【ホラー映画コラム】「マシニスト」役者がギリギリまで己を追い詰め、製作者もそれに応え、それぞれが一流の仕事をやり切っている。
2020年10月31日 22:00
![毎日りんご1個とツナ缶のみという過激なダイエットを敢行し、約30キロも減量して撮影に臨んだクリスチャン・ベール](https://eiga.k-img.com/images/buzz/86717/fdcf254156fd9b97/640.jpg)
Twitterのホラー界隈で知らぬ者はいない人間食べ食べカエル氏(@TABECHAUYO)によるホラー映画コラム「人間食べ食べカエル テラー小屋」では、“人喰いツイッタラー”が、ホラー映画専門の動画配信サービス「OSOREZONE」の配信中のオススメ作品を厳選し、その見どころを語り尽くす! 今回は、過激な役作りで知られるクリスチャン・ベールが、文字どおり命を削って撮影に臨んだ「マシニスト」をご紹介。
機械工のトレヴァー(クリスチャン・ベール)は、不眠症に悩まされ既に1年間も寝ていなかった。その影響で彼は病的に痩せ細り、恋人からも「そのままじゃ死ぬわよ」と忠告される始末。そんなある日、彼の働く工場に謎の男が現れる。それ以来、トレヴァーの周囲では不可解な出来事が頻発。ただでさえ危うい彼の精神は更に焦燥していく……。
今更こんなことをいうのもあれだが、クリスチャン・ベールは名優だ。「リベリオン 反逆者」では、ガン=カタが注目されることが多いが、彼の抑制された感情が次第に漏れ始める様を繊細に表現した演技も十二分に素晴らしかった。あの名演があったからこそ、現在に至るまで語り継がれる名作となったのだ。しかし、そんなクリスチャンが心配になることがある。何が心配かというと、彼の体だ。個人的に、彼はトム・クルーズに次いで心配なハリウッド俳優である(※トムはスタントでいつ死んでもおかしくないのでぶっちぎりの1位です。)クリスチャンはトムのようなスタント狂いなわけではないが、とにかく自らの体を追い込む。役作りの為に体重を激しく増減させ、筋肉をつけては落とす。映画によって異なる見た目になる俳優は多い(というかそれが当たり前か)が、映画に合わせて肉体そのものを別人のように変化させる俳優は中々いない。クリスチャンはその中でも別次元の肉体変貌を見せる。文字通り、命を削って役に入り込む俳優なのである。
![原因不明の極度の不眠症ですでに365日(!)眠っていない男……](https://eiga.k-img.com/images/buzz/86717/a92bf07439ce68dc/640.jpg?1603957788)
「マシニスト」は、そんなクリスチャンが初めて本格的に肉体を変貌させたサスペンススリラーである。本作では、彼は体重増減の「減」に全振りした。あらすじにも書いた通り、1年以上も不眠症に悩まされ続ける男という役柄なのだが、クリスチャンは、その不眠症の過酷さを自らの体型で見事に表現。全身に骨が浮き出るほど痩せ細った身体は、夢に出るほど強烈だ。それをおどけながら見せつける冒頭のシーンはあまりにも衝撃的。そのままポスターイメージにも使われたのも納得である。この時の彼の体重は55キロ。身長183cmの成人男性として痩せすぎどころの話ではない。もともと85キロほどあったそうなので、なんと約30キロも減らしていることになる。しかも彼は、監督の指示とかではなく、役を完璧に演じ切るために独断で激痩せを敢行していた。狂気の沙汰である。痩せる方法も、ひたすら絶食して、体を空腹に順応させるという気合と根性によるエクストリームすぎるもの。役作りの次元が違いすぎる。そうして仕上がったのが、本編のあの体形というわけだ。恐るべしクリスチャン・ベール。
全体的に冷たいトーンの色彩効果もあり、クリスチャンの見た目はまるで屍のようだ。そしてこの見た目は、実はストーリーと密接にリンクしている。彼の押し込められた心情が、体にそのまま表れているのだ。ただの独りよがりな自己満の役作りというわけではない。物語に説得力を持たせるために彼が見つけ出した答えが、壮絶な激やせだったのだ。
![娼婦役を演じたジェニファー・ジェイソン・リー](https://eiga.k-img.com/images/buzz/86717/7dc67d9b65b8238d/640.jpg?1603957795)
監督を務めたブラッド・アンダーソンの手腕も見事だ。「セッション9」等でも見せた、精神的に追い詰める不穏極まりない演出の手腕を本作でもいかんなく発揮し、クリスチャンが仕上げた体を120%引き立てている。彼の周囲に畳み掛けるように謎を振りまいて、話が進めば進むほど、どこに着地するのか分からなくさせることで、観客も彼と同様に不安に飲まれる作りになっている。謎を明らかにするタイミングもまた完璧。追い詰められた果てにクリスチャンが見せる表情は本当にたまらない。この際の演出、エンディングに入るタイミングも素晴らしいというほかない。役者がギリギリまで己を追い詰め、製作者もそれに応え、それぞれが一流の仕事をやり切っている。
このレビューを書くにあたって久々に鑑賞したけど、クリスチャンのあの体は何度見てもギョッとさせられる。本作はジャンルこそサイコスリラーだが、主演俳優の肉体追い込みが売りという意味では、ジャッキーとか近年のトムクル主演映画に近いタイプの映画とも言えるだろう(多分)。クリスチャンは、近年も「バイス」で元副大統領ディック・チェイニーを演じるため22キロの増量をし、その後「フォードVSフェラーリ」で実在したドライバーのケン・マイルズを演じるため30キロの減量を行っている。体重ってそんな10キロ単位で行ったり来たりするもんなんですか!? わがままな考えではあるが、これからはあまり無茶しない範囲で最高の演技を見せ続けてほしいと思う。本人もそろそろ自分の体のことを考え始めていると言っていたようですが、ほんと体だけは大事にしてください。
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