【「るろうに剣心 最終章 The Final」評論】芝居の延長線上にアクションがあることを実証してみせた、疾風怒涛の138分
2021年4月24日 10:00

疾風怒涛の138分、瞬きすることすら忘れそうになるほどの鑑賞体験は、そうそうあるものではない。振り返れば、今シリーズは第1作「るろうに剣心」の134分を皮切りに、「るろうに剣心 京都大火編」が139分、「るろうに剣心 伝説の最期編」が135分と、その全てが2時間20分近い仕上がりだが、通底しているのは10年近くにわたり観る者の心を掴んで離さない仕上がりを右肩上がりで続けていることだ。
ここまで観客を夢中にさせたのには、絶大な人気を誇った和月伸宏氏の原作漫画の存在があり、これを無視することは当然できない。だが、漫画の世界でしか成立しえないと思われたアクションを大友啓史監督が、アクション監督の谷垣健治が、そして主人公の緋村剣心に息吹を注いだ佐藤健をはじめとするキャスト陣が、CGでもVFXでもなく、生身の肉体を徹底的に駆使することを選択し、成立させてしまったことは特筆すべきことである。
今作を鑑賞してみて、瞠目すべきポイントは幾つかあるが、まずはアクションのグレードが更に上がっていることに尽きる。大いに貢献したのは、剣心が生み出してしまった最恐最悪の敵・雪代縁(ゆきしろ・えにし)に扮した新田真剣佑だ。新田の辞書に不可能の文字はないのではないかと勘繰りたくなるほどに、優雅でいて圧倒的に切れ味の鋭い動きを披露している。
そして、芝居による説得力が見落とされがちである点も言及しておきたい。日本映画史を塗り替える疾走感溢れるアクションに目を奪われがちだが、激動の幕末を戦い抜いた人斬り抜刀斎こと剣心が維新を迎え、斬れない“逆刃刀”に持ち替えて人のために生きようとする眼差しこそが、今作を今作たらしめている。
前2作の公開から再結集するまでの5年間で、キャスト陣はもちろん製作陣もさまざまな現場を経験し、引き出しを増やしていった。経験に裏打ちされた技術と色褪せぬ情熱の蓄積が、今回の「るろうに剣心 最終章 The Final」「るろうに剣心 最終章 The Beginning」に投入されている。
原作の「人誅編」を描いている今作の肝となるのは、自分が原因で大切な人たちが次々と襲われ精神的にも肉体的にも疲弊していく剣心の苦悩と、最愛の姉・巴(有村架純)を剣心に斬殺された過去をもつ縁の底知れぬ怨嗟にある。姉のいない世に絶望し、姉を亡き者とした剣心への復讐はおろか、周囲の関わる人すべてに苦しみを与えるべく、周到に追い詰めていくさまは秀逸だ。
そして最終章の公開順に関しての是非が問われることもあるだろうが、大友監督がこだわり抜いた「終わり」から「始まり」を描く狙いに唸らされる。この件について評するのは、剣心の頬の十字傷の謎に迫る「The Beginning」公開時まで待ちたい。
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