人気漫画家のスランプを描いた「零落」 二村ヒトシ&映画.com編集部が語る
2023年3月30日 22:00
TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。第6回は、漫画家・浅野いにお原作の同名漫画を斎藤工主演、竹中直人のメガホンで映画化した「零落」の感想や見どころを語り合った。
8年間連載してきた漫画が完結し“元”売れっ子漫画家となった深澤は、次回作のアイデアが浮かばず敗北感を募らせている。すれ違いが生じていた妻のぞみとの関係も冷え切り、自堕落で鬱屈した日々を過ごしていた。そんなある日、風俗店を訪れた彼は、猫のような眼をしたミステリアスな女性ちふゆに出会う。自分のことを詮索しないちふゆにひかれた深澤は、ちふゆとともに彼女の故郷へ向かう。
二村は、劇画家の石井隆の初監督作「天使のはらわた 赤い眩暈」で俳優として主演した竹中直人のフィルモグラフィーを振り返り、「夜のシーンの光の使い方が石井隆さんぽい。色の使い方がきれい」「映画全体の印象が鈴木清順の映画みたいだった。意味なく海岸を歩くシーンや坂道を行ったり来たり、死と生を行ったり来たりするような『ツィゴイネルワイゼン』とか」と本作の映像描写の美しさを讃える。
主人公の設定については「斎藤工さんがエロい顔をしているのでハマっている」「ひとりの男がダメになっていく過程としてよく描かれている」と評しながらも、「男性で、物を作る人のエリート意識」を感じ、風俗嬢をはじめ女性や他者へのふるまいに関して「男としての見栄があって、結婚相手と本当の性癖が違う男はいっぱいいる。でもその乖離って、女の人を見下していると思う」と苦言も。現在公開中の「エゴイスト」の人物描写を引き合いに出し、「一人の人間に多面性があること、その時その時で一人の人間も違う。セクシャリティについてはこのくらい丁寧に描かないとグッと来ない」と語る。深澤以外の登場人物の、ステレオタイプな悪い面を見せることについてはエビタニも「深澤は人間をラベリングして、ひとりひとりを見ていないのでは」と、主人公の心の欠落部分を指摘した。
しかし、AV監督や作家業というキャリアを持つ二村は、深澤がクリエイターとしてスランプに陥っているという状況を理解の上、「ノイローゼになっている時って、人間は世の中平べったく見えてしまうもの」とフォロー、エビタニも「『零落』というタイトル通り、深澤は漫画以外のものを落としてしまった。漫画を描くために(支えてくれた)周りの人がいたということを見落としていったのかな。それで最終的に漫画だけが残って、また漫画を描くことしかできなくなった」と厭世的で孤独な天才肌の主人公を擁護していた。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回はバズ・ラーマン監督作「エルヴィス」を取り上げる。
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