【「ホドロフスキーのサイコマジック」評論】ホドロフスキーのアートが人々を救う瞬間の記録
2020年5月11日 17:00

[映画.com ニュース] 新型コロナウイルスの影響により、多くの新作映画が公開延期となり、映画ファンの鑑賞機会は減るばかりです。映画.comでは毎週、様々な映画作品の評論を毎週お届けいたします。今回は、オンライン映画館「アップリンク・クラウド」で先行配信中の「ホドロフスキーのサイコマジック」です。
なんと妖しげなタイトルだろう。
「ホドロフスキーの」の時点で映画ファンにとってすでに(良い意味で)妖しいのに、さらに「サイコマジック」という謎の単語が付いている。生半可な気持ちで観ては心が屠られる、そんな直感が湧いた。
サイコマジックとはホドロフスキーが独自に考案した心理療法で、言葉を用いて患者を治療する精神分析とは異なり、行動させることで無意識化のトラウマに向き合わせるものだ。例えば、母に愛されなかった女性には、へその緒を模した糸で本人と女性役の人間とを結び、擬似的な出産シーンを演じさせる。父親から虐待されて育ち自殺まで考えた男性には、身体を土に埋め、その上に肉を撒きハゲタカにたからせる。死の疑似体験を経た男性は生まれ変わったように晴れやかな笑顔を浮かべる。心理療法に演劇のメソッドを取り入れる「ドラマセラピー」に近いものに思われるが、そこはホドロフスキーなので相談者に課すシーンは複雑かつ幻惑的だ。
出演者は実際にホドロフスキーのもとに相談に訪れた人々だが、これは医療行為ではなく、あくまでこれをアート活動の一環であると言う。つまり、アートが人間を救えるという事実をこのドキュメンタリーは記録しているのだ。アートとは時に人の生存のために必要なのである。
「こんな悪趣味なものがアートなものか」と思う人もいるかもしれない。しかし、そもそもアートとは人の心に衝撃を与えて変化を促すもの。そして、一般的には悪趣味としか言えない方法でないと救われない人々がこうして現にいるのである。
これがアート活動であるがゆえに、本作で描かれる行為は、ホドロフスキーのこれまでの映画の内容ともシンクロする。随所に過去作品の断片が挿入されるのだが、それを観て、私は彼の映画を通じてサイコマジックを施されていたのではないかと気付かされる。彼の映画のお陰で私は生存できていたのかもしれない。そんなことを本気で思わせる作品だ。
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

ガンニバル
【衝撃の問題作】なぜ世界は「ガンニバル」にハマるのか? “絶対的支持”の理由を徹底解説!
提供:ディズニー

BETTER MAN ベター・マン
【観ないとぜっったい後悔する】「グレショ」監督最新作!ラスト5分の破壊力に、感動を超えて放心状態
提供:東和ピクチャーズ

シリーズ未見の人が観たら…
【大好きなやつでした】不覚にも“秒”で沼にハマって大変なことになった話
提供:ツインエンジン

すごすぎて言葉にならない映画
【社会現象「パラサイト 半地下の家族」の次はこれ】“超痛快逆襲エンタメ”でアドレナリン全開
提供:ワーナー・ブラザース映画

映画料金2000円は高すぎるだろ!!!!
【…というあなたに】知らないと損な“1250円も安く観る裏ワザ”、ここに置いときます
提供:KDDI

35年目のラブレター
【感動実話に“とんでもない絶賛”の嵐】噂を聞きつけ実際に観てきたら…忖度なし正直レビュー!
提供:東映

聞かせてくれ、「ガンニバル」の感想を――
【感想投稿で豪華賞品が当たる】ちょっとでも観たことある人、今すぐ参加して!(提供:ディズニー)