佐藤信介監督が語る、世界配信の意義 「今際の国のアリス」で目指した“飲み込まれる映像体験”
2020年12月12日 17:00
山崎賢人(崎はたつさきが正式表記)と土屋太鳳が主演を務めるNetflixオリジナルシリーズ「今際の国のアリス」が、12月10日から全世界独占配信された。「アイアムヒーロー」「キングダム」などで知られ、本作のメガホンをとった佐藤信介監督に、主演を務めた2人についてや“世界配信”への思いを聞いた。
原作は2010年から16年まで「週刊少年サンデーS」「週刊少年サンデー」(小学館)で連載された、麻生羽呂氏によるサバイバルサスペンスコミック(全18巻)。人生に夢を見出せず曖昧に生きてきたアリス(山崎)と、どんな苦境でも「生きる意味」を探し続けるウサギ(土屋)が、突然放り込まれた謎の世界“今際の国”で共に信頼を築いていく。
ストーリーの着地点が、自分の予想と違うかもしれないという不安のなかで読み進めていく面白さがありました。映像化したときに、主人公はもちろんいますが、誰のどういう話なんだろう、でも見てみたいって思うような作品になるといいなと思いました。
決め手ですが、この企画が動いたときに、Netflixでやれるならこの作品は躊躇なく作ることができるという確信がありました。主人公アリスの話ではありますが、何が起こるかわからない時間を体験してもらう物語でもあると思います。それを2時間に凝縮するとやりすぎてしまうので、映画だったらやり切れるかなとたじろいでいたかもしれません。Netflixとだったら、映画並の規模感も含め、普段自分が映画に込めているものと同等のものをかけてこの作品をやりたいと思いました。Netflixは世界配信のプラットフォームなので、予算はもちろん、全8話を映画と同じ濃度で作ることができました。
2人ともに前の作品とは全く違うキャラクターを演じてもらいましたし、今までの2人の共演作で演じてきた関係性とも異なるのが面白いと思いました。撮影は約5カ月という長い期間だったのですが、キャラクターについてなど2人と話しながら進めることができたことが、本当に楽しかったです。最初は「5カ月は長いな、どうなるんだろう」という気持ちもありましたが、始まってみるとやめたくないなと思いました。雰囲気もとても良かったので、殺伐とした世界を描きますが、こっちは楽しくて仕方ないみたいな撮影でした。
トンネルを使った“げぇむ”の撮影では、トンネル自体を完全に封鎖して撮影しました。ある時間だけ封鎖するというのを毎日繰り返したのですが、それだけで自分にとっては異次元のようでした。最初は感動してトンネルの写真を撮ったりして(笑)。“今際の国”に来たばかりのアリスが挑む“げぇむ”も、原作にはないオリジナルで作っているので、成立させるために何回も考えた思い出深い“げぇむ”になっています。
長い撮影期間でも、労働環境が過酷になりすぎないように整備されていたのが印象的でした。もちろん、最近の映画やドラマもそうだと思いますが、よりそれを気にかけて撮影できる環境だったように感じました。撮影前の段階から、お互いを尊重しあう気持ちを現場の共通認識として持つことのできる「リスペクト・トレーニング」というのを全キャストスタッフが受けたんです。スタッフ同士も敬意を持って接するという当たり前のことができるようになることが新鮮でした。一緒に仕事したスタッフたちもみんな同じことを感じていると思うので、こういうことが日本の映像業界にもどんどん広がっていったらいいなと思います。
まず、以前自分が作った「BLEACH」が、日本以外ではNetflixオリジナルとして世界配信されました。そのため、アメリカに行くと「BLEACH」を見たと声をかけてくださる方が多いです。僕と会う前に「BLEACH」を見てくださる方もいるのですが、そういうときに気軽に作品を探すことができるのは単純にすごいと思いますし、今まで映画は数々作ってきましたが、なかなか海外の方に気軽に見ていただける機会はありませんでした。海外の映画祭や海外配給が決まったり、DVDが発売になったりということはありましたが、それと世界配信というのは、同じようでいて全く異なります。世界配信を経験したことで、自分たちの描く世界を身近に感じ取っていただいたり、思わぬ方からお褒めの言葉をいただけたりと、「BLEACH」がNetflixで配信されたのはとても大きいことで、自分の描きたい世界観をより多くの人に伝えられた気がしました。
「今際の国のアリス」の場合は、世界配信ということを初心に置いて制作しました。自分の場合は昔からどんな規模の作品でもそうなのですが、その作品についての知識がない人でも、どんどん入り込んでいくような作品をいつも作ろうとしています。最近は原作がある作品を作ることが多いですが、原作を全く知らない人でも飲み込まれる映像体験にしたいです。世界のどこにいる人でも、たまたま見たときに引き込まれる作品であってほしい、日本の独特な何かを知らなくても引き込まれていってほしいという思いが常にあります。
プロデューサーたちとは、そういうことを念頭に置いて日本から作品を発表する時代がいつか来るとよく話していました。「今際の国のアリス」は、本当に初めて世界配信ということを念頭に置いて作ろうと表明して作ることができた作品です。これは日本人にしかわからないんじゃないか、世界の人にも響くかというところを意識して脚本を作りました。自分は常にそういう意識を持って作品を作っていましたが、脚本の打ち合わせのときからそういうことをしっかり話し合って、とても有意義に作品作りができました。
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