【インタビュー】永野芽郁&奈緒が叶えた“あの日の約束” 体現したのは「この世に存在している単語では表せない関係」
2022年9月27日 10:00
「シイノにとってのマリコがいなくなってしまうように、私にとっての奈緒ちゃんがいなくなってしまうことを想像すると、いたたまれない。『悲しい』や『寂しい』を超えて、唖然としてしまいます。奈緒ちゃんは、そういう感情をリアルに引き出してくれる大切な人だから。『お芝居しよう』と思わなくてもできるというベースがあって、この作品に挑むことができたのは、すごく大きかったです。相手が奈緒ちゃんじゃなかったら、本当に厳しかったし、こんなに胸を張って『見てほしいです』と言い切れる作品にできなかっただろうなと思います」
そう明かすのは、9月30日に公開される「マイ・ブロークン・マリコ」で主演を務めた永野芽郁。NHK連続テレビ小説「半分、青い。」(2018)でも親友を演じた奈緒と、再び親友同士という役どころで、約4年ぶりの共演が実現した。奈緒が「この世に存在している単語では表せない関係」と語る通り、ふたりは友情や愛という枠を超え、ときに盲目的とも思える、すさまじい熱を帯びた関係を体現した。(取材・文/編集部)
本作は、「百万円と苦虫女」「ロマンスドール」のタナダユキ監督が、平庫ワカ氏の同名人気コミックを映画化するもの。物語は、鬱屈した日々を送る会社員・シイノトモヨ(永野)が、テレビのニュースで親友・イカガワマリコ(奈緒)の死を知ることから始まる。学生時代から父(尾美としのり)に虐待を受けていたマリコの魂を救うため、シイノは遺骨を奪うことを決心。「刺し違えたってマリコの遺骨はあたしが連れて行く!」と誓い、マリコの実家から遺骨を強奪したシイノは、そのまま旅に出ることに。マリコの遺骨を抱き、彼女との思い出を胸に、シイノが向かった先は――。
原作漫画は、2019年にオンラインコミック「COMIC BRIDGE」で連載され、20年に発売された単行本(全1巻)は即重版が決まるなど、熱狂的なファンを生み出した。永野と奈緒は、「衝撃的だった」という作品の魅力を紐解く。
オファーを受け、衝撃的な物語と向き合う一歩を踏み出すことができたのは、やはり互いの存在によるものが大きかったという。
シイノの脳裏には、マリコとの幸せな思い出だけではなく、目を背けたくなるような、悲痛な記憶も浮かび上がってくる。「あたし、何度もあの子のこと、面倒くせぇって……」と呟くシイノに、マリコがもういないという喪失感と、強烈な後悔が押し寄せるシーンは、たまらなく切ない。しかし、「面倒くさい」と感じられるほど向き合い、綺麗事だけではない関係を結ぶことができる存在は、得がたいものなのではないか。ふたりは、シイノとマリコの関係をどのようにとらえ、演じたのだろうか。
永野は、シイノとして過ごした撮影の日々を、「初めて、これが“違う人になる”。“なりきる”じゃなくて“なる”ってことなんだというのを体感した」と振り返っている。ボロボロで無様な姿を晒し、やり場のない感情に泣き叫び、マリコの遺骨を抱えて裸足で走り回るシイノ。永野は新境地とも言える役どころで、女優としてさらなる飛躍を遂げている。
タナダ監督はシイノについて、「感情むき出しのかっこ悪い姿をさらせるところが、めちゃくちゃかっこいい」と、その魅力を語っている。演じた永野が発見したシイノの魅力も、教えてもらった。
一方の奈緒は、実の父や彼氏からの暴力に苦しめられ続けたマリコを、いまにも壊れてしまいそうな繊細さとはかなさで表現した。そんなマリコの幻影に、シイノは「マリコ、あんた、何も悪かない。あんたの周りの奴らが、こぞってあんたに自分の弱さを押し付けたんだよ」と語りかける。
シイノは、マリコの遺骨との旅路のなかで、彼女の手紙を読み、過去を回想する。奈緒は、マリコがシイノに宛てた手紙を自ら書くことを提案したという。
「半分、青い。」で共演して以来、プライベートでも親交があり、絆を深めてきたふたり。「いつかまた一緒にふたりでお芝居をしよう」という“あの日の約束”を、本作で叶えた。永野は、「マリコが奈緒ちゃんじゃなかったら私はシイノになれなかったと思います」と明かしており、ふたりは完成した作品を見て、ともに涙したという。奈緒は、シイノの旅路を見て、どのような感情がこみ上げたのだろうか。
物語は、「自分は何も知らされず、親友の死を突然ニュースで知る」という、とてつもない絶望感で幕を開ける。しかし、“魂の片割れ”のように大切な人を失ったあともなお、人生は続き、人は明日を迎えなければならない。「The ピーズ」によるエンディング曲の「死にたい朝 まだ目ざましかけて 明日まで生きている」という歌詞が聞こえてくるかのようだ。最後に、ふたりが本作に見出した「救い」について、語ってもらった。
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