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日本、台湾、沖縄の狭間で生きた老女の人生と忘れ去られた人々の記憶を映すドキュメンタリー「緑の牢獄」

2021年2月9日 12:00

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「緑の牢獄」ポスター
「緑の牢獄」ポスター
(C)2021 Moolin Films, Ltd. & Moolin Production, Co., Ltd.

植民地時代の台湾から養父とともに沖縄県西表島にやって来た老女の人生と、その記憶を辿るドキュメンタリー「緑の牢獄」が、3月27日から公開される。

緑豊かなジャングルに覆われた西表島に暮らしている橋間良子、90歳。人生のほとんどを島で過ごし、子どもたちはみな島を離れ、家の一室は島に流れ着いたアメリカ人の青年に貸し与えている。彼女は不器用ながらも集落の人々や島を訪れた人とコミュニケーションを取る。外に出ない日はずっとテレビを見て、うたた寝をする。ありふれた離島の老人の日常と並行し、映画ではさらに彼女の記憶へと焦点を合わせる。半世紀以上放置された島の炭鉱の暗い過去、なぜ彼女はただ一人、島に残り続けるのか。記録映像に加えて、歴史アーカイブ、そして夢や記憶のパートでは再現ドラマを駆使し、ひとりの人間を多角的に捉えたドキュメンタリー。

沖縄を拠点に活動する黄インイク監督が7年間の歳月を費やした本作は、企画段階で既にベルリン国際映画祭、ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭など各国映画祭の企画部門に入選。前作「海の彼方」に続き、台湾から八重山諸島に渡った“越境者”たちとその現在を独自の視点から描きだす。「私は大きな歴史の中に埋もれる個人的な歴史に焦点を当ててきました。沖縄がもつ特殊な近代史を遡ると、彼女がこの帝国と植民地の辺境で経験したトラウマや、常に日本と台湾で“移民”や“部外者”として生きた傷跡が感情的に絡み合い、そのほどけない結び目と本作では向き合ってきました」と黄監督。一足早く鑑賞した河瀬直美監督、四方田犬彦氏らがコメントを寄せている。

3月27日から沖縄・桜坂劇場で先行上映スタート、4月から東京・ポレポレ東中野、大阪・第七藝術劇場をはじめ全国で公開。

▼コメント一覧
何もない空間に、確かにある気配を映し撮る撮影者の息遣い。それは、過去や未来の時空を超えて、永遠となる。老婆の顔に染み付いたシミの跡は、人生の軌跡。
河瀬直美(映画監督)
緑の牢獄」を観終わってただちに思い出されたのは、溝口健二山椒大夫」の結末部であった。歴史から追放され、置き去りにされた人たちが、歴史の証人となる。恐るべき緑のなかの、貴重な静寂である。
四方田犬彦(映画誌・比較文学研究家)
その場所は、「緑の牢獄」と呼ばれた。あまりにも美しい森だが、過酷な作業環境で石炭を掘り、彼らの姿はいかにも哀れであった。そして肉体だけではなく、魂さえも囚われた。
ウェイ・ダーション(映画監督)
日本と台湾の中間地帯であり、炭鉱のある西表島で人生の大半を送った台湾出身者、橋間良子さん。流暢な台湾語と、少しどたどしい沖縄なまりの日本語。彼女の言葉は、その間をゆらゆらと行き来する。その不自然さこそ、西表島に取り残された「最後の台湾人」の存在を物語っている。故郷を失い、「緑の牢獄」の囚われ人になった彼女の運命は、幸福や不幸といった言葉では簡単に片付けられない。時代の流れに巻き込まれた漂流者の姿に私たち観客は視線を釘付けにされるはずだ。
野嶋剛(ジャーナリスト)
西表に生きた台湾の同胞たち。石炭が光り輝いた時代に生きた彼らは、時代に取り残されたかもしれないが、「台湾」は確かに島に存在した。橋間おばあは、その生き証人。この貴重な記録映像は彼女の魂の声であり、見る者の心に、静かに、重く響き渡る。
一青妙(作家・役者)
西表炭鉱の最後の残り火が消えた。生まれ故郷の台湾から、炭鉱労働者の管理人の養女として海を渡ってきた橋間良子(旧名・江氏緞)にとって、西表はやはり「緑の牢獄」であり、彼女はその犠牲者であった。戦後、「牢獄」から解き放たれた彼女に、もはや帰るべき故郷はなかった。
三木健(ジャーナリスト)
この映画は、過酷な土地の記憶を刻んだ記録であると同時に、「故郷」から切り離された人々の物語でもある。
安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
鬱蒼と茂る森林、果てしなく広がる海原。陽射しが燦々と照りつける美しい秘境に隠されているのは、極東の島々に連なる暗い歴史。最後の証言者が世を去った後、それを記憶し、語り継ぐのはきっと、芸術の使命だと思う。
李琴峰(作家・翻訳家)

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