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【「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」評論】シンプルだがけっこう奥が深い。人間味マックスの怪物対決!

2021年12月4日 15:30

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「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」
「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」

仕事と恋人を同時に失い、腐り切っていたジャーナリストのエディに、凶暴な地球外生命体<シンビオート>が棲み付き、ヴェノムとして名乗りを上げた前作から3年。互いの欠点を補い合う形でバディとなった彼らは、その後、ひとまずは平穏な日々を送っていたのかと思いきや。

勿論、そんなはずはなく、続編ではエディに「悪人の脳みそ以外は貪り食わない」と躾けられ、代わりにヘルシーなチキンやチョコレートで食欲を和らげる食事制限をかけられていたヴェノムが、遂にブチ切れ。大喧嘩の果てに家出してサンフランシスコを彷徨うことになる。

そう、続編はコミカルで切ないバディムービー感が満載である。話の主軸は、投獄中の刑務所でエディと再会し、いきなり彼の腕に噛み付いて共生体の一部を接種したシリアルキラーのクレタス、転じて最凶の<シンビオート>カーネイジvs、そのためによりを戻したエディ×ヴェノムの赤黒(双方のホディカラー)の決戦だ。本来は、スパイダーマンの宿敵でマーベル史上最凶のはずだったヴェノムが、さらに凶暴な相手と対峙した時に、俄然、ヒーローの役目を果たしてしまうのは、このジャンルではさほど目新しくはない。従って、キャッチコピーは「俺たちより、最悪」。

肝心なのは、エディを演じるトム・ハーディと、クレタス役のウディ・ハレルソンが、どちらも他のマーベルヒーローとは違って、どこか落ちこぼれで人間臭く、観客の鼻先まで汗の臭いを突きつけてくるところ。結果、本作はダークヒーローものの中でも人間味がマックスの怪物対決となった。

そして、監督のアンディ・サーキスはエディとヴェノムの関係性について、現実主義と空想主義がせめぎ合うドン・キホーテとサンチョ・パンサのようだと表現している。確かに。両者はぶつかり合いながらも時に歩み寄り、いつしか、互いにとってなくてはならない存在になっていく。これはバディムービーどころかほとんどラブロマンスではないか。シンプルだがけっこう奥が深い、「ヴェノム」その副題が「レット・ゼア・ビー・カーネイジ(大殺戮よ、起これ)」なのである。

(清藤秀人)
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