北朝鮮強制収容所の実態描く3Dアニメ「トゥルーノース」 カクカクした作画トーンの意図は?
2021年5月29日 09:00

北朝鮮強制収容所の実態を描く長編アニメーション「トゥルーノース」のトークイベントが5月27日、都内で行われ、清水ハン栄治監督と映画評論家の森直人氏が登壇した。
本作は、脱北者や元看守らの証言をもとに北朝鮮強制収容所の内情を描きつつ、過酷な環境下で家族とその仲間たちが生き抜く姿を3Dアニメーションで描く。音楽監督はディズニー長編アニメ映画「ムーラン」のマシュー・ワイルダーが務めた。
森氏は開口一番「超重量級の傑作だと思いますが、作品の内容と監督のお人柄にギャップというか、本日初めてお会いした清水監督は明るくて気さくな方でびっくりしました」と感想を述べつつ、清水監督の熱き思いに迫る、深堀りトークを繰り広げた。

作画のトーンについて聞かれた清水監督は「キャラクターがカクカクと折り紙みたいな形で、これは試行錯誤した結果です。ディズニーやピクサーのようなリアリティにどんどん近づけていく形も作れたのですが、本作の場合、内容がきつすぎてリアリティに近づけてしまうと観客がついてこられないのでは、という懸念がありました。何かバッファを入れて、見ていて心理的にリアルではないんだとブレーキがかかり、トラウマにならないように気をつけました」と意図を明かす。
さらに、「丸くてふっくらしているものを人間は可愛いと思うんですね。本来、証言してくれた人たちの話をリアルに描くとみんな骸骨みたいな描写になってしまう。ですので、飢えているということを見せるために、痩せて影をつけるのではなくて、ポリゴンが低いカクカクにすると、丸いけれど影がでるというバランスを考えました」と振り返る。
また音楽監督を務めたワイルダーとは共通の友人がいたそうで、「友達の紹介でマシューの自宅スタジオを借りることになりました。そこで3日間くらいかけて作業をやっていくうちに、アカデミー賞やグラミー賞にノミネートされている大御所なんですが、作品のテーマ性に惹かれて参加してくれることになりました。かなり大風呂敷な話ではあるのですが、これは12万人の収容者たちをもしかしたら救うことに貢献できるかもしれない、という僕の思いに彼も心震わせてくれ、通常ではありえない金額で引き受けてくれることになりました」と感謝する。

インタビューの協力者たちが本作を鑑賞した反応については「マスクをしながらの鑑賞でしたが、マスクが涙でぐしょぐしょになるほどだったと。そして映画で描かれていることは正確だったと話してくれました」と明かし、「僕は、この映画を通して本気で12万人の人たちを何かしら救いたいと思っています。映画の最後のシーンにも思いを込めましたが、ぜひ見た方一人一人がSNSなどで広げていただければ、その積み重ねが彼らの希望へとつながってくれると信じています」と願いを込めた。
「トゥルーノース」は、6月4日から公開。
(C)2020 sumimasen
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