鬼才ブリランテ・メンドーサ監督と永瀬正敏、海外の映画人とのコラボについて語り合う
2021年11月5日 20:30
第34回東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンターによる共同トークイベント「『アジア交流ラウンジ』ブリランテ・メンドーサ×永瀬正敏」が11月5日、東京ミッドタウン日比谷で開催され、永瀬正敏とオンライン登壇したフィリピンのブリランテ・メンドーサ監督が語り合った。
現在、フィリピンのルソン島で新作映画の撮影中だというメンドーサ監督は、「今は休憩中ということで、こちらに参加しています」と挨拶。永瀬も「今日はメンドーサ監督と直接お会いできなくて残念ですが、今、撮ってる映画もぜひ東京国際映画祭で拝見したいと思いました」と返した。
第69回カンヌ国際映画祭でジャクリン・ホセが主演女優賞受賞を獲得したメンドーサ監督の代表作「ローサは密告された」を鑑賞したという永瀬は、「コロナ禍でどこにも出られない時に、一部ではエンタテインメントが不要不急だと言われたことがありました。自分が30年近くやってきたものが不要なのだろうかと思い悩んだ時に、メンドーサ監督の映画を拝見したんです。とにかく役者の芝居が本当に自然体でビックリして、いろんなものを受け取った作品でした」と吐露。まさにメンドーサ監督の作品を通じて「映画に救われた」という経験をしたということを明かす。
そしてメンドーサ監督も「フィリピンでも、映画業界は大変な影響を受けました。ただし、コロナ禍という大変な状況に陥ったわけですが、過去にはもっと悪いことも起きていたんです。フィリピンでは台風の影響もよく受けるのですが、こういう困難からは立ち上がることができるんです」と話すとと、「困難な状況が続いていますが、最終的にコロナ禍がいつ終息するのかは分からない状況ですから。心が沈みこんで(状況が良くなるまで)ずっと待ち続けるのではなく、とにかく立ち上がって、映画を作り続けないと駄目だと思います」と力強く語った。
1990年代に、永瀬はシンガポール、タイ、マレーシア、台湾、香港、日本の監督たちとタッグを組んだ合作映画「アジアンビート」シリーズに出演したことがある。「あの頃は若くて元気でしたね」と笑う永瀬は、「単身でそれぞれの国におうかがいして、そこの国の人たちと映画を作るということをやったんですけど、そこでの出会いがいまだに続いていたりするので、とても大きな出会いだったなと思います。彼らの、どうしても映画を作りたいんだというパワーもすごかったですね」と振り返ると、「またアジアの人たちが手をとりあって、ニュー・アジアンビートみたいなシリーズができたらいいなというのは、ずっと思っていますね」と意欲的なコメントを寄せるひと幕もあった。
一方のメンドーサ監督は、今年の本映画祭にも出品されている「GENSAN PUNCH 義足のボクサー」や、オムニバス作品「アジア三面鏡2016:リフレクションズ」の中の一篇となる「SHINIUMA Dead Horse」などで日本ロケを経験している。「わたしは日本の人たちに非常に敬意を表しているんです。わたしが惹かれるのは日本の人々や文化。そこが出発点だったと思います。わたしはこれまでも日本での撮影を行ってきましたが、将来的にもまた日本で撮りたいと思っているので、こういったコラボレーションは続けていきたいですね」と日本への思いを語ると、その言葉を聞いた永瀬も「バンバン越境してほしいですね。僕たちも刺激になるし、そういった作品をどんどん観たいなと思っています」とラブコールを送った。
永瀬が海外に目を向けたきっかけはジム・ジャームッシュ監督の「ミステリー・トレイン」だった。「海外の皆さんと初めてご一緒したのは、あの作品が初めてだったんですけど、映画作りはどこも変わらないなというのを教えてもらいました。ただし文化は違っていて、刺激を受けることも多いので、好奇心もありますね」と永瀬が語ると、メンドーサ監督も「別の国の方と一緒に仕事をすると、新しいものの見方、仕事のやり方、コラボレーションの仕方が見つかりますし、学ぶことも多いんです。例えば日本のスタッフはとても勤勉で、細かいところに気がつきます。逆にわれわれはいつもジョークを飛ばしながら、笑いながら仕事をするんです。だから日本のスタッフの方たちは、そうした違いを感じたんだと思います」とそのスタイルの違いを楽しんでいる様子。永瀬も「そこに日本の常識を持っていっては駄目だなと思いますし、楽しめるといいなと思ってやってきました。自分もいろいろと吸収したいですし、その方が自分のためになりますからね」と海外作品における心構えを語った。
第34回東京国際映画祭は、11月8日まで開催。
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