イスラム過激派が強いる黒いベールに抵抗 ファッションへの情熱を映した「パピチャ」本編映像
2020年10月27日 15:00
2019年・第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門で上映され、1990年代のアルジェリア内戦を背景に、イスラム原理主義による女性弾圧を描いた映画「パピチャ 未来へのランウェイ」。ファッションデザイナーを志す主人公が、悲劇を乗り越えてショー開催を決意する本編映像の一部が公開された。
本作は、物語の舞台であるアルジェリアに17歳まで暮らし、この映画が長編映画監督デビュー作となるムニア・メドゥール自身の経験から生まれた物語。アルジェリアで1991年に始まった内戦、いわゆる<暗黒の10年>を舞台に、イスラム原理主義による女性弾圧の真実を、ファッションデザイナーを夢見る少女の視点で瑞々しく描く。タイトルの“パピチャ”とは、アルジェリアのスラングで“愉快で魅力的で常識にとらわれない自由を意味する。
ファッションデザイナーを夢見る大学生のネジュマ(リナ・クードリ)は、親元を離れ大学寮で暮らしている。過激派のイスラム主義勢力による抑圧が激化する中、ある日ネジュマは身近な人が殺害される悲劇に見舞われる。このほど公開されたシーンは、その後ネジュマが仲間たちのところに戻ってくる場面。社会の風潮に従うことを拒むネジュマは、実家で過ごしている間、自分なりの“闘う”方法であるデザインとひたすら向き合っていた。そして、自分たちの自由と未来のために大学寮でファッションショーを行うことを決意する。
ネジュマがコレクションで使うことにした生地“ハイク”とは、1000年ほどにもわたってアルジェリアをはじめ北西アフリカ諸国のムスリム女性が着用してきた真っ白な伝統的な衣装布のこと。フランス独立戦争の時代には女性が身につけて武器を隠していたことから“抵抗”の象徴でもあるという。
アルジェリアを離れる前はネジュマと同じように大学寮で暮らしていたメドゥール監督は、ジャーナリズムを学びながら小遣い稼ぎのために服を作り、雑貨も扱う食料品店で販売してもらっていたそうだ。監督は「ネジュマが見せるファッションへの情熱は、象徴です。当時の原理主義者たちは、女性の体に覆いをかけようとしました。美しい体を見せるファッションは、私にとっては黒いベールに対する抵抗なのです」と主人公に託した想いを語る。また、ネジュマが“ハイク”を使ってファッションショーを行うことにしたことについて「ネジュマは伝統的な布から出発して、それをリサイクルして近代化させていきます。寮の外の社会では黒や暗い色を強要されているけど、ショーで使われるのは白よ。神聖で輝いてる。布を使って対比させているのです。若さと命の欲動を見せたいと思ったのです」と狙いを語っている。
また、ネジュマ達のファッションショーを行うという“選択”にちなんで、本作公式noteにおいて<選択>をテーマにした豪華執筆陣によるエッセイ連載企画「マイ・チョイス わたしがした、自分らしく生きるための選択」を展開。現在、小説家の柚木麻子氏、ジャーナリストの治部れんげ氏、映画監督のヤンヨンヒ氏、作家・ラブピースクラブ代表の北原みのり氏、会社員の笛美氏によるエッセイが掲載中だ。
映画は10月30日からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。
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