ロベール・ブレッソン「田舎司祭の日記」製作から70年を経て劇場初公開 4Kデジタルリマスター版で5月14日から
2021年4月9日 17:00
「抵抗(レジスタンス)死刑囚の手記より」(1956)、「スリ」(59)など、映画史に残る数々の名作を生み出したロベール・ブレッソン。聖と俗の間で葛藤する若き司祭の姿を静謐な視線で捉え、独自のスタイルを決定づけた伝説の作品「田舎司祭の日記」が、製作から70年を経て4Kデジタルリマスター版で公開される。
公開当時ゴダールやトリュフォーを魅了し、ポール・シュレイダー脚本の「タクシー・ドライバー」(76)や「魂のゆくえ」(2017)などその後の多くの作品に影響を与えたと言われている本作。日本では一部の特集上映、ソフト化はされていたものの本格的な劇場公開は初となる。
北フランスの寒村に赴任した若い司祭。彼は身体の不調を覚えながらも、日々村人たちの悩みを聞き、布教と善行に務める。しかし、彼の純粋な信仰への思いは村人たちとの間にしだいに溝を作っていくことになり、事態は思いもよらぬ方向へ進んでいく。
「罪の天使たち」(43)、「ブローニュの森の貴婦人たち」(45)に続く長編第3作にあたる本作は、ブレッソン作品を特徴づける、職業俳優を排して素人を起用し、音楽やカメラの動きなども含めたいわゆる「演出」を削ぎ落としていくスタイルで、ブレッソン自らが「シネマトグラフ」と呼ぶ手法を確立した作品だ。
原作はのちに「少女ムシェット」(67)でも取り上げるカトリック作家ジョルジュ・ベルナノスによる同名小説。主人公である孤独な司祭役に抜擢されたクロード・レデュは、ブレッソンが起用したいわゆる素人俳優だが、いくつかの映画に出演した後、1962年からは妻とともに、テレビ番組の人形劇「Bonne Nuit les Petits」を制作し、フランスでは多くの人に忘れがたい記憶を残している。5月14日から、新宿シネマカリテほか全国で順次公開。
また、文豪ドストエフスーの最高傑作短篇を、舞台をロシアからパリに置き換え映画化したブレッソン初のカラー作品「やさしい女 デジタル・リマスター版」が4月29日から東京都写真美術館ホールほかでのリバイバル上映も決定した。
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