【「21ブリッジ」評論】ボーズマン最後の主演作は、正義への追求が大胆な設定を霞ませる
2021年4月11日 16:00

警察が逃走中のコカイン強奪犯を逮捕するため、マンハッタンにかかる21本の橋を封鎖し、連中を袋の鼠にしていくチャドウィック・ボーズマン主演のアクションスリラー。この大胆な設定に既視感を覚えると思ったら、そう、クリストファー・ノーラン監督による「ダークナイト ライジング」(12)で、ベインとその一味がゴッサムを囲む橋を破壊し、街を孤立化させるテロを彷彿とさせるではないか。とはいえ今回の「21ブリッジ」は警察側の物語だけに、本来ならば「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(03)を類似作品に挙げるべきか。でも織田裕二は「レインボーブリッジ封鎖できません」と嘆いていたしなぁ。
しょうもない前置きを失礼。もっとも先述した橋の設定は、ほんの手段でしかない。「21ブリッジ」はむしろ、犯罪への憎悪を原動力とする主人公警官デイビス(ボーズマン)が、麻薬取締班の敏腕バーンズ刑事(シエナ・ミラー)と共に、8人の同僚が殺されたコカイン強奪事件の解決へと奔走する姿を主に捉えていく。
そして映画は、この疑惑に満ちた麻薬密輸を仕切る真の悪人が誰か? という解明に向け、観る者の興味を持続させていく。そのプロセスにおいてバイオレンス濃度の高めなアクションや銃撃戦が展開されるが、理想を胸に警官となったデイビスが「正しい事とは何なのか」という現実を問われていく話運びこそ、ド派手な設定とは対照的に芯の太い好要素として映る。
監督のブライアン・カークは本作が映画デビューだが、ダークファンタジードラマの金字塔「ゲーム・オブ・スローンズ」(11~19)の支柱となったディレクターのひとりで、テレビ界で才能を身につけたジョー&アンソニー・ルッソ兄弟(製作)の慧眼を証明する人選だ。特にこれだけ混み入った話を、わずか100分足らずのランニングタイムで描き切る手腕には唸らされる。
そして昨年惜しくも亡くなった、我らが陛下ことチャドウィックによる渾身のパフォーマンスが、その確実な演出をしっかりと支えていく。正義に人一倍駆られながらも、現場の実態を突きつけられる宿命的な役どころをリアルに熱演。彼が醸し出す戦う男の苦悩は、国家安泰をとるか世界平和かを迫られる、あの「ブラックパンサー」(18)に通じるものがある。早逝を心から残念に思う。
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