映画.comでできることを探す
作品を探す
映画館・スケジュールを探す
最新のニュースを見る
ランキングを見る
映画の知識を深める
映画レビューを見る
プレゼントに応募する
最新のアニメ情報をチェック
その他情報をチェック

フォローして最新情報を受け取ろう

検索

「ドント・ウォーリー・ダーリン」は、熱病に侵されているかのような物語 O・ワイルド監督が紐解く“ユートピアスリラー”の謎

2022年11月11日 13:00

リンクをコピーしました。
オリビア・ワイルド「一番面白いのは、トロイの木馬のような映画」
オリビア・ワイルド「一番面白いのは、トロイの木馬のような映画」
(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

フローレンス・ピューが主演し、完璧な生活が保証された街ビクトリーを舞台にした“ユートピアスリラー”「ドント・ウォーリー・ダーリン」が、本日11月11日に公開された。メガホンをとったのは、「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」を大ヒットに導き、俳優としても監督としても活躍するオリビア・ワイルド。インタビューで、前作の青春コメディから一転し、サイコスリラーを作り上げた意図、主演のピューのキャスティング理由、インスピレーションを受けた作品について語り、謎めいた物語を紐解いた。

画像2(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

理想の街ビクトリーで、アリス(ピュー)は愛する夫ジャック(ハリー・スタイルズ)と平穏な日々を送っていた。街のルールは、「夫は働き、妻は専業主婦でなければならない」「パーティには夫婦で参加しなければならない」「夫の仕事内容を聞いてはいけない」「街から勝手に出てはいけない」。ある日、アリスは隣人が赤い服の男たちに連れ去られるところを目撃。それ以降、彼女の周りで、不気味な出来事が連続する。精神が乱れ、周囲からも心配されるアリスだったが、やがて街のある秘密を知ってしまう。アリスは支配された人生から、逃れることができるのか――。

※本記事には、ネタバレとなりうる箇所が含まれます。未鑑賞の方は十分にご注意ください。
画像3(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
画像4(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
――前作「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」とはうって変わって、本作はサイコスリラー作品となりました。最初にこのジャンルを選んだ理由、またどのように物語を膨らませていったのか、教えてください。

私はサイコスリラーが好きなので、作るきっかけがほしかったんです。子どもの頃は姉と一緒に、明かりの前にカーテンを張って、影絵でスリラー劇を作っていました。自分の寝室で「ホラー本図書館」を開き、1冊につき1セントの貸し出し料を徴収したりもしていました。スリラーやホラー映画は昔から大好きで、コメディと並んで、観客の感情を操る究極の方法だと思います。人の心の奥深くにある琴線に直結することですから。それは、監督としては大きな喜び。コメディは観客を笑わせ、意表を突きますが、スリラーも同じだと思います。

加えてラブストーリーを作りたいという思いもあり、「スリラーでありながら、ラブストーリーでもあり、政治的でもある作品を作れないものか」と考えていました。興味のあるさまざまなことに触れるチャンスでした。ただ、これはあまりにも野心的な作品だったため、誰も作らせてくれないだろうと思い込んでいたんです。スケール感においても、どこで誰とどう撮るかという点においても、とにかく野心作でした。そんななか、想像以上の作品を作ることができ、本当にラッキーでしたね。

画像5(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
画像6(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
――前作と違い、オリビア監督ご自身が出演されています。監督と製作と俳優、さまざまな役割を担いながら進める映画づくりは、いかがでしたか。

さまざまな責任を負わなければならない立場にあったから大変でしたが、(作品に)完全に没入でき、ものを創造するプロセスを隅々まで経験させてもらえたことは良かったです。自分が作品と一体になれたような、電撃的な感覚を味わうことができました。

画像7(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

また、スタッフやキャストと、かなり近い距離で働くことができたのも良かったです。(キャストを兼ねることで)どんな場面においても、役者がその時々に感じていることを、直に感じとることができました。映画の撮影現場には、ロジカル的な大変さがあるわけですが、監督はそんな状況でも、役者の心情を察知できていなくてはならない。「いかにして環境を整え、役者たちから最高の芝居を引き出すか?」ということを、いつも意識しています。

監督とキャストを兼ねるのは、とても疲れる作業なので、今後はやらないかもしれません。でも、そういうチャンスを得ることができて嬉しかったですね。

画像8(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
――ワイルド監督の作品にはいつも、あらゆる立場の人を尊重する眼差しが貫かれていると感じます。本作でもアリスの女性の視点だけではなく、夫ジャックの視点も描かれていますが、ふたりのキャラクターは、どのように作り上げたのでしょうか。

ケイティ・シルバーマンとの共同脚本では、とにかく「このストーリーにヴィランはいない」ということを意識しました。行動の裏には、必ず感情的な理由がある。そして何につけても、全員の言い分を正当化できるものが一番面白い。本作でも、登場人物の行動には深い感情的な理由があることが大事で、そう描いているからこそ、観客が共感できるような人物像になっていると思います。善か悪かという単純なことでは片付けられないですね。

画像9(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

この作品はスリラーなので、心底楽しめるような、古典的なハリウッド映画にしたいという考えがありました。クリス・パイン演じる、(ビクトリーを仕切る)フランクというキャラクターが敵対者として描かれますが、観客が見入るような、魅力的なヴィランとしての雰囲気を思いっきり引き出しました。ヴィランは、とりわけヒロインの前に立ちはだかる敵として登場する場合、その魅力が一層引き立ちます。なので、フランクを描くにあたっては、どんな心理的なダメージがあって、あのように権力を我が物にできるという歪んだ認知を持つに至ったのかを掘り下げたかったんです。そうは言っても、かなり憎たらしい人物ではあるので、共感するには限界がある。いずれにしても、脚本を書く上で一番楽しいのは、各登場人物の行動の根っこにある正当な理由を見出すことだと思います。

画像10(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
画像11(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
――アリスは、誰もが憧れる理想の世界に疑問を抱き行動を起こす、意志の強いキャラクター。演じたフローレンス・ピューのキャスティング理由と、演技の感想を教えてください。

フローレンスは、アリスに人間性をもたらし、完璧に演じてくれました。このようなSFに触れる作品では、登場人物にSF的な要素が感じられると、観客の共感を阻害しかねない。逆にリアルに感じられるような描き方ができていれば、全体がうまくいく。フローレンスには、人間らしさを感じさせる温かみがあります。また1950年代が舞台の作品は、役者も50年代の声で発声することが多いのですが、アリスには現代的で自然な声が必要ということを、フローレンスは理解してくれました。

また、彼女はアメリカ訛りで話すという課題もこなしてくれたので、感謝しています。彼女はイギリス人ですが、アメリカ英語があまりにも完璧なので、驚きました。フローレンスのように完璧にこなせる人はいない気がします。フローレンスの声は、アリスの人物造形、そしてこの作品で描いている世界の重要な要素になる。とても温かみのある、引き込まれるような声で演じてくれています。

画像12(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
画像13(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
――劇中には、アリスの夢に登場する女性たちのダンスや、アリスが顔にラップを巻くシーンなど、不安を掻き立てるシーンがちりばめられていますね。そうした場面にこめた意味やこだわりを、教えてください。

これは、まるで熱病に侵されているかのような物語。このコンセプトを確立しさえすれば、潜在意識を心象風景として自由に表現でき、直線ではないストーリーテリングが可能になります。本作では、潜在意識を描く手段として、魔術的リアリズムを用いました。ドキュメンタリーではなく、フィクションを作る理由は、そこにあります。フィクションであれば、文字通りに描く必要はないので、脳がどのように情報を処理し、潜在意識がどのように悪夢に反映され、我々への警告となるのかを探索することができます。

ネタバレにならないように話すのは難しいですが、具体的な例を挙げるなら、悪夢のダンサーたちはアリスの潜在意識であり、彼女をどこかへ引き戻そうとする警告でもある。つまり、彼女を救おうとしていると同時に、彼女を苛むものでもある。ギリシャ神話で言えば、「オデュッセイア」に登場するセイレーン的な存在でもある。ダンサーたちは彼女を誘惑しつつ、目を覚まさせようとするんです。

画像14(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
画像15(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
――目や円などのモチーフも、印象的に登場しますね。

はい、目や円のモチーフも、たくさん使っています。撮影監督のマシュー・リバティークと話し合い、潜在意識への「ワームホール」、あるいはトンネルやブラックホールとも言える、それを象徴するような形状をちりばめてみました。また、劇場で見る観客はこの「ワームホール」を集団体験することになるはずだから、そういう劇場ならではの魔法を生かし催眠術にかけられれば、ビクトリーの世界にそのまま引き込むことができるに違いないと思いました。そうなれば、観客もアリスと同じ犠牲者として、この物語を味わうことになります。

我々のなかにある恐怖心を脳がどのように表出するかは、潜在意識を扱った文学や映画、芸術作品が数多く存在するので、撮影に向けてのリサーチは本当に楽しかったです。そして、欲望や恐怖や不安といった観念を、革新的な方法で、映画として描いてきた先人たちがいて、彼らへオマージュを捧げることができた気もするので、とてもやりがいがありました。

画像16(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
――本作は、「危険な情事」「幸福の条件」といった作品から触発されたと発言されており、インスピレーションの源として、「インセプション」「マトリックス」「トゥルーマン・ショー」なども挙げられていますね。

各作品から、それぞれ影響を受けています。90年代のエイドリアン・ラインの映画について発言したのは、現在のアメリカ映画であまり見られなくなったエロティシズムがあると思うからです。そして「マトリックス」「トゥルーマン・ショー」のような映画は、私たちの現実に対する認識を覆し、非常に複雑で哲学的なテーマを提示しつつ、大勢が理解し、楽しめるエンタテインメントに仕上げている。また、見たあとに考えさせられる。「トゥルーマン・ショー」はコメディですが、実存的な問いを投げかけています。

一番面白いタイプの映画は、トロイの木馬のような映画だと思うんです。外見上はエンタテインメントですが、見始めると、そこにはもっと複雑な何かがあることがわかる。私はいつも、そういう映画を作りたいと思っています。

画像17(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

フォトギャラリー

フローレンス・ピュー の関連作を観る


Amazonで関連商品を見る

関連ニュース

映画.com注目特集をチェック

関連コンテンツをチェック

シネマ映画.comで今すぐ見る

それでも夜は明ける

それでも夜は明ける NEW

第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。

aftersun アフターサン

aftersun アフターサン NEW

父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。

HOW TO HAVE SEX

HOW TO HAVE SEX NEW

ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。

愛のぬくもり

愛のぬくもり NEW

「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。

卍 リバース

卍 リバース NEW

文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。

痴人の愛 リバース

痴人の愛 リバース NEW

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。

おすすめ情報

映画ニュースアクセスランキング

映画ニュースアクセスランキングをもっと見る

シネマ映画.comで今すぐ見る

他配信中作品を見る