「あちらにいる鬼」道ならぬ恋に落ちる作家の女と男とその妻、緊張の走る三者初対面シーン公開
2022年10月20日 17:00

直木賞作家・井上荒野による、父である作家・井上光晴と母、そして瀬戸内寂聴をモデルに男女3人の特別な関係を描いた同名傑作小説を、主演・寺島しのぶ、豊川悦司、共演に広末涼子を迎え、廣木隆一監督・荒井晴彦脚本で映画化した「あちらにいる鬼」。このほど、道ならぬ恋に落ちる作家の女と男とその妻が一堂に会し、初対面する緊張感あふれる本編シーンが公開された。
昨年11月、満99歳で波乱の人生を全うした作家・僧侶の瀬戸内寂聴。1960年代から人気作家・瀬戸内晴美として活躍した彼女が出家した背景には、同業者で妻子ある井上光晴との恋があった。出会うべくして出会い、互いにのめり込んでいくふたりと、全てを承知しながら心を乱すことのない男の妻。「あちらにいる鬼」は、同志にも共犯にも似た不思議な3人の関係を、光晴の長女、井上荒野が書き上げたセンセーショナルな物語だ。
映画では、寂聴をモデルにした人気作家・長内みはる(寂光)を寺島が演じ、実際に剃髪して臨んだ。井上光晴をモデルとした白木篤郎を豊川、白木の妻・笙子を広末が演じているほか、高良健吾、村上淳、蓮佛美沙子、佐野岳らが共演している。
このほど公開されたのは、出版社の講演会で白木篤郎と知り合った長内みはるが、次の小説の参考にしたいという口実で、白木の棲む団地を訪れるワンシーン。相手に妻子があることを知るみはるだが、今回の映像では、そこへ白木の妻、笙子が現れる場面が切り取られている。ほのかな恋心をみはるが抱き始め、お互いの運命を大きく左右することになる三者それぞれの表情に、さまざまな思いが読み取れる。
撮影終了後にこのシーンを振り返ったみはる役の寺島は「バス停で初めて会った場面は、私がはしゃいでいたところですよね。篤郎に団地ツアーをしてもらっていたら、奥さんがぱっと現れて、私をポンと置き去りにして、ふたり乗りの自転車で去っていく。『ああ、これが現実なんだ』ってすごく思いました」と回想。この寺島の言葉を知った笙子役の広末は「みはるさんの方が素直で正直。自分の方が年下なのに、みはるさんを見た時に恋をしてキラキラした少女で、一瞬で負けた!と思いました」と語り、それはまるでみはると笙子の感情そのままに、お互いを強く意識していたことを明かしている。
タイトルにある「鬼」について、白木役の豊川は本作への想いと併せてこう考察している。
「モデルとなった井上光晴さんと笙子さんのお墓は、岩手県の天台寺にあるそうですが、そのお墓を提案したのが瀬戸内寂聴さんで、寂聴さんもいずれ同じ敷地内に納骨なさると聞きました。それを信頼関係と言っていいのかわからないですが、あなたたちは好き合って、この特殊な関係を全うしたんですね、と思う。それはもう誰も何も言えないぐらい濃密で、丁寧に扱われるべき関係だという気がしますよね。今、この関係を日本で成立させようとしても、数の論理でバッシングされ、否定されてしまうでしょう。でも、文化というものが実在するとしたら、数の論理で否定してしまう風潮が一番の敵なんじゃないかなと思います。
文化というのは、こんな愛し方っていうのもある、こんな関係もあると、世界で、たったひとりで立っている人に向かって語りかけ、それについて自由に考えるものであってほしい。僕はこの映画を観てくださった方に問いたいです。批判できるものなら、してみてよ、この男と女の関係をと。炎上させられるのならしてみてくださいよ、この3人の関係を。僕はこの映画のタイトルの鬼とはこの3人ともだと思う。3人が3人、楽しんで鬼ごっこをしていた人生ではないでしょうか」
それぞれの運命を大きく変えた2人の女と1人の男、彼らが初めてそれぞれの存在を認識した数分間。その後繰り広げられる三者三様の人生を是非スクリーンで確認して欲しい。
「あちらにいる鬼」は、11月11日から全国公開。R15指定。
(C)2022「あちらにいる鬼」製作委員会
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