伊丹十三監督の回顧上映が台北で開催 宮本信子が「タンポポ」「お葬式」製作秘話語る
2022年11月11日 19:36

伊丹十三監督の全10作品の4Kデジタルリマスター版を上映する、回顧上映が台湾・台北金馬映画祭で開催され、11月11日、伊丹監督の妻で女優の宮本信子が、当時のプロデューサーを務めた伊丹プロダクション玉置泰代表取締役会長とともに会見に応じた。
今回、伊丹プロダクションの全面的な協力のもと、日本映画放送が全10作品を4Kデジタルリマスター化。「タンポポ」(85)を除く9作が台北金馬映画祭で世界初上映となる。台湾来訪は2度目だという宮本が「私の好きな街です」と挨拶すると、現地の記者から次々と質問が寄せられた。

台湾の観客に薦めたい、お気に入りの伊丹作品を問われると、「選ぶのは大変ですね。どの子どももかわいいように、作品もかわいいので、順番をつけるのが難しく、1番をつけることができません」と回答。女優としての伊丹作品の魅力を「脚本が素晴らしいです。その人ならではのセリフが、どの作品にもあって」といい、当時の現場を振り返りながら、「皆さんに伊丹十三がOKと言った時のニコッと笑った顔をお見せしたいんです。本当に素晴らしいんです」と述懐した。
「タンポポ」製作のきっかけについて「実は伊丹さんはラーメン屋さんにそんなには行きません。どうして日本人はこんなにラーメンが好きなのか? それが一番彼が考えていたことです」と明かし、「ある日中華料理屋さんに行ったら、まな板の上に大きな包丁があって、(料理人が)ねぎをブツっブツっと切って、チャーシューもザクっ、ザクっと。その姿を見て、伊丹さんは『これが映画だ』と。それで、ラーメンの映画を作ろうと思ったんです」と説明。そして、「タンポポは私が一番好きな花。地面に咲いていて、人に踏まれても何度も生えてくる、そこが大好き。伊丹さんはそのことを知っていて、主人公の名前はタンポポになったのだと思います」とタイトル命名秘話も語った。

「お葬式」は、宮本の父親の葬儀の際のエピソードが語られた。「お葬式には普段縁のない親戚や会わない人たちが集まりますよね。その時に、悲しいけれど、おかしいこと、ギャップのようなことがいろいろあって。例えばいきなりおなかが空いて笑っちゃったり……伊丹さんは悲しくてもふっと日常に戻る瞬間、そういうことが面白かったんだと思います。ですから、私は父が亡くなって悲しくはあったのですが、親戚が来て儀式を行っている間に、ふたりで煙を見ていたら、『これは映画になるね』って伊丹さんが言ったんです。しかも『小津(安二郎)さんの映画みたいだね』って。実際にお棺の中の父の顔色が黄色く見えたこともありました。伊丹さんにとって、そういう小さなディテールの積み重ねが面白かったのではないでしょうか」としみじみ振り返る。

今回の回顧上映を「伊丹監督は作品をスクリーンで見てほしいという意思がありましたので、それが実現できることがうれしいです」と喜ぶ玉置会長。「もし伊丹さんが生きていたら?」という質問には「映画館で映画らしく、大きい画面で、監督が思った通りのサイズで上映して、お客さんがどう見てくれるかを気にされていたので、今回4Kできれいになって、めちゃくちゃ喜んでいると思います」(玉置)、「10作品がきれいになって、まとめて台湾の方に見ていただけるなんて、幸せだなあと言うと思います」(宮本)と、うれしそうに答えていた。
また、会見が行われた台北のミニシアター、台北之家では現在、宮本と芦田愛菜が共演した「メタモルフォーゼの縁側」が上映されている。BL漫画を通じて、年齢差のある女性同士が友情を結ぶ本作についても多くの質問が上がり、日本映画への興味関心の高さが伺えた。宮本も「ポスターを拝見し、つい今年公開したばかりなのに、ランキングに入っていると知って、本当に喜んでいます」と笑顔で様々な質問に応じていた。
伊丹十三監督全10作品の4Kデジタルリマスター版は、2023年1月、日本映画専門チャンネル、日本映画+時代劇4Kで、オールメディア独占・TV初放送される。
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