「アバター」最新作はリアルを超える映像体験。世界にどれほどの衝撃を与えるのか?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2022年12月17日 09:00
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
2009年、文字通り「映像革命」が起こりました。世界の映画界に大きな衝撃を与え、現在も世界興行収入歴代1位を誇る「アバター」が公開されたのです。
そして、13年の時を経て、12月16日(金)から続編「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」が公開されます。
世界興行収入歴代1位を誇る映画の続編なので、世界中の映画ファンの期待は非常に高くなっていると思います。
ただ、心配な面があるとすれば、13年もの時を経ているため「前作の内容を忘れている人も少なくないのでは」という点でしょうか。
これは私もそうでした。とは言え、今回はそういう懸念に対して、事前に劇場で前作「アバター」を公開したりしていたので、割とそのような懸念は解消されていると考えます。
私も最近、改めて前作を劇場で見ました。やはり「映像革命」という表現は伊達じゃない。
この作品が現在も「世界興行収入歴代1位」を誇っていることに納得できました。
通常のケースでは、本作のように「世界興行収入歴代1位」にまでなっている作品であれば、すぐに続編が作られ公開されていたことでしょう。
では、そもそも、なぜ本作が公開されるまで13年間という年月がかかってしまったのでしょうか?
それは、本作の監督と脚本を務めるのが、現在も世界興行収入歴代3位を誇る「タイタニック」(1997年)や、今なおアクション映画の金字塔として名高い「ターミネーター2」(1991年)の「ジェームズ・キャメロンだから」と言っても過言ではないでしょう。
では、これを分かりやすく具体的に解説していきます。
まず、キャメロン監督が「アバター」の初期草稿を書いたのは、1994年のこと。
しかし、当時は映像技術で革命を起こせるほどの環境にはなく、ベストなタイミングを模索し続けます。
そして技術革新の進化によって、2009年に「アバター」が遂に完成しました。
映画は無事に公開され、大ヒットを記録。ここから、キャメロン監督は「5部作」といった構想を打ち出すことになるわけです。
さらには、続編を手掛けるには「残り4本の脚本を書き終えて全容を把握した上でないとダメだ」と考え、「すべての物語を緻密に組んでから撮影に臨む」というこだわりようだったのです!
そこまで作品の製作に心血を注ぎ続けるキャメロン監督ですが、やはり 13年間も待たされるというのは、一般の観客にはつらい面もあるでしょう。
そのため、実は本当に「5部作すべてが公開されるのかは、未だ正式には決まっていない」のです。
なぜなら、本作で映像等をこだわり抜いた結果、製作費が巨額となり過ぎ、世界興行収入歴代3位の「タイタニック」級まで世界で稼げないと赤字となる状況にまでなっているからです ……!
つまり、5部作までのすべてが公開されるのかについては、「本作の世界における興行収入がどうなるのか」の結果次第、という構造になっているとも言えるのです。
すでに3作目は撮影済みなので、3作目までは公開されることが決まっているようですが、本作の結果によっては、3作目でシリーズ完結となることも。
このように、キャメロン監督の壮大な構想が実現できるのかは、まさに「私たち観客に委ねられている状況」と言えるのです。
本作ではタイトルの「ウェイ・オブ・ウォーター」(海への道)が示すように、メインの舞台が「森」から「海」へと移ります。
今回は撮影手法の技術革新により、前作の「映像革命」を超える映像表現を生み出すことに成功しています!
前作「アバター」では、通常のモーション・キャプチャーから「パフォーマンス・キャプチャー」を採用していました。
「パフォーマンス・キャプチャー」とは、体の動きをとらえるモーション・キャプチャーと、顔の動きも同時にとらえる技術です。
今回は、それを水の中でも行なったため、撮影機材の開発はもちろんのこと、俳優陣は、水の中で息を止めながら自然な演技をし続けるといった想像を絶するような撮影を敢行したのです。
これらが功を奏し「映像革命」を超え、「映像がリアルを超える」といった領域まで実現できていました。
「息をのむ映像」というのは、こういうことを言うのでしょう。
そして本作で、特に注目したいのは後半の戦闘シーンです。
「海」を舞台にしているため、キャメロン監督ならではの「タイタニック」的な要素だけでなく、「ターミネーター2」を超えるような壮大な映像が繰り広げられ、まさに「映画史に残る必見の映像」が実現できているのです!
個人的に興味深いのは、前作とは異なり「人間パート」がほとんどなく、地球から遥か彼方の神秘の星「パンドラ」が舞台となっている点です。
そのため、「CGを駆使した人間型の種族」が中心となっていて、正直、どの俳優がどのキャラクターを演じているのかさえ分からない状態です。
私はジャパンプレミアで見たのですが、キャメロン監督の舞台挨拶で事前に「シガニー・ウィーバーが14歳のキリという少女を演じる」という話を聞けたので、本編をそういう視点で見ることができましたが、正直、言われないと気付きませんでした。
実際に、本編を見た後で、「タイタニック」に続き、ケイト・ウィンスレットが出演していたことを知った状況です。
これらは、勿体ないとも言えますが、そういうことも含めて「キャメロン監督のこだわり」なのでしょう。
さて、今回はかなり難しいですが、本作の日本における興行収入について考えてみたいと思います。
まず、本作の凄さは、何といっても「映像技術」にあります。それは「3D」は言うまでもなく、「HDR」(ハイ・ダイナミック・レンジ)という、より自然でリアルな描写が可能になる「最新の高画質技術」、そして「高ハイフレームレート」という「毎秒48フレーム」のリアルで滑らかな「最新の映像表現」(通常の映画では「毎秒24フレーム」)を実現しています。
そのため、「これらの設備が整っている映画館で体感できるかどうか」が重要となります。
このような特殊な作品なので、本作の「没入感」は、どれだけ良い環境で見るのかによって変化が起こり、見る劇場の環境によっても感想は変わりそうです。
さらには、上映時間「3時間12分」の「体感時間」も変わってくるのが懸念材料として出てきます。
次に、ディズニー配給作品となったので、いわゆる「45日ルール」という、劇場公開から45日以降にディズニープラスで配信するといった「配信」との兼ね合いも考慮する必要があるでしょう。
ただ、本作については、劇場でこそ威力を発揮する作品であることと製作費の問題が非常に大きいため、いわゆる“「45日ルール」がない初めての作品”になるのでは、と想定しています。
このように考えると、目標としては、興行収入100億円突破は目指したいところですが、上記で考察したような状況を踏まえると、まずは興行収入 50億円~70億円が必達の目標と言えるのではないでしょうか。
それ以降については、口コミがどこまで広がるのかにかかっていると思われます。
「トップガン マーヴェリック」は、配信が出ようと、DVD等が出ても、劇場で体感したいという映画ファンに支えられて、超異例なロングランを続けています。
果たして本作でも同じような事態が起こるのか? 大いに注目したいと思います!
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