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小松菜奈主演、吉本ばなな「ムーンライト・シャドウ」映画化! 監督はエドモンド・ヨウ

2021年5月12日 08:00

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小松菜奈は、突然訪れる恋人の死を受け入れられない主人公・さつきを演じる
小松菜奈は、突然訪れる恋人の死を受け入れられない主人公・さつきを演じる
(C)2021映画『ムーンライト・シャドウ』製作委員会

吉本ばなな氏の初期の名作「ムーンライト・シャドウ」が映画化され、小松菜奈が初の長編映画単独主演を飾ることがわかった。メガホンをとるのは、「アケラット ロヒンギャの祈り」で、東南アジア勢としては初めて第30回東京国際映画祭の最優秀監督賞に輝いたマレーシア人監督エドモンド・ヨウ。突然訪れる恋人の死をなかなか受け入れることができない主人公・さつきの一人称の視点で描かれる物語を、詩情豊かに紡ぐ。

1989年に刊行され、社会現象ともいえる大ヒットを記録した「キッチン」、第2回山本周五郎賞受賞を獲得した「TUGUMI」が、同年の年間ベストセラーの1位と2位を独占したベストセラー作家・吉本氏。「キッチン」は世界30カ国以上で翻訳され、発売から30年以上が経ったいまでも、世界中で愛されている。

画像2吉本ばなな『キッチン』(新潮文庫刊)

キッチン」に収録されている短編小説「ムーンライト・シャドウ」は、87年に吉本氏が大学の卒業制作として発表した作品。日本大学芸術学部長賞を受賞し、88年に第16回泉鏡花文学賞にも輝いた。映画では、吉本氏が役にぴったりだと評し、「」で第44回日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受賞した小松がさつきを演じる。小松はヨウ監督との作品づくりについて「今回、監督とご一緒できて、また一つ私の新しい扉を開けていただいたと思います」とコメントを寄せている。

ムーンライト・シャドウ」は、今秋公開。吉本氏、小松、ヨウ監督のコメントは、以下の通り。


吉本ばなな
 「ムーンライト・シャドウ」は、私がちょうど小松さんと同じ年齢の頃の24歳くらいに、初めて他人に見せることを前提に書いた思い出深い小説です。主人公のさつきを小松さんが演じると聞いて、そのときの気持ちに作品を生まれ変わらせてくれるんじゃないかと、そんな気がしました。小松さんは、ものすごく旬でパワフルな方という印象でしたが、このお話の中にある“暗さ”のようなものも彼女の中に感じられるので、すごくぴったりだと思いました。

今回手掛けるエドモンド監督の作品にある、ちょっとだけ日常からふわっと浮いている感覚が、人を亡くした時の人の気持ちとすごく似ていると思います。全編を通じて、夢なのか妄想なのかそれとも現実なのか。この小説の大切なところは、「人が死んでしまう」ということ。若くて美しくて順風満帆で、何も陰りのなかった人が、突然「別れ」というものに晒された時にどうにもしようがない期間があり、地に足がつかない気持ちを時間が立ち直らせてくれる。生身の人間が演じることで映像によってどう表現されるのか、自分が描いていなかった部分がふと出てくることがいっぱいありそうな気がしていて、私も楽しみにしています。もしかしたらこの小説は全部妄想なのかもしれない。小説だとちょっと浮いている感じを行間で表すしかありませんが、映像になると目に見えて現れる。でも現実ではない。そういう表現を、エドモンド監督は得意なんじゃないかなと思います。

今、特にこの時代だからこそ、急にびっくりするようなことが起こるというのは、誰にでも起こり得ることだと思います。美しい映像を味わう気分で見ていたとしても、心の中に何かがだんだん食い込んでくるような映画になる予感がしています。

できれば大きい画面で見て欲しいなと思います。

小松菜奈
 吉本ばななさんの「キッチン」はもちろん知っていたのですが、今回「ムーンライト・シャドウ」のお話をいただいて、改めて原作を読むきっかけとなりました。「さっきまで目の前にいた人が急にいなくなってしまう」。でも周りの日常は何も変わらない。どれだけ自分や誰かを責めても二度と戻る事ができない……、その時から時は止まってしまうのだろう。走り出したり、止まったり、ぽつぽつと歩く。その繰り返しの日々の中で登場人物が何かを抱き締めながらも、哀しみ・喪失感・絶望・孤独、それだけじゃない、乗り越えようとする人間のエネルギーみたいなものを吉本ばななさんの生み出す一つ一つの魅力的な言葉から感じました。いつか人生で経験する「死」、このようなカタチで再び本を開くきっかけとなってよかったと思います。

主人公のさつきは普通の子だからこそ難しい部分もありましたが模索していく中で、さつきと同じ感情になった瞬間は嘘がないような気がしました。

撮影中はエドモンド監督の描きたいシーンについて、みんなが監督を信頼しているからこそ、私たち役者の感情を大事にしていただき、スタッフさんのアイデアや意見も取り入れて、最終的に一つになるという現場でした。

今回、監督とご一緒できて、また一つ私の新しい扉を開けていただいたと思います。自分でもどんな風に完成しているのか未知の世界で、こんなに想像がつかない作品は初めてかもしれません。だからこそ作品の完成がとても楽しみです。是非、皆さんも楽しみにしていただけたら嬉しいなと思います。

エドモンド・ヨウ監督】
 最初に原作を読んだのは2006年のことです。シンプルな構成と短い物語であるにも関わらず、「ムーンライト・シャドウ」を読んだ記憶は10年以上経った今でも色褪せず、鮮明に残っています。当時、私は20代初めで、登場人物達や、作者である吉本さんが執筆された年齢と同世代だったのです。その時揺さぶられた感情はとても力強いものでした。言わば、ちょうど良い年齢の時にこの本を読んだのです。

その2年後、大好きな日本映画や日本文学の影響で、早稲田大学で修士号を専攻する事になり、その頃撮った短編は、ほとんど日本の偉大な小説作品から影響を受けて作ったものです。今回「ムーンライト・シャドウ」を映画化するお話を頂いた時、私の旅が原点に戻ったような気持ちでした。吉本さんの文章の普遍性やエモーションをスクリーンに投影する素晴らしい機会を嬉しく思いました。

ムーンライト・シャドウ」のさつきは、その後吉本さんが生み出した、多くの登場人物の原型だったのではないかと思っています。そのほとんどのキャラクターにさつきの姿を見出すことが出来ます。このさつきを演じるのは、小松菜奈さんしか考えられませんでした。彼女なしでは「ムーンライト・シャドウ」の映画化は不可能でした。演技をするのではなく、小松さんはさつきになったのです。監督の私にとっては、このようなコラボレーションは本当に幸福で豊かな体験でした。シーンの一つ、ショットの一つを撮るたびに、期待に胸を膨らませて小松さんのお芝居を見守っていました。それは非常に有機的なプロセスでした。彼女はキャラクターについての新たな秘密を打ち明け、あたかもその魂が垣間見えるように、一瞬にして喜びと悲しみの閃光を放つのです。

現在のような世界的規模のパンデミックのさなかに、この作品を皆さんに送り届けることが出来て本当に光栄です。

コロナ禍における撮影は非常に困難でしたが、スタッフやキャスト、私のムーンライトファミリー全員が、この映画に魂とハートを注いでくれました。このような困難な時期にあっても、愛する映画のためにやり遂げたことは驚くべき事だと思います。息もつく間もありませんでしたが、私にはそのすべてが幸福な時でした。

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