深田晃司監督が語る、ミニシアターが守ってきた映画文化の多様性 アップリンクのパワハラ訴訟にも言及
2020年6月20日 10:00
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[映画.com ニュース] 「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF & ASIA)」が6月18日に主催したオンライントークセッションに、深田晃司監督、女優の筒井真理子、同映画祭の代表・別所哲也、映画館「ユーロスペース」支配人の北條誠人氏が参加した。配信は終了したが、現在はアーカイブ映像(https://www.youtube.com/watch?v=kSCMlBh1WnQ&feature=youtu.be)で視聴することができる。
「SSFF & ASIA」が映画業界の様々な立場のゲストを迎え、コロナ禍と向き合う現状や未来を考えるトークセッションシリーズ第2弾。この日は「映画文化と映画館の重要性」をテーマに、トークを展開した。
濱口竜介監督とともにクラウドファンディング「ミニシアターエイド基金」を立ち上げた深田監督。他国では、商業性にとらわれない作品を上映するミニシアターが持続できるよう、政府が助成金などを投下してサポートしている。しかし、日本は国からの支援が不十分であるにも関わらず、ミニシアターが溢れており、深田監督は「異常事態」だと表現する。さらに日本のミニシアター文化の豊かさは、かつて映画大国だった時代の遺産であるといい、「この20年でミニシアターは減り続けています。『放っておいても勝手に残るものが多様性なんじゃないか』という意見もありますが、守ろうとしないと無くなってしまうのが多様性だと思う」と意見を述べた。そんな多様性を守るため、フランスには国立映画映像センター(CNC)、韓国には映画振興委員会(KOFIC)がある。日本には映画文化を司る行政機関がないため、助成金の問題も含め制度設計の遅れがあることも指摘した。
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コロナ禍により観客が激減したという北條氏も、「ミニシアターの興行収入は、全体の4~5%ほどだと言われていますが、その売り上げが日本映画の将来を形作っている。(商業性にとらわれない、多様性のある)上映作品やそれらを見に来る観客が、日本の映画界の未来につながっていくと思います。日本の文化の長期的戦略を考えると、ミニシアターは文化のインフラとして、公的資金のサポートがあってもいいんじゃないでしょうか」と意見を述べた。
そうした資金面の苦しさにより、映画業界の労働環境はブラックになりがちだ。深田監督は映画館「アップリンク」従業員のパワーハラスメント訴訟に触れる。「アップリンク固有の問題と切り捨てるのではなくて、これを機に映画業界が変わっていくことが必要。多様性を守りながら、精神論だけではなく、いかに労働環境の安全を守っていくか、考えていかなくちゃいけない」と語った。
今後の映画館の在り方にも話が及ぶ。北條氏はオンラインの動画配信プラットフォームとの共存の可能性も探っていくといい、「オンラインで評判になっている作品を、ミニシアターがスクリーンで上映するとか。あるいは、ミニシアターがない地域の人々に、オンラインで作品を提供するとか。両方で新しい形を一緒に構築していくといいですよね」と構想を明かす。深田監督は「映画監督としては、(どのような上映形態でも)キャンバスが変わるようなもので、表現もそれぞれ異なります。様々な映像が有機的につながって、収益を循環させていければいいと思う」と語る。他国ではテレビや配信サービスの収益の一部が、映画業界に還元される制度もあるという。そして深田監督は、映画館の重要性も改めて訴えた。
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深田監督「『ミニシアターエイド基金』のステートメントの中で、(映画館とオンラインを)美術館と画集の関係に例えているんですが……。世界中の美術作品が画集で楽しめますが、生で見る絵と画集で見る絵は印象が違う。だからこそ美術館はなくてはならないし、オリジナルの絵に触れる機会がなければならない。少なくとも映画監督は、スクリーンで、映画館の音響で見られることを前提に映画を作っています。映画は複製芸術ですが、『映画館で見ることがオリジナルに近いものである』という認識なので、やっぱり映画館で見てほしい」
今後はクリエイティブディレクターであり小説家の高崎卓馬氏を迎える第3回(7月2日)、世界初の「コロナ国際短編映画祭」を展開したDEJAN BUCIN氏にインタビューする第4回(7月16日)を配信。全て午後8時~9時30分を予定している。なお各映像はアーカイブ化され、初回配信後も視聴可能だ。
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