末期がん患者演じた中村梅雀、撮影中に危篤だった母親に思いはせた
2020年1月22日 14:00
[映画.com ニュース] 歌舞伎役者の中村梅雀が1月21日、都内で行われた主演作「山中静夫氏の尊厳死」の完成披露試写会に出席した。末期がんを宣告された男を演じ、「撮影中に母親が危篤で。母の死、そして自分の死を考えながら、毎日宿で温泉に浸かっていた」と役作りを振り返った。梅雀の母親・光子さんは昨年3月、93歳で亡くなっている。
また、梅雀は2016年に亡くなった父親の四代目・中村梅之助さんについても触れ「最終的に肺炎を患っていて、そのときの息づかいを参考した」と告白。映画のテーマにちなみ、「死ぬ前にやっておきたいことは?」と問われると、「娘がまだ4歳なので、死んでいる場合じゃない(笑)。僕が80歳で、やっと20歳ですから。でも、大切な楽器たちの行き場所は決めないと」と話していた。
末期の肺がんを宣告された山中静夫(梅雀)と彼を見守る医師を主人公に、誰にも訪れる死と向き合い、最後まで生きぬくことの意味を描いたヒューマンドラマ。「ダイヤモンドダスト」「阿弥陀堂だより」などで知られ、現役の医師でもある南木佳士の同名小説を映画化した。
完成披露試写会には梅雀をはじめ、医師を演じる津田寛治、高畑淳子、田中美里、小澤雄太、江澤良太、大方斐紗子、村橋明朗監督が出席した。津田は、死を受け入れる山中の最後の願いをかなえようとする役どころで、「長セリフを聞いているうちに、涙がポロポロ流れてしまって。いやあ、本当にすばらしかったです。圧倒されました」と梅雀の演技を絶賛。「役柄と同じで、僕も梅雀さんのお芝居を見守り、受け止めようと。そうすることで自分も医師になれたし、無意識に出た感情がフィルムに焼き付けられた」と語った。
村橋監督は「原作を読んだのは25~6年前。いつか映画化したと思っていたので、やっと実現したという思いがあります」と感無量の面持ち。ロケ地となった長野県佐久市は昨年10月、台風19号の被害を受け「9月から先行上映をさせてもらっていたが、千曲川も氾濫して、映画どころではないと思った。それでも大勢の皆さんに見ていただいた」と感謝を示し、「やっとここまで来たという気持ちと同時に、これから始まるぞというワクワクも」と2月14日から始まる全国公開に、決意を新たにしていた。
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