【「キンキーブーツ」評論】溢れる高揚感! “映画のミュージカル化”のお手本のような痛快作を映画館で満喫
2021年3月7日 17:30

舞台は「生」であることこそが最大の魅力ということに間違いはないが、いい舞台は収録した映画でだって十分に楽しめる。それを見事に証明する作品が、”松竹ブロードウェイシネマ”として上映されるミュージカル「キンキー・ブーツ」だ。原作は、2005年の同名映画。よくできているが少々地味だった実話ベースのヒューマン・コメディは、2013年にブロードウェイでミュージカルとして生まれ変わり、爆発的な人気を呼んだ(日本でも三浦春馬さん、小池徹平の主演で2度上演され大ヒット)。映画からミュージカル化された作品は星の数ほどあるが、「キンキー・ブーツ」はその中でも最高傑作のひとつだと断言できる。この映画版は2018年にロンドン・ウエストエンドで上演された舞台を数日かけ、さまざまなアングルから収録・編集した痛快作だ。
イギリスの片田舎にある老舗靴工場の息子チャーリーが工場を危機から救うため、ドラァグクイーンのためのブーツ製造を思いつく。ドラァグクイーンのローラに協力を仰いだ彼は、果たして起死回生を遂げられるのか。ショーアップされた本作は、“映画のミュージカル化”の、まさにお手本のような出来映え。音楽と歌とダンスのパワーが加わることで、高揚感も共鳴も感動も激増し、エンターテインメントの醍醐味が溢れんばかりだ。なぜこんな完成度を持ち得たのか。それは、才能豊かな作り手たち(脚本は「トーチソング・トリロジー」のハーベイ・ファイアスタイン、演出・振付はミュージカル版「フル・モンティ」などを手がけたジェリー・ミッチェル、そして初めてミュージカルの作詞・作曲に挑んだシンディ・ローパー!)が「この物語をミュージカルとして語るには何が必要か」を完璧に理解していたからだ。
ローラはパフォーマーだから、そのド派手なショー場面が素晴らしいことは想像できるだろう。しかし、この作品の本質はまったく違う人生を歩んできたチャーリーとローラがお互いを知り、受け入れる感情面のドラマを繊細に伝えているところにある。その白眉が、ふたりが「父さんの望んだ自慢の息子じゃない」という共通の痛みを理解し合い、分かち合う「Not My Father's Son」というナンバー。でもこれだけじゃない、映画の腕相撲シーンがあんなにキラキラしたボクシングシーンに置き換わるなんて控えめに言ってもご機嫌だし、チャーリーが落ち込むシーンさえパワフル。工場のベルトコンベアーに乗ってセクシーブーツが流れてくるシーンの「Say Year!」、クライマックスのファッションショーなどなど、もう、すべてが名場面! 演者のレベルも最高! 「ヒューヒュー」と歓声や口笛ではやしたてながら楽しむ、客席のノリノリな空気が味わえるのもいい。
コロナ禍のせいで気分が落ち込む今だからこそ、この作品のポジティブパワーに触れ、湧きあがるエネルギーを、喜びを感じてほしい。舞台やミュージカルを敬遠している映画ファンも、これを見ればきっとミュージカルの魅力に抗えないはずだ。
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