芸人・くまだまさしは600回観ている「プリティ・ウーマン」を再び鑑賞できたのか? 生涯ベスト映画も聞いたら意外な結末になった
2022年9月3日 11:00
2021年7月、僕はくまだにインタビューし、少なからず衝撃を受けた(詳しい内容は過去記事を参照)。幸いにも記事はTwitterを中心に話題となったが、僕の胸には強烈なひっかかりが残った。
それは、くまだが20年以上の間、累計600回ほども鑑賞する「プリティ・ウーマン」をプッツリと観なくなった、と語っていたことだ。言語化しにくいが、僕はこれを「面白いな」と思った。人間のミステリーというか、高度かつ複雑なシステムに生まれたエラーというか、日常に溶け込む怪奇というか……。
少し高尚に言えば、いわば人生の一部が欠落したに等しい出来事であり、それが解消されたとき、くまだ本人に一体なにが起きてしまうのか、と興味が湧いたのだ。平たく言えば、1年経って「また観られたかな?」とシンプルに気になった、ただそれだけだ。
知りたい。確かめたい。ならばもう一度取材してこよう。2022年8月某日、吉本興業東京本部の会議室。およそ1年の時を経て、僕は昨年と全く同じ私服姿のくまだと再び対面した。
今回のインタビューのテーマは「再び『プリティ・ウーマン』を鑑賞できたのか」「この1年で観た映画」「次に観たい映画」「生涯ベスト映画」――。まさかの「くまだまさしPart2」、始まります。
――本日はよろしくお願いします。今回も1時間ほどお時間を頂いております。
くまだまさし:また1時間!? 5分で終わりますって。先生、前回も聞きましたが、こんな記事で大丈夫なんですか?
――多分大丈夫だと思います。あの取材から、1年が経ちました。
先生、あたくし前回は48歳でしたが、49歳になりました。この1年でなにがあったのか、もうあれですよね? 取材だからとかそういうことなく、嘘偽りなくしゃべっていいんですよね?
――はい、嘘偽りなくお願いします。まずは前回記事のおさらいからです。手前味噌ながら、我々の感覚からすると尋常でないくらい話題になりまして……。ユーザーから反響がすさまじく、腹が壊れそうになるくらい笑っただとか。面白かったのは「感動した」という声が多かった点です。
えっ!? 感動した……? あの記事に?
――その一方で、「すごく怖かった」という声も多かったんです。
(笑)。単純に考えて「プリティ・ウーマン」だけを500回も600回も観てるの、異常ですからね。ですが、世の中には僕を超えるくらい「プリティ・ウーマン」を観てる人がいると思ってましたが、僕以上はいないんですね。それが意外でした。いると思ってましたから。
――――ご自身で、結構“とんだ行動”をしている自覚はある、ということでしょうか?
僕もバカじゃないので、そりゃ「プリティ・ウーマン」を観すぎてることはわかってます(笑)。コーヒーを1日1リットル飲んでたらさすがに飲み過ぎ、とわかるみたいに。でも話は少し違いますが、娘が某アイドルグループが好きで、彼らが出てる映画を2回、3回と観に行ってるんですね。それに対して「なにが楽しいんだい」と言いました(笑)。
――どの口が、という(笑)。
かたや僕はその200倍は「プリティ・ウーマン」を観てるわけですからね。
――前回の記事は、くまださんへ何か反響が届きましたか?
すみません、逆に質問なんですが……あの記事、一体どこで話題になったんですか? 僕のまわりではほぼ無風状態です(笑)。お金が発生する仕事につながったりとかいうのも、ほぼありません。先生! 怒りますよ! 反響ね~じゃねえですか!?
――あれ、おかしいな……?
ただ、明石家さんまさんの番組に出たときに、(共演した)とにかく明るい安村くんが僕の話を放り込んでくれたんです。「この人おかしくて、『プリティ・ウーマン』を600回も観てるんですよ」って。さんま師匠も映画好きで有名ですが、そのさんま師匠が「それは俺よりすごい」と言ってくれたんですよ! 収益にはなってないですが、喜びにはなりましたね。
――心にキラリと光る功績ができた、と。お金とかじゃないですよね、大事なことは。
――閑話休題です。前回のインタビューで、くまださんはあれだけ観ていた「プリティ・ウーマン」を、1年半も観ていない、と言っていました。
はい、そうですね。
――理由はいくつかあり、1つ目はコロナ禍で気分が落ち込んだこと。2つ目はいつもレンタルしていた近所のビデオ屋が潰れてしまったこと。3つ目はVODサービスの見放題に「プリティ・ウーマン」が入っていなかったこと。そのため1年半、観ることができていなかった、と。
そうです。
――今回のインタビューは、これをお聞きしにきました。この1年間で、くまださんは再び「プリティ・ウーマン」を観ることができたのでしょうか?
ずばりお答えします。俺、まだ観られてないんです。ファンの方からDVDが届きまして、それに手は伸ばしましたけど、観てねえんです。
――なるほど~……! 観られていない理由はなんでしょうか?
まだやっぱりコロナ禍ということもあり、気分がちょっと……。落ち込んでいるというほどではないんですが、まだ気分と仕事が、いろいろひっくるめて戻りきってないんです。
自分のなかで「これができたら全開だ」というバロメーターみたいなものがふたつあって。ひとつは、茨城・牛久の大仏を見に行くこと。これは行くことができたんです。自分のなかではひとつの山を登ることができました。
もうひとつは、実は「プリティ・ウーマン」を観ることなんです。これがまだできてない。自分のなかで「プリティ・ウーマン」はかなり巨大な山なんだということがはっきりわかりました。
……正直、何度か、観ようとしたんですよ。ファンの方からDVDが届きましたし、今は携帯電話とかでも観られるじゃないですか。
でも、気持ちなのか身体なのかわからないですけど、あれだけ観てたものを2年ほど観てないとなると、再び観ることはなんか“怖い”。だからこそ、この(苦境を抜ける)頂上に行ったときにこそ観てみよう、と。今はそう思っています。
――「プリティ・ウーマン」イップスですね。人生の一部だった1本の映画が、ぽっかりとなくなってしまった。それを再び観たときに自分が変わってしまっていることへの未知の恐怖ですね、おそらく。
前回の記事が掲載されてから、千原ジュニア先生のYouTubeに出させていただきましたが、そのときはもっと「プリティ・ウーマン」が怖かったと思います。
――「プリティ・ウーマン」は観られていないことはわかりました。では逆に、この1年でほかに何か映画を観ましたか?
はい、観ました。「トップガン マーヴェリック」です。
――なぜ観に行ったのでしょうか? そして、おひとりで行かれたのでしょうか?
昔、前作の「トップガン」を観てたし、今作も話題になってるからですね。なにより、くまちゃん元気になってきてる(笑)。水曜日に、都内の映画館へ奥さんと一緒に行きました。
――感想はいかがでしたか?
全部嘘抜きに、正直に言います。「いい映画だ」と思いました。感動しました。ただ本当に、最後、おしっこしたくなっちゃって……。
――(笑)。本編尺、結構長いですからね。
後半、だんだん「どうしよう……」って。奥さんにも怒られました。でっかいジュースとポップコーン買ったので「絶対にトイレ行きたくなるよ」って言われて、そうなっちゃったんですから。
本当にいい映画でしたし、感動しましたが、僕の感想は「最後は尿意」でした。
――仕事柄「トップガン マーヴェリック」のいろんなレビューを見てきましたが、「最後は尿意」は初めての感想です。
あとあれです、最近、スマホで「タイタニック(1997)」も観ました。「タイタニック」は僕が20代のころに公開されて、ビデオで借りて初めて観たんですよ。そのころは吉本興業に入る前で、人生の一番楽しい時期という記憶がありました。あの頃はよかった、というので「タイタニック」を観てみました。
――人生の一番楽しい時期を思い出す、というのはくまださんのなかで大きなキーワードのようですね。
あと「ルパン三世 カリオストロの城」も観ました。「トップガン マーヴェリック」「タイタニック」と含めて3本ですね。
――くまださんが、僕が予想していた以上にたくさん映画を観ていたことがわかりました。では“次に観たい映画”はなんでしょうか?
そりゃもう、やはり「プリティ・ウーマン」です。内容も、僕の気持ち的にも。給与明細がコロナ禍前の水準に戻ったら、それを手元に置きながら観たい。そのときは、気分はリチャード・ギアですよ。
ファンの方からDVDを頂きましたし、初めてレンタルではない「プリティ・ウーマン」を観ることになると思います。正直、もしかしたら、観たら泣いちゃうかもしれません。物語にではなく、これまであったことを思い出して。
――なるほど、ありがとうございます。終了のお時間が迫ってきたので、これが最後の質問です。くまださんにとって“生涯ベストの映画”は何でしょうか?
「フォレスト・ガンプ」です。
――いや「プリティ・ウーマン」じゃないのかよ。
「プリティ・ウーマン」ももちろん良いんですよ、良いんですけど、生涯ベストと言われたときに、頭にプッと最初によぎったのは「フォレスト・ガンプ」でした。
――「フォレスト・ガンプ 一期一会」がベストである理由はなんでしょうか?
数少ないですが、僕が人生で観た映画のなかで、一番大爆笑したのが「ガンプ」だからです。
――あんまり「フォレスト・ガンプ」のことを「ガンプ」って略す人いないですよ。
いや~、ガンプ先生。ガンプはすげえいい映画です。
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※キュートンとは…前衛的なパフォーマンスが特徴の6人組ユニット。メンバーは椿鬼奴、くまだまさし、キートン、しんじ、アホマイルド坂本、クニ。
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執筆者紹介
尾崎秋彦 (おざき・あきひこ)
映画.com編集部。1989年生まれ、神奈川県出身。「映画の仕事と、書く仕事がしたい」と思い、両方できる映画.comへ2014年に入社。読者の疑問に答えるインタビューや、ネットで話題になった出来事を深掘りする記事などを書いています。
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