マイケル・J・フォックス、2度目の引退宣言を記した自叙伝で“人生のどん底”を告白

2020年11月21日 10:00


マイケル・J・フォックス
マイケル・J・フォックス

バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで知られる人気俳優マイケル・J・フォックスが、ニューヨークの非営利文化コミュニティセンター「92Y」で開催されたトークイベントに参加。11月17日にアメリカで発売された自叙伝「No Time Like the Future」などについて語ってくれた。(取材・文/細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

2018年、自叙伝「No Time Like the Future」を構成するうえで、フォックスの身に重要な出来事が起きた。それは、脊髄の腫瘍摘出を行ったというもの。「腫瘍が脊髄の周りにあり、(全身まひになる可能性もある)危険な状態だった。『手術しなければいけない。そうしなければ身体中がまひすることになる』と医者から言われた」と告白する。

「ジョンズ・ホプキンス病院の医者は、明らかにその手術に適した人物だったが、彼は僕に『私がマイケル・J・フォックスを(医療ミスで)全身まひにさせる男にはなりたくない』と言ってきたんだ。その瞬間(“正直な医者”だと感じて)僕はこの医者に手術してもらおうと決めたんだ」と経緯を明かす。手術は無事に成功したが、再び歩くためにはリハビリが必要に。家族や医者からは「絶対に転ばないで! 脊髄にダメージを与えて、酷いことになってしまうから」と言われていたそうだ。

「僕は(リハビリ後に)歩き回りたいと思っていた。手術する前の自分に戻りたいとも思っていたから」と早期回復を望んでいたフォックス。その後、あるオファーを受けることになった。「(リハビリのために)マーサズ・ビニヤードにいた際、スパイク・リー製作、ステフォン・ブリストル監督のNetflix映画(『See You Yesterday』)にカメオで出演することになって、僕はニューヨーク市内に戻ったんだ。その時、妻のトレイシーに『ひとりでニューヨーク市内に戻るよ。そのカメオ出演をして、戻ってくるから』と伝えたんだ」と語る。この時点で4カ月間のリハビリに臨んでいたフォックスは「もうひとりでも大丈夫だ」と判断していた。

だが、フォックスは、娘のスカイラーとニューヨーク市内へ戻ることになった。「彼女はアパートに泊まって『朝食を作ってあげる』と言ってくれたんだが、僕は『スカイラー、その必要はないよ。僕は大丈夫だ。大人だし、自分でもできるよ』と伝えたそうだ。ところが、翌朝、キッチンで朝食をとろうとしたら、転んで腕の骨を骨折してしまった。僕はなんて馬鹿なんだ! 自分を嫌な奴だとも思ったよ。家族も、誰もが僕を信頼してくれたのに……」と当時を述懐。骨が砕けていたため、腕を19のピンで固定。プレートも入れなければならないほどの重傷だった。自叙伝に記されているのは「(骨折時が)人生のどん底だった」というもの。この“どん底にいる状態”で自問自答を繰り返した。

フォックス「確かに(腕の骨を折ったことは)些細なことで、馬鹿げた事件でもあった。だがパーキンソン病であろうと、脊髄に腫瘍があろうと、腕の骨を折ろうと、それほど大したことはない。人によってはもっとひどい目に遭っている。ある人は子どもを失ったり、家や仕事を失ったり――家族や国を失うことに比べたら、大したことではない。いずれにしろ、僕は大丈夫だと思っていた」

2000年、パーキンソン病の研究の助成活動をするため「マイケル・J・フォックス パーキンソン病リサーチ財団」を設立。これまで、同財団には約1兆円の支援が集まっている。自らの生い立ち、パーキンソン病との格闘を綴った自伝「ラッキー・マン(Lucky Man)」を出版した際も、ポジティブなアプローチで自らの病と闘ってきたフォックス。今回の自叙伝には、以下のような発言が記載されている。

「何事にも潮時がある。1日12時間働き、7ページのセリフを覚えるといった僕の全盛期は過ぎ去った」

「少なくとも今のところ、私は2度目の引退をする。それはもしかしたら変わるかもしれない。なぜなら、全てのものは変わるから。だが、もしこれが僕の演技のキャリアの終わりであっても、それならそれで構わない」

引退をほのめかす内容だが、フォックスは現在も短編アニメ「The Beast,Heroes of the Wildfire」で声優を務めており、ラップ歌手リル・ナズ・Xのミュージック・ビデオ「Holiday」に出演した映像がYouTubeに公開されたばかり。主演として長編映画のセリフを覚えるのは難しいのかもしれない。だが、これまでいくつもの困難を乗り越えてきたフォックスが、このまま自宅のソファに座ったままでいるとは思えない。現在は、自叙伝の出版を契機に、執筆業へ興味を示しているフォックス。今後、どのような選択をしようとも、世界中のファンは、彼を応援し続けるだろう。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は公開から35年!
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は公開から35年!

また、フォックスの人生を大きく変えた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」についても言及。ロバート・ゼメキス監督、製作のスティーブン・スピルバーグの名をあげ、当時を振り返った。

フォックス「2人が素晴らしいのはわかっていたよ。彼らは、当時出演していた『ファミリー・タイズ』のクリエイター、ゲイリー・デビッド・ゴールドバーグと夏に会い、僕のスケジュールを空けて、この映画(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)に出演できるか聞いていたんだ。でも、当時の『ファミリー・タイズ』は視聴者の反応をつかみ始めていた頃。クリエイターのゲイリーは『マイケルを行かせるわけにはいかない。もし行かせたら、再び彼を番組に戻すことはできない』と言っていたらしい。でも、僕にはそれを伝えてくれていなかった」

クリスマスシーズン、フォックスはゴールドバーグのオフィスで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」について説明を受けることになった。

「その時は『ティーン・ウルフ』への出演がバレて、それが理由で解雇されると思っていたんだ。でも、ゲイリーは封筒を渡してきて『この映画は、スピルバーグが製作し、ロバート・ゼメキスが監督をする。これを家で読み、君が何を考えているか、あとで教えてくれ!』と言われた。その後、スケジュールの状況を伝えられ、脚本を読んでみた。これまで読んだ脚本のなかで一番良かった。オリジナルストーリーで、劇中にはクールな車も登場する。素晴らしい俳優陣が出演して、僕も「ジョニー・B・グッド」の演奏をするという夢が叶ったんだ」

フォックスは、昼間に「ファミリー・タイズ」の撮影を行い、夜に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の撮影を行なっていたようだ。ちなみに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロサンゼルスプレミアは、「ファミリー・タイズ」のロンドン撮影で不参加。その後アメリカに戻ってきた際、観客の反応の大きさに心底驚かされたそうだ。

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