【舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」レビュー】マジカルで驚きに満ち、愛の力を訴えるハリポタ最終章 日本版がついに開幕!
2022年6月18日 12:00
「ハリー・ポッター」シリーズ最終章となる舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」が6月16日、この公演のために全面改装された東京・TBS赤坂ACTシアターでプレビュー公演の幕を開けた。魔法に満ちたこの公演のレポートをお届けしよう(執筆:若林ゆり)。
この作品は、原作者J・K・ローリングがシリーズ「8番目の物語」として、舞台演出家のジョン・ティファニー、脚本家のジャック・ソーンと共同で創作。2016年に英ロンドンで開幕してローレンス・オリビエ賞に輝くなど大成功を収め、米ニューヨークをはじめ世界6都市で大ヒット。東京はアジア初、世界では7番目の開幕だ。初演はPART1、PART2からなる合計6時間(各2幕・休憩込み3時間)の2部作だったが、その後、北米などで3時間40分の1作品(2幕・休憩あり)として再構築されたバージョンが登場。日本版もこの凝縮バージョンでの上演となっている。
舞台はハリーがヴォルデモート(最後の「ト」は発音されない)を倒してから19年後。映画「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」のエピローグで描かれた、37歳のハリーがホグワーツ魔法魔術学校に入学する次男アルバスをキングス・クロス駅で見送るシーンから始まる。ここから舞台はマジカルな幻惑の世界へと観客を誘っていく。
まるで魔法をかけられたように、観客はさまざまな驚きを味わうことになるだろう。生の舞台でできる限りの、舞台でしかできない魔法の表現に圧倒され、客席は熱気に満ちる。ワイヤーや目の錯覚を利用したトリック、ポリジュース薬でのユーモラスな変身、踊る階段などアナログで巧妙な表現、火や水、光と陰影を駆使したスペクタクルな演出に魅了され、闇の脅威に震え、目の前で起こっていることが信じられないかも。とはいえ単なるイリュージョンショーではない。ある意味で、ポッタリアンにとっては「みぞの鏡」のようなものではないか。会いたかった懐かしいキャラクター、見たかった物語を味わわせてくれる至福のエンタテインメントだ。
アルバスは「ハリー・ポッターの息子」という運命に反発し、両親を知らずに育ったハリーは父親としての役割をどう果たせばいいかわからず、お互いの怯えから衝突。そんなアルバスがホグワーツ行きの列車で出会い、一瞬で親友となったのが、ドラコ・マルフォイの息子、スコーピウスだ。しかし、「ヴォルデモートの息子では」と噂される彼を危険視したハリーは、アルバスにスコーピウスとの交流を一切禁止。滅びたはずの闇が不気味な影を落とすなか、アルバスとスコーピウスはタイムターナー(逆転時計)を使って危険な冒険の旅に出る。
時空を行き来し、過去の出来事を別の角度から見直すことで、物語はさまざまな愛の形をあぶり出していく。現在の世界でアルバスとスコーピウスに芽生えるのは、友情と言うより愛だ。そして、ハリーの父としての愛。妻ジニーとの愛。ハーマイオニーとロンの愛。ダンブルドア、スネイプそれぞれが抱いていた愛。驚くべき発見は、あのドラコにも見て取れる。キャラクター同士が対峙することでわだかまりを解き、思いの深さを示す展開は、演出上のイリュージョン以上に胸震わせる。
ダブル・トリプルのキャストも話題だが、プレビューから8月中旬までのハリー役は、すべて藤原竜也(※藤原の出演は、9月末まで)。不器用で大人げない父親の顔、苦悩や温かさといった矛盾する内面の葛藤を丁寧に演じ、無理なく共感を呼ぶハリー像を実現した。アルバス役・福山康平とスコーピウス役・斉藤莉生も、ドラコ役・宮尾俊太郎も、とにかくすべてのキャストがイメージにぴったり。長いオーディションと厳しい稽古期間を経ただけのことはあって、演技の仕上がりも、装置や仕掛けの扱いも完璧だった。ここまで適任感が強いと、別キャスト(ハリー役は8月より石丸幹二・向井理が登板)でどう表現が変わるかもますます楽しみになる。アンサンブルを含め、高いハードルを越えたキャスト、クリエイティビティで上演を支えた日英のスタッフ全員に大きな拍手を送りたい!
舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」はTBS赤坂ACTシアターでプレビュー公演中。本公演は7月8日に開幕し、無期限ロングランで上演予定。詳しい情報は公式サイト(https://www.harrypotter-stage.jp)へ。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
犯罪が起きない町で、殺人事件が起きた――
【衝撃のAIサスペンス】映画ファンに熱烈にオススメ…睡眠時間を削ってでも、観てほしい
提供:hulu
映画料金が500円になる“裏ワザ”
【知らないと損】「映画は富裕層の娯楽」と思う、あなただけに教えます…期間限定の最強キャンペーン中!
提供:KDDI
グラディエーターII 英雄を呼ぶ声
【史上最高と激賞】人生ベストを更新し得る異次元の一作 “究極・極限・極上”の映画体験
提供:東和ピクチャーズ
予想以上に面白い!スルー厳禁!
【“新傑作”爆誕!】観た人みんな楽しめる…映画ファンへの、ちょっと早いプレゼント的な超良作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。