「海炭市叙景」「オーバー・フェンス」、NHK北海道の道南エリアで12月3・4日に放送
2022年11月25日 13:00
北海道函館市出身の作家・佐藤泰志さんの遺作を映画化した「海炭市叙景」(2010/熊切和嘉監督)と、芥川賞候補作を映画化した「オーバー・フェンス」(16/山下敦弘監督)が、NHK北海道の道南エリアで放送されることが明らかになった。「海炭市叙景」は12月3日午前0時25分、「オーバー・フェンス」は12月4日午前0時25分から放送される。
両作ともに、地上波で放送されるのは初めてのこと。41歳で自死を遂げた佐藤さんの小説を5本映画化し続けてきた、函館市民映画館・シネマアイリスの菅原和博氏が「海炭市叙景」の公開から12年経った現在の心境を、映画.comに語った。
「『海炭市叙景』の公開から12年経ちました。忘れられていた函館出身の作家佐藤泰志の復活と、リアルな函館の街を映し撮った映画を作りたい、という思いからこの企画は出発しました。熊切和嘉監督の卓越した演出と500人を超える市民の協力により本作はかってない地方発信映画となりました。
結果、佐藤泰志が残した小説はほぼ全てが書籍化されました。シネマアイリスも5作品、映画化をすることができました。この奇跡のような出来事に自分が関わっていることが不思議でなりません。ただ、地方で生きることの生き苦しさは12年前となんら変わっていません。コロナ禍のせいでより悪くなっています。それでも『映画の力』を信じて、これからも映画館、映画製作にチャレンジして行くつもりです」
フィリピンの第12回シネマニラ国際映画祭のコンペティション部門で、グランプリと最優秀俳優賞を受賞した「海炭市叙景」は、多くの函館市民が映像化を切望し、大規模な募金活動で予算4000万円のうち1500万円を集めた意欲作。18編で構成された小説のなかから5つの物語を抽出し、バブル崩壊後の不況に苦しむ地方都市と、ささやかながらも必死に生きる人々の姿を丁寧に描いている。谷村美月、竹原ピストル、加瀬亮、三浦誠己、山中崇、南果歩、小林薫らが出演した。
一方の「オーバー・フェンス」は、小説家としての生活を諦めかけた時期に函館の職業訓練校で過ごした日々の経験をもとに執筆し、自身最後の芥川賞候補となった作品が原作。妻に見限られ、故郷・函館に戻り職業訓練校に通いながら失業保険で暮らす男と、“鳥になりたい”と願う風変わりなホステスが孤独を抱えながらも、共に生きていこうとする姿に迫っている。オダギリジョー、蒼井優、松田翔太、北村有起哉、満島真之介、優香、塚本晋也(声)らが出演している。
「海炭市叙景」は12月3日午前0時25分、「オーバー・フェンス」は12月4日午前0時25分から、NHK北海道の道南エリアで放送される。