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【「映画大好きポンポさん」評論】映画製作の夢と狂気を90分に凝縮した“編集アニメ”

2021年5月29日 10:00

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「映画大好きポンポさん」
「映画大好きポンポさん」
(C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/ 映画大好きポンポさん製作委員会

映画を題材にした映画は面白い。「ニュー・シネマ・パラダイス」から近年では「カメラを止めるな!」まで映画ファンに愛されている作品は数多く、映画製作にはお仕事ムービーとしての魅力もある。テレビアニメの世界でも、アニメ制作会社の制作進行を主人公にした「SHIROBAKO」(2014~15)が人気を博した。本作はそうした系譜に連なる新たな1作として、映画とアニメーション好きにはたまらない要素が90分の尺にギュッとつめこまれている。

物語の舞台は、ハリウッドを連想させる映画の街ニャリウッド。伝説の映画プロデューサーである祖父から映画の才能と強力なコネクションを受け継いだ若き敏腕プロデューサーのポンポは、製作アシスタントのジーンを監督、女優志望のナタリーを主演に大抜てきして新作映画の製作に乗り出す。「幸福は創造の敵」と言い放ち、「2時間以上の集中を観客に求めるのは現代の娯楽としてやさしくないわ」とB級映画をこよなく愛するポンポに導かれながらジーンは初監督作の撮影にのぞみ、撮影した映像を編集しながら映画と向き合っていく。

映画の世界だけで生きてきた映画マニアのジーンは撮影前、「映画を撮るか死ぬか、どっちかしかないんだ」と思いつめる。目には光がなく、学生時代の友達はゼロ。映画がなかったら社会不適合者間違いなしの彼が、映画製作をきっかけにスタッフと関係をきずき、自分の思いを押し通すためにこれまで逃げてきた現実と対峙する姿が鮮やかに描かれる。

映画製作でスポットのあたることが少ない映像編集の仕事がフィーチャーされているのも大きな見どころ。複数のアングルで撮影したショットをどう繋いでいくかで作品のリズムが決まっていく様子を、作中で実際にカットを切りかえながら見せるなど、編集のはたす役割の一端が見事に表現されている。編集に関わるギミックもふんだんに盛りこまれていて“編集アニメ”としても楽しめるはずだ。

(五所光太郎)

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