本作は、壮絶ないじめ、苛烈な受験戦争、ストリートチルドレンなど、過酷な社会問題を描くとともに、主人公ふたりのピュアな魂の交錯が激しく胸を打つ問題作。中国では諸般の事情でほとんど宣伝が行われないまま公開されたが、250億円近い興行収入を叩き出した。香港アカデミー賞といわれる香港電影金像奨では、作品賞、監督賞、主演女優賞を含む8冠を達成。これまでに57の映画賞(3月19日時点:IMDb調べ)を獲得している。
メガホンをとったのは、俳優としても活躍するデレク・ツァン。 「インファナル・アフェア」シリーズなどで知られるエリック・ツァンの息子で、「ソウルメイト 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)」(6月25日公開)で単独監督デビューを飾っている。主演は、「ソウルメイト 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)」でもタッグを組んだ人気女優チョウ・ドンユィと、本作で演技派俳優としての地位を確立した国民的アイドルのイー・ヤンチェンシーが務めた。
予告編は、自殺した同級生に代って、新たにいじめの標的となったチェン・ニェン(チョウ・ドンユィ)の痛々しいシーンから始まる。同級生たちの悪意が日増しに激しくなるなか、ニェンは下校中にシャオベイ(イー・ヤンチェンシー)が集団暴行を受けているのを目撃し、とっさの判断で彼を助ける。辛く孤独な日々を送る優等生の少女と、ストリートで生きるしかなかった不良少年。ふたりの孤独な魂は、いつしか惹かれ合っていく。
映像には、少し離れた場所からニェンを見守るシャオベイの姿や、身を寄せ合うようにバイクに二人乗りする様子など、孤独な彼らのかけがえのない時間が収められている。しかし、同時にふたりを引き裂くような残酷なシーンも散りばめられ、ふたりの行く先が案じられる。
「少年の君」は、7月16日から東京・新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマほかで全国公開。