チェコの映画祭で“10年ぶりの選出” 沖縄・コザで若者の叫びを描く「遠いところ」23年公開
2022年6月1日 06:00
「アイムクレイジー」「未曾有」の工藤将亮監督の長編3作目となる「遠いところ」(英題:A Far Shore)が、2023年に公開されることが決定。なお、同作はチェコで開催される第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭(7月1~9日:現地時間)のメインコンペティション「クリスタル・グローブコンペティション部門」に選出。日本映画としては、10年ぶりの快挙となった。
15年以降、同時多発的に出版された沖縄の子どもの困窮した状況、DV、シングルマザーの様子を描いたルポルタージュを、工藤監督が、自身の生い立ちに重ね合わせたことから企画がスタート。構想3年、独自で沖縄を取材し、繁華街に集まる若者から生活困窮者の支援団体まで徹底した取材を重ね、全編沖縄で撮影を敢行。映画のリアリティを重視するという制作チームの強い想いから、主な出演者はあえて新人、もしくはデビュー間もない俳優をオーディションで起用している。
沖縄県沖縄市・胡坐(コザ)。17歳のアオイは、夫のマサヤと幼い息子の健吾と3人で暮らしている。おばあに健吾を預け、友達の海音と朝までキャバクラで働くアオイ。マサヤは仕事を辞め、アオイへの暴力は日に日に酷くなっていく。キャバクラで働けなくなったアオイは、マサヤに僅かな貯金も奪われ、仕方なく義母の由紀恵の家で暮らし始める。生活のために仕事を探すアオイだったが、そこには一筋縄ではいかない現実があった。
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭は、チェコを代表する保養地カルロヴィ・ヴァリで、1946年から開催されている。主要国際映画祭の中では、カンヌ、ロカルノと並び、ベネチアに次ぐ長い歴史を持ち、毎年内外の約200作品がプレミア上映されている。国際映画製作者連盟(FIAPF)公認の世界12大国際映画祭のひとつであり、ハリウッドセレブの来場も多い。過去には、ロバート・デ・ニーロ、メル・ギブソン、ジュリアン・ムーア、ジョニー・デップらがレッドカーペットを賑わせ、最高賞であるクリスタル・グローブ受賞作には「アメリ」などがある。
工藤監督は、本作の製作意図について「クソッタレな現状に映画で反抗できることはないか」という思いがあったことを明かす。「沖縄で撮影した本作が世界の人々にどう受け止められるか、日本で生きる若者の叫びをどう感じてもらえるか、楽しみにしています」と上映日を心待ちにしているようだ。
「遠いところ」は、23年に公開。工藤監督、キャストのコメントは以下の通り。
いま日本の若者は危機に直面しています。大人たちは自分勝手に振る舞い、自己のために若者の未来を踏みにじっています。日本のメディアが報じる沖縄は連日基地問題のことや防衛のことばかりで、子供の貧困について語られることは多くはありません。国や政府は防衛費や在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)には糸目を付けませんが、シングルマザーたち(若年母子の家庭)には支援や保護は考えていないかのようです。そんなクソッタレな現状に映画で反抗できることはないかと制作したのが本作です。
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭から招待を受け大変光栄です。沖縄で撮影した本作が世界の人々にどう受け止められるか、日本で生きる若者の叫びをどう感じてもらえるか、楽しみにしています。
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭にて「遠いところ」の上映が決まったと連絡を受け、とっても嬉しかったです。沢山の素敵な作品が集まる歴史ある映画祭に呼んでいただき光栄です。ありがとうございます。
「遠いところ」では私のこれまでと、この先の人生と、本作に出てくるアオイのような行き場のない若者たちの未来を背負って、魂を込めて演じさせていただきました。
工藤組一丸となり奮闘し、向き合い、作り上げた作品です。
そのような環境を頂いた、関係者の皆様へ感謝の気持ちでいっぱいです。
1人でも多くの方にお届けしたい作品です
この度、「遠いところ」でミオ役を演じさせていただきました石田夢実です。
映画の舞台、沖縄市胡座(コザ)の街で実際に ミオとして2ヶ月間を過ごしました。現地では、中学生で子を産みキャバクラでお金を稼ぐという女の子に出会いました。今まで私にとっての普通だと感じていた環境との差に、普通とはなんなのかを毎日考えさせられました。初挑戦の女優で、滞在中は現地の方と積極的に関わり、方言はもちろん、コザの人の考え方など、吸収できるものを常に取り込りこもうと努力しました。無事クランクアップを迎えられたこと、こうして皆さんに観ていただけると思うとすごく感慨深いです。
子供達が生きるために体を張ってお金を稼いでいる、その姿を大人達は、見て見ぬ振りをしている。
そんな世の中がどうか変わってほしい。そんな思いを込めて、撮影に臨んできました。たくさんの方にご鑑賞いただき、本作がなにか少しでも心を動かすきっかけになれればと思います。
今作品のオーディションは、私がこれまで受けてきた中でも一番の衝撃でした。
一次オーディションを終えた後、絶対合格したと確信し、 二次オーディションでも自信と覚悟をもって臨み、最終的にマサヤという役をいただく事が できました。
しかし、フィールドワークや実際の撮影現場では日々葛藤と試行錯誤の連続でした。
沖縄で実際に過ごして現地の人々と触れ合う中で、自分の経験値や価値観、思考が良い意味で破壊されていく毎日がとにかく刺激的な日々でした。
監督をはじめスタッフさん達の愛が詰まった作品です。よろしくお願い致します。
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