新人・井上百合子初主演で権力に抗して声をあげた“伊藤千代子の生涯”を描く
2022年1月19日 07:00
映画「わが青春つきるとも 伊藤千代子の生涯」の製作発表記者会見が1月18日、都内のホールで行われ、プロデューサーで監督も務めた桂壮三郎、主演の井上百合子、共演の窪塚俊介、竹下景子らが登壇した。
本作は、戦争反対などが「国賊」「非国民」扱いされた昭和初期の時代に、主権在民、侵略戦争反対、そして女性の地位向上を願い社会活動に生きた若き革命家・伊藤千代子の希望と苦難の生涯を描くもの。原作は藤田廣登「時代の証言者 伊藤千代子」で、脚本・監督補佐は宮負秀夫が手掛けた。
1925年に治安維持法が成立し、共産主義者、社会主義者、労働組合・農民組合、宗教団体等を思想犯罪者として逮捕し、激しい拷問と弾圧の時代に、伊藤千代子は東京女子大学の社会科学研究会結成に参加し、科学的社会主義の理論を学ぶ。社会変革の実践活動に確信を深めた千代子に対して、権力は1928年3月15日の一斉弾圧で逮捕。市ヶ谷刑務所で激しい拷問を受けるが頑強に戦い通し、獄中のリーダーとして志を貫く。しかし、同志であり最愛の夫の変節と裏切りを知り、身体と精神が徐々にむしばまれ、24歳でその生涯を閉じる。
主人公の伊藤千代子をオーディションで選ばれた井上が、新人ながら映画初主演で演じきった。千代子の同志で最愛の夫・浅野晃を窪塚、新渡戸稲造とともに東京女子大学を創立した安井てつを竹下が演じたほか、金田明夫、石丸謙二郎、嵐圭史が共演。さらに印南唯、宜野座万鈴、塚瀬香名子、角田萌果、田上唯、平田舞、曽川留三子らが出演。撮影は千代子の郷里である長野県などで行われた。
この映画は、数万人の拠出者による「上映債権」で製作され、全国で製作支援・上映運動が展開されている。「校庭に東風吹いて」などの社会派の秀作を製作してきた桂監督は、「各地の草の根の運動から激励と製作支援を受けて、昨年秋にクランクイン。12月に千代子さんの獄中最後の手紙の撮影でクランクアップし、3月に完成の運びとなります。歴史的真実をリアルに描き、わかりやすく明快な表現の形象を心掛けました。千代子さんの生涯は必ず現代に共感と感動を呼ぶことでしょう」などと語った。
井上は「初めての大役、主演でしたが、皆さんに支えてもらいながら演じることができました。当時使われていた建物や歴史も私に力を与えてくれたと思います。治安維持法の時代のことは私たちの世代には想像もできませんが、いろいろな資料を読み込みながらもそれにとらわれず、ひとりの女性として何を思い、感じていたのか想像しながら演じました」と述べた。4月より順次全国公開予定。