スターサンズ代表・河村光庸氏「確実に日本の映画賞を席巻」 吉田恵輔監督の最新作「空白」に強い期待
2021年8月30日 19:46
「新聞記者」で日本アカデミー賞作品賞を含む6冠を達成し、注目を集める映画会社スターサンズが映画ファンとの交流を図る映画祭「スターサンズ映画祭byプレチケ」が8月30日、東京・KADOKAWAシネマ有楽町で行われた。同社配給で2018年に製作された「愛しのアイリーン」が上映され、吉田恵輔監督、原作者の新井英樹氏、同社代表で企画・製作を手がけた河村光庸氏が登壇した。
「愛しのアイリーン」は国際結婚した主人公を通して、地方の農村が内包する問題を描いた同名漫画の実写映画化。吉田監督にとっては「いつか監督になって、おれが映画化したいと夢のように語っていた」というほど思い入れが強く、「いろんなプロデューサーに話を持ちかけ、ガン無視された10年間(笑)。河村さんと奇跡の出会いがあって、速攻で『やろう』と言ってくれた」と回想した。
河村氏も「非常に思い出深く、自分が製作した中で一番印象的な作品」と愛着を示し、新井氏は「連載中はいつ打ち切りになるかわからない状況だったし、この映像化はないだろうと思っていたら、(著作の中で)最初に映像化されることになり、うれしいよりも大笑いした」と振り返った。
吉田監督と河村氏が再タッグを組むヒューマンサスペンス「空白」が9月23日から全国公開。吉田監督がオリジナル脚本を執筆し、中学生の娘を事故で失った男(古田新太)が、その発端となったスーパーマーケット店長(松坂桃李)を追い詰める過程で、モンスター化する姿を描く。
「愛しのアイリーン」の映画化を実現させ、「夢をクリアし、おれの中で1個卒業を迎えた」という吉田監督は「そこから次のステージに行くため、抱えているものを吐き出し、自分を見つめる作業をやっていたら、こうなった」と最新作「空白」に至る経緯を説明。すでに本作を鑑賞したという新井氏は「吉田版『スリー・ビルボード』だと聞いて見たが、こちらの予想を超える作品で、タイトルの意味がおぼろげに見えてくる瞬間『うわあ、すごいな』と思った」と絶賛していた。
企画・製作・エグゼクティブプロデューサーを務める河村氏は「世の中を斜に見るのではなく、真正面から捉えて、今の日本社会の根深い不寛容を見事に描いている。押し付けではなく、すべての人に訴えかける作品になった」と評し、「実は前売り券がすごく売れていて、驚いている」とヒットへの意欲も。さらに「見れば、自分自身に返ってくるものが、ものすごい強い映画。今年、確実に日本の映画賞を席巻するのではないかと予測しています」と強い期待を示していた。