藤ヶ谷太輔の演技に心を動かされた――「そして僕は途方に暮れる」撮影現場レポート
2022年10月25日 17:00

「Kis-My-Ft2」の藤ヶ谷太輔が主演する映画「そして僕は途方に暮れる」の新たな場面写真&メイキング画像とともに、撮影現場の様子が初披露された。
本作は、藤ヶ谷が主演し、映画「愛の渦」「娼年」などを手掛けた三浦大輔が作・演出を担った舞台を映画化。藤ヶ谷演じる主人公の平凡なフリーター・菅原裕一がほんの些細なことから、恋人、親友、先輩や後輩、家族と、あらゆる人間関係を断ち切っていく様を描く。6年ぶりに映画主演を務めた藤ヶ谷は、心身を削って撮影に挑み、俳優として新たな魅力を放つ。
撮影は、2021年の3~4月に行われた。映画だからこそ、実際に現地へと足を運んで撮影する──すなわちロケーションが各地で敢行されている。原作となった舞台では、ロードムービー的な物語を舞台上でどう見せるかという工夫が施されていたが、映画は文字通りロードムービーとして、物理的に場所を移動して撮影していく。
藤ヶ谷演じる裕一が、追いつめられ帰る北海道の苫小牧は、三浦監督の生まれ育った地でもある。
三浦監督「そこに強い思いがあったかと言われると、実はそういうことでもなくて。さんざん見てきた景色だったから切り撮りやすかったというのが、正直なところなんです(笑)。とはいえ、苫小牧独特の空気感が滲み出るような映像は撮れたのかなと思っています。何より、藤ヶ谷くん自身が苫小牧へ行って、菅原の生まれ故郷を体感してバックボーンを蓄積したことによって、その後の芝居においても役立ったように感じているんです」

北海道での撮影は4月だったにもかかわらず、真冬のように寒かったという。肉体的にも精神的にも追い込まれ、雪の中を途方に暮れて歩く藤ヶ谷の姿は、自身が演じる裕一によって、一層のリアリティがもたらされていたに違いない。
また、本作はシネマスコープのサイズで撮影されている。「シネスコの狙いはまず、作品全体を『映画というもので包む』という意図があったので、仕掛けとして必要だったんです。あとは、一見、はたから見たら、どうでもいいと思えるような些細な物語なので、それを敢えて、映画的に見せ切ることが、歪(いびつ)で面白いと思ったんです」と話す三浦監督。
当初、小西啓介プロデューサーはシネスコサイズで撮ることに懐疑的だったようだが、終わってみれば監督の選択が賢明だったと称賛している。「前半は室内での会話シーンが多いのでシネスコサイズの効果がどれだけあるのだろうか? 現場は狭いし、色々大変なんじゃないかとスケジュール面への影響なども心配していましたが、北海道ロケやドローンで撮った映像を見て、前半の窮屈な世界感と後半のギャップは効果的だと思いました」(小西氏)。そういったテクニカルな面もさることながら、本作では、三浦監督の変化がいくつか見られたようだ。
小西氏「終盤のある大事なシーンの撮影のワンテイク目で藤ヶ谷さんが完全に裕一が乗り移ったかのごとく……感情が溢れ出す凄いお芝居をされたんです。それは凄く良かったのですが、そのシーンの狙いとはやや違っていたので、その後、結構な数のテイクを重ねていたことがありました。ですが、後の編集ラッシュで監督はワンテイク目を使って、裕一の感情に寄り添った劇伴までつけていました。私が知る限りでは演出家としての三浦監督は俳優さんのお芝居に引っ張られてシーンの狙いを変えることがこれまでほぼなかったような気がします。少しでも違うなと思うとテイクを重ねながら微調整して完成形に近づけていく。そのあたりの徹底ぶりは凄いものがあります。でも、結果的にそのシーンではワンテイク目を使った。シーンのニュアンスを変える程、藤ヶ谷さんの演技に心を動かされたのだと思いました。その点はすごく印象に残っていますね」
これは、菅原裕一と同化した藤ヶ谷による“台本を超えての真に迫る芝居の賜物”といえるだろう。

現場での藤ヶ谷は、人間関係を断って逃げる役柄ということもあり、和気あいあいというよりは、裕一という役に向き合って黙々と芝居に臨んでいた。演出面で三浦監督に追い込まれ、藤ヶ谷自身も敢えて自分を追い込んでいたようにも見えたという。撮影が進むにつれ、どんどんやつれて疲弊していった藤ヶ谷は“まさに身を削って裕一役を演じ切った”のだ。
「そして僕は途方に暮れる」は、23年1月13日に東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。なお、第35回東京国際映画祭(11月2日まで開催中)ガラ・セレクション部門に正式出品されている。
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