仏領インドシナのゲリラ戦、ひとりの兵士の魂に迫った戦争ドラマ「この世の果て、数多の終焉」8月15日公開
2020年6月11日 16:00

[映画.com ニュース] 第2次世界大戦末期、フランス領インドシナの凄惨な戦場の実態と、傷ついたひとりの兵士の魂に迫った戦争ドラマ「この世の果て、数多(あまた)の終焉」が、8月15日から公開される。
フランス映画祭2016で上映された「愛と死の谷」が絶賛された鬼才、ギョーム・ニクルーが新たに撮り上げた本作は、ベトナムでの現地ロケを敢行、宗主国フランスの視点で第2次世界大戦末期におけるインドシナの凄惨な真実に迫った一作。当時のフランス領インドシナには日本軍が進駐しており、ベトナム人民はフランス軍と日本軍に二重支配されていた。多くの日本人にとって知られざる、衝撃的な歴史の闇をえぐり出した戦争ドラマだ。
ひとりの若きフランス人兵士の壮絶なる肉体と魂の彷徨を通して本作があぶり出すのは、まさしくこの世の地獄というべき戦場の生々しい現実だ。ニクルー監督は扇情的なバイオレンスを一切排除した禁欲的な演出スタイルをとり、説明描写をあえて最小限にとどめ、想像と解釈の余地を広げた。心身共にずたずたに傷ついた主人公の“行き着く果て”はどこなのか、最後まで目が離せない。

主人公ロベールを演じるのは、持ち前の端正な美貌に加え、グザビエ・ドラン監督と組んだ「たかが世界の終わり」ではセザール賞に輝いたフランスのトップスター、ギャスパー・ウリエル。理性と狂気、愛と死の狭間でもがく兵士の痛切な運命を渾身の演技で体現した。また名優ジェラール・ドパルデューが、ロベールの魂を救済しようとする作家役で出演し、映画に確かな重みを与えている。
1945年3月、フランス領インドシナ。駐屯地での殺戮をただひとり生き延びたフランス人兵士ロベールは、兄を殺害したベトナム解放軍の将校ヴォー・ビン・イェンへの復讐を誓い、部隊に復帰する。しかし険しい密林でのゲリラとの戦いは苛烈を極め、憎きヴォー・ビンの居場所は一向につかめなかった。その悪夢のような日々のなか、マイというベトナム人の娼婦に心惹かれるロベールだったが、復讐の怨念に駆られる彼はもはや後戻りできない。やがて軍規に背く危うい行動を繰り返し、理性を失ったロベールは、さらなるジャングルの奥地に身を投じていくのだった。
「この世の果て、数多の終焉」は、8月15日から、シアター・イメージフォーラム他全国順次公開。
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