高賞であるパルム・ドールに輝いている。
「怪物」は、6月2日に全国公開。
(C)2023「怪物」製作委員会
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