金平茂紀が見たセルゲイ・ロズニツァ「新生ロシア1991」 当時のプーチンの姿と現在の戦争にも言及
2023年2月7日 14:00

ベラルーシで生まれ、ウクライナで育ち、ロシアで映画を学んだセルゲイ・ロズニツァ監督が1991年8月にソ連のモスクワで起きた「ソ連8月クーデター」を題材に手がけたドキュメンタリー「新生ロシア1991」(公開中)のトークイベントが2月5日、シアター・イメージフォーラムで開催された。1990年代当時、TBSのモスクワ支局長だったジャーナリストの金平茂紀氏がゲストとして本作と当時について語った。
金平氏はまず冒頭で民主派のサプチャーク氏の側近を務める若かりし頃のプーチンの姿に気がついたか観客に問う。そのプーチンがラジオ局から出てくる時に自らの手で顔を覆っていたことを指摘し、この行為は諜報の人は本能的に自分の顔が出ることを警戒しているからこその行動で、この短いシーンでどのような仕事をしてきたかが解ると解説し、「彼の性格がよく現れたいかにもプーチンらしい仕草」だとコメントした。
また、1991年8月19日のクーデターは、金平氏がTBSモスクワ支局長に着任した5カ月後に突然起きたと振り返る。「アパートの窓を開けると通りを戦車が次々と走っていき、映画でも描かれていた通り、テレビからは『白鳥の湖』が垂れ流され、街中はラジオから流れてくる断片的な情報を追い求めていた人々で溢れていた」そうで、金平氏も職場に泊まり込み情報収集に努め、あんなに寝ないで働いた日々はなかったと回想する。
さらにロズニツァ監督作品については、「2020年に公開した『国葬』をはじめとする群衆3選企画、その後の『ドンバス』『バビ・ヤール』『ミスター・ランズベルギス』と全て劇場で見てきて、凄いなとは思っていたが、昨年の2月にプーチンがウクライナを侵攻すると監督の想像力の鋭さが突きつけられました」と語る。また、ロズニツァ監督の、自分が信じているものを映画として突きつけるその姿勢に感動すると評価した。

最後に金平氏は現在行われている戦争について「ウクライナで起きている戦争は、当事者でなくても戦争はダメだと思わないといけない。戦争をやる側は、自分たちの戦争は正義だと言いますが、戦争の本質は、敵を殺すことで、“正義の戦争”というものはない」と訴え、「新生ロシア1991」に登場する自由を求めていたロシア人たちは今何を思っているのかと思いを馳せていた。なお、このイベントは、大阪の第七藝術劇場でも、Zoomにより同時配信された。
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