東海林毅監督「老ナルキソス」予告完成 男性同性愛者たちの過去と未来、家族にまつわる葛藤の物語
2023年3月17日 12:00
バイセクシュアル当事者でもあり、主に自主作品の中でLGBTQ+と社会との関わりを探ってきた東海林監督。本作は、レインボー・リール東京グランプリをはじめ国内外の映画祭で10冠を獲得した自身の短編「老ナルキソス」(2017)を長編化したもの。
物語の軸を担うのは、「ゲイ」という呼び名もまだ一般的ではない時代から日陰者として社会の方隅で生きてきたナルシストの老絵本作家と、差別や偏見との闘いの時代を経てすでに性的マイノリティが可視化されたLGBT世代の青年。世代も考え方も違う2人の個人的な関係の中から立ち現れる、男性同性愛者たちの過去と未来の「家族」にまつわる葛藤の物語となっている。
(C)2022 老ナルキソス製作委員会ゲイでナルシストの老絵本作家・山崎は、自らの衰えゆく容姿に耐えられず、作家としてもスランプに陥っている。ある日、ゲイ風俗で働くレオと出会い、その若さと美しさに打ちのめされる。山崎の代表作を心の糧にして育ったというレオ。山崎は自分以外の存在に、生涯で初めて恋心を抱く。レオもまた山崎に見知らぬ父親の面影を重ね合わせ、すれ違いを抱えたまま、2人の旅が始まる。
“年齢差47歳”で主演を務めるのは「太陽」「沈黙 サイレンス」の田村泰二郎と「国民の選択」「黄龍の村」の水石亜飛夢。そのほか、寺山武志、田中理来、日出郎、モロ師岡、津田寛治、千葉雅子、村井國夫が脇を固め、音楽を「舟を編む」の渡邊崇、撮影をNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」も担当した神田創が務めている。
(C)2022 老ナルキソス製作委員会予告編は、東海林監督が自身で編集したもの。山崎がマティーニからオリーブを取り出す映像から始まる。「(ギリシャ神話の)ナルキソスは、湖に映った自分の姿に見とれて溺れ死んでしまった。僕はもう溺れ死ぬことも出来ない」というセリフとともに、深く暗い水底に沈んでいく山崎の映像が重なっていく。前半は山崎の心情とレオとの出会いを描き、後半は明るい音楽を背景に、青空に映える黄色のオープンカー「HONDA s800」に乗りこみ、山崎の失われた時を遡る旅に出る2人の様子を映し出す。満開の桜の下、山崎の歩く姿を追うシーンがラストカットに置かれ、その背に過去と未来を想像させるような、美しい仕上がりとなっている。
「老ナルキソス」は、5月20日より新宿K's cinemaほか全国順次公開。R15+指定。
(C)2022 老ナルキソス製作委員会
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