宗教、禁忌、エロス…P・バーホーベン新作「ベネデッタ」2月公開 実在した修道女のセクシュアルサスペンス
2022年9月13日 12:00
ポール・バーホーベン監督の最新作で、第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された「ベネデッタ」の公開が2023年2月に決定した。
実在した修道女の数奇な運命と彼女に翻弄される人々を描く、奇想天外なセクシュアル・サスペンス。17世紀に実在した女性、ベネデッタ・カルリーニはレズビアン主義で告発された修道女。幼い頃から聖母マリアやキリストのビジョンを見続け、聖痕が浮かび上がりイエスの花嫁になったと報告して信者の注目を集め、民衆の支持を得て修道院長に就任した。この歴史上初のレズビアン裁判記録「ルネサンス修道女物語 聖と性のミクロストリア」(J.C.ブラウン著/1988刊)を読み、ベネデッタの人物像に魅せられたバーホーベンが、唯一無二の物語を作り上げた。
「氷の微笑」(92)のシャロン・ストーン、「ショーガール」(95)のジーナ・ガーション、「エル ELLE」(16)のイザベル・ユペールら、バーホーベン作品には強く予測不能な女たちが登場する。今作では、フランスの国民的女優であり、「おとなの恋の測り方」(16)、「エル ELLE」では、信仰深い妻に扮したビルジニー・エフィラが、主人公ベネデッタを演じる。
宗教をビジネスとしてしかとらえていない修道院長役のシャーロット・ランプリングは「この映画に出演しない理由が見当たらない」とオファーを即決。歌手兼俳優として活動するランベール・ウィルソンが危険で威嚇的で欲にまみれた“悪党”の教皇大史を演じた。ヒロインの相手役となるバルトロメアにはギリシャの女優ダフネ・パタキアを抜擢。家庭内性暴力の被害者、そして聖女ベネデッタを破滅に導くきっかけとなるキーパーソンとして大胆な演技を見せている。
バーホーベン監督は、本作製作にあたり「ベネデッタの物語の独特な性質に惹かれたんだ。17世紀初めにレズビアンの裁判があったこと、裁判の記録や本書のセクシュアリティの描写がとても詳細なことにも感銘を受けた。そしてこの時代、女には何の価値もなく、男に性的喜びを与え、子供を産むだけの存在とみなされていたにもかかわらず、ベネデッタが手段はどうあれ、完全に男が支配する社会で、才能、幻視、狂言、嘘、創造性で登り詰め、本物の権力を手にした女性だったという点だ。私の映画の多くは女性が中心にいる。つまり、ベネデッタは『氷の微笑』『ショーガール』『ブラックブック』『エル ELLE』のヒロインたちの親戚というわけさ」とコメントしている。
17世紀のペシアの町(現在のイタリア・トスカーナ地方)。幼い頃から聖母マリアと対話し奇蹟を起こす少女とされていたベネデッタは、6歳で出家し修道院に入る。純粋無垢なまま成人したベネデッタは、ある日修道院に逃げ込んできた若い女性バルトロメアを助ける。様々な心情が絡み合い2人は秘密の関係を深めるが、同時期にベネデッタが聖痕を受け、イエスに娶られたとみなされ新しい修道院長に就任したことで、周囲に波紋が広がる。民衆には聖女と崇められペシアでの権力を手にしたベネデッタだったが、彼女に疑惑と嫉妬の目を向けた修道女の身に耐えがたい悲劇が起こる。そして、ペスト流行にベネデッタを糾弾する教皇大使の来訪が重なり、ペシアの町全体に更なる混乱と騒動が降りかかろうとしていた……。
2023年2月17日から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。今年10月に開催される京都ヒストリカ国際映画祭にて、1回のみの先行上映も予定している。
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