佐藤浩市×石田ゆり子×西島秀俊が語る「サイレント・トーキョー」 今公開される意味は?
2020年12月9日 17:00
「SP」シリーズを手がけたヒットメーカー、波多野貴文監督がメガホンをとった「サイレント・トーキョー」(公開中)に出演する佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊が撮影を振り返り、お互いの印象や撮影の裏側、さらに、今の時期に本作が公開される意味を語りあった。
本作は、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの名曲「Happy Xmas (War Is Over)」にインスパイアされた秦建日子の小説を映画化したクライムサスペンス。クリスマスの東京を突如襲った連続爆破テロに翻弄される国家と人々の姿を克明に描き出す。佐藤はテロ事件の容疑者となる朝比奈仁、石田は事件に巻き込まれる主婦の山口アイコ、西島は事件を追う刑事の世田志乃夫をそれぞれ演じているほか、中村倫也、広瀬アリス、井之脇海、勝地涼ら豪華キャストが共演している。
栃木・足利に渋谷のスクランブル交差点を再現したオープンセットで撮影が行われ、リアルかつ迫力のある映像も見どころの一つとなっている。完成作品を見た佐藤は「まず思ったのは、渋谷のスクランブル交差点のオープンセットの再現度と迫力のすごさですよね。通行人のエキストラさんの頑張りには本当に頭が下がりました。暮れの寒いなか、よく集まってくれたなと思う」と、感謝を口にする。
西島は「交差点やハチ公や改札、地下街の入り口などは緻密に再現されていたものの、背景のビルはほぼグリーンバックだったんですよね。にもかかわらず、映画を見て、『あれ、僕は渋谷でロケしたっけ?』と記憶が混乱するほどリアルな渋谷が出来上がっていました」と驚いたことを明かし、「ハイスピードカメラで撮った爆発の瞬間もすごかったです。現場で見ていましたが、撮影にも力が入っていて、そこでもエキストラの方が大活躍でした」と現場の様子を伝える。
群像劇のため、本作で俳優陣が一堂に介する場面はわずか。それでも、西島は佐藤との共演シーンについて「やっぱり存在感が圧倒的で、佐藤さんが演じる朝比奈という人物の信念みたいなものがひしひしと伝わってきて、身が引き締まる思いでした」と振り返ると、佐藤は「この映画を怪作にするにはどうしたらいいかを考えた時、僕は少ない出番の中で“高倉健さん”にならなければならないと思ったんですよ。主人公としての責任感みたいなものかな」と語る。
石田が「そんな佐藤さんと一緒の場面は、お芝居としては真剣な場面でも、佐藤さんと同じ空間にいられるだけで嬉しくなってしまいます」と話すと、佐藤も「2人共好きな俳優なので、短いながら一緒に演じることを楽しみましたが、もうちょっと一緒にやりたかったね(笑)」と、信頼しているからこそ名残惜しそう。
劇中では、爆弾が仕掛けられたにもかかわらず、若者たちが渋谷に集う様子も描かれ、佐藤は「日本にはテロはない、自分だけは大丈夫と過信してしまう彼らの状況は、奇しくも今年のコロナ禍でも人々は街に繰り出してしまう状況と重なって見えない?」と指摘する。
「そうなんですよね。『サイレント・トーキョー』という言葉が予言のようで……。それこそ、今年の4月は“サイレント・トーキョー”でしたよね。街に人がまったくいなくて恐怖を感じました」と石田が頷くと、佐藤は「これが2019年に公開されるのと、2020年に公開されるのとでは意味が違ってくる。東京という街の怖さ、これに対する意識というのが、この半年間で随分変わりました。今、僕らはその恐怖と共存していかなければならない。僕は今年、俳優生活40周年の節目で、そこにこんな経験をしたことで、ある意味、忘れられない年になりました」と実感を込める。
西島も「本当にそう思います。撮影をしてる当時は、今日と同じ明日がまた来ると楽観的だった自分がいましたが、今は当たり前の日常が当たり前じゃなくなることがあるのだと痛感しています」と心境を述べると、佐藤は「ご覧になった皆さんがどういう風に思ったか、ぜひ聞いてみたいですね。とはいえ、エンタメ作品ではあるので、まずは楽しんでいただきながら、何か最後に小さな小骨が喉元に刺さってくれればいいなと思っています」と観客へ呼びかけた。
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