「レジェンド&バタフライ」。総製作費20億円はいくら稼げば元が取れるのか?<後編>【コラム/細野真宏の試写室日記】
2023年1月27日 15:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
いよいよ今週末の1月27日(金)から邦画実写では久しぶりの超大作映画である「レジェンド&バタフライ」が公開されます。
前回の【前編】では内容の面から考察したので、それを踏まえて、今回は製作費や興行収入という経済的な面を考えてみましょう。
最初に、「レジェンド&バタフライ」のポテンシャルから考えてみます。
木村拓哉主演の時代劇映画というくくりで考えると、2006年公開作品の「武士の一分」があります。
この作品は、山田洋次監督による「たそがれ清兵衛」(2002年)、「隠し剣 鬼の爪」(2004年)に続く“時代劇3部作”完結作にあたり、興行収入41.1億円という大ヒットを記録しています。
これは、前2作が12億円、9億700万円ということを考えると記録的な大ヒットであることが分かります。
実際に、この作品が当時の松竹の配給映画としては「歴代最高興行収入」を記録していたのです!
同作が象徴的ですが、木村拓哉主演作品は、基本的には「強い」という特徴があります。
一方、マイナスになり得るのは、タイトルでしょうか。「レジェンド&バタフライ」には、少々“分かりにくさ”があると思っています。つまり、今作が「織田信長と濃姫の物語」と連想しにくいということです。
そのため、「木村拓哉が織田信長を演じる作品」というのを、如何に印象付けられるのかが勝負と言えます。
ただ、このミッションは、昨年の11月6日(日)に岐阜県で行われた「岐阜市産業・農業祭 ぎふ信長まつり」というイベントにて、割と達成できたのではと思います。
まずはイベントに参加したい人の応募が殺到。それがニュースとなり大きな注目を集める中、木村拓哉がプレッシャーに打ち勝って映画さながらの堂々たる立ち振る舞いを見せました。その際の映像はインパクトが抜群で、かなり多くの媒体で使われることになるという、文字通り「伝説」(レジェンド)を生み出せたのです!
岐阜県出身の伊藤英明がこのイベントを実現させるために尽力し、映画さながらの「陰の立役者」として活躍していました。
このように考えると、映画自体のクオリティーは高いので、オリジナル映画としてのハンデがありますが、興行収入30億円は狙えるのではないでしょうか。
とは言え、「総製作費20億円」とされています。
この巨額な製作費は、どのくらいの興行収入を稼げば元が取れるのでしょうか?
そこで、採算ラインを試算してみようと思います。
なお、総製作費20億円というのは、映画を制作する際に必要となる「制作費」と、映画を宣伝したりする際に必要となる広告宣伝費「P&A費」をあわせたものです。
個人的な考えでは、本作は「総製作費20億円=制作費14億円、P&A費6億円」という関係になっていると想定しています。
まず、私たちが映画を見る際に映画館に支払う映画の入場料金は「興行収入」として、基本的には「映画館と製作者サイドで50%ずつ取得する」という形になります。
ただ、映画が大ヒットして、映画館の座席稼働率が高かった場合は、製作者サイドが受け取れる「歩率」という割合が高くなります。
具体的には、本作の場合は、映画館45%、製作者サイド55%くらいになると想定されます。
そこで、製作者サイドが受け取れる「歩率」を55%として計算してみます。
仮に本作の興行収入が「武士の一分」を超える45億円に到達したとしましょう。
すると、映画館は45億円の45%の20.25億円、製作者サイドは45億円の55%の24.75億円を受け取ることができます。
ただし、製作者サイドのお金からは、配給会社が仕事をした分の「配給手数料」(総額の20%)が引かれるという仕組みになっています。つまり、製作者サイドは、配給会社に支払う「配給手数料」の4.95億円を除いた19.8億円を受け取ることになります。
そのため、興行収入45億円を稼げれば、総製作費20億円の場合は、ほぼトントンとなります。
このように、総製作費20億円の作品の場合は、興行収入45億円が大まかな採算ラインと言えます。
とは言え、映画の収入というのは、映画館での上映による「興行収入」だけではありません。
劇場公開後は、「2次利用」としてDVDや配信などでも稼げます。本作の場合は、テレビ朝日が製作委員会に入っているため地上波放送も見込め大きな収入が期待できます。
さらには、映画のタイトルが示しているように海外での展開も視野に入れているはず。本作の規模感であれば2次利用で10億円程度の収入が見込めます。
もし2次利用で10億円が手に入ると、経費などを差し引くと5億円くらいを製作委員会が手にすることができます。
総製作費20億円の内の5億円が「2次利用で回収できる」という想定です。
そのため、映画の劇場公開の時点で製作者サイドは15億円超の収入があれば良いことになります。
これは、先ほどの計算式に当てはめると、大まかに興行収入35億円というラインから利益が出る水準になりそうです。
つまり、本作で注目したいのは、まずは興行収入35億円というラインを超えられるかどうかが焦点でしょう。
このところ日本の実写映画の勢いが失われてきていますが、日本を代表するスタッフと俳優陣で作り上げられた本作はどんな結果となるのか。大いに注目したいと思います!
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い! NEW
大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW
【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
ハンパない中毒性の刺激作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。