ソ連で30年間隠蔽された衝撃の事件の真相描く「親愛なる同志たちへ」4月8日公開
2022年2月4日 17:00

(C) Produced by Production Center of Andrei Konchalovsky and Andrei Konchalovsky Foundation for support of cinema, scenic and visual arts commissioned by VGTRK, 2020
第77回ベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、第93回米アカデミー賞国際長編映画賞ロシア代表に選定された「親愛なる同志たちへ」が4月8日に公開される。
「暴走機関車」(85)、「映写技師は見ていた」(91)やタルコフスキー作品の共同脚本などで知られるロシアの巨匠アンドレイ・コンチャロフスキー監督が、スターリン亡き後の冷戦下ソビエトで30年間隠蔽されたある衝撃の事件の真相と、国家に忠誠を誓った母親が選んだ究極の決断を描く。
1962年6月1日、ソ連南部ノボチェルカッスクの機関車工場でストライキが勃発した。「雪どけ」とも称されたフルシチョフが目指した豊かな共産主義統治にも陰りが見え始め、困窮にあえぐ労働者たちが物価の高騰や給与カットに抗議の意思を示したのだ。社会主義国家で大規模なストライキが起こったことに危機感を覚えた政権は、スト鎮静化と情報遮断のために最高幹部を現地に派遣、翌日には約5000人の市民への銃撃を開始した。熱心な共産党員で市政委員も務めるリューダは、愛娘スベッカの身を案じ、凄まじい群衆パニックが巻き起こった広場を駆けずり回る。長らく忠誠を誓ってきた共産党への疑念に揺れるリューダが、必死の捜索の果てにたどり着いた真実とは……。
スターリン後の社会に希望を見出し、その世界に疑いを持たなかった一人の女性が知る、残酷な事実。真実の瓦解が起きたとき、人はどう生きるのか、あるいは生き抜くのか――コンチャロフスキーは事件を再現するため徹底して細部にまでこだわり、サスペンスとアクション、そして心理表現を巧みに織り交ぜ、リューダがたどる激動の3日間をスリリングに描出。事件から60年が経つ現在も、ミャンマー、香港、ウイグル地区など世界各地で民衆弾圧事件は絶えない。決して遠い過去の話と言えない重いメッセージをはらんだ本作。ソ連解体から30年、まさに「今」見るべき作品だ。
4月8日からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開。